身近な素材のアレンジで、コンテンツを作成
マーケティング本部 エディトリアルチーム 上原 佳彦有益なコンテンツの追加が、さまざまな効果を生み出す
例えば「企業におけるFacebook、Twitterの活用法」や、「クリックされやすいテキストの作り方」など、Web制作に関するさまざまなノウハウは、毎日のように次々と惜しみなく、どこかのWebサイトで公開されています(当コラムもその1つですが)。ほとんどの場合、少し検索するだけで、すぐに有益な情報を含んだコンテンツを探すことができるはずです。
そうした状況について、少し前までの私はコンテンツ提供側の立場が気がかりでした。「そんなに気前良くノウハウを公開していたら、誰もが簡単にワンランク上のWebサイトを作れるようになって、商売が成り立たなくなるのでは?」「競合他社に貴重な塩を送ることになり、自社の優位性が薄れてしまうのでは?」と。
しかし、それは余計な心配でした。確かにノウハウの公開には若干のデメリットがあるのかもしれませんが、実際には有益な情報を含んだコンテンツが持つ、集客力向上やブランド確立といったメリットの方が優っているようです。また、継続的に有益なコンテンツを公開し続けることで、潜在顧客・既存顧客のファン化にもつながります。こうした効果が得られることを知っているからこそ、多くの企業や有識者は自分の大切なノウハウをもとに、有益なコンテンツを継続的に公開し続けているのでしょう。少なくとも当コラムでは諸先輩方のおかげで、多くの方々にアクセスをいただいています。
このことは、Web業界に限った施策ではなく、どのような業界においても同じことがいえます。そして、さらなる高みを目指す企業のあいだでは、ユーザーにとって有益なコンテンツを自社Webサイトで定期的に公開して、上記のような効果を得ようとする動きが活発になってきています。
創作しなくても、身近な素材のアレンジでコンテンツは作成できる
ここまで読み進めていただいた方の中には、「有益なコンテンツを作るためには、常に身を削って何らかのノウハウを公開しなくてはいけないのか?」と感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。ノウハウではなく、実際の導入効果やスペック情報などの方が有益、と考えているユーザーも多くいらっしゃるはずです。どのようなコンテンツが有益かは、ユーザーごとにそれぞれ判断基準が異なるもの。たとえ経営層やシステム担当者など同じ職種であったとしても、その基準は違うのですから、全てのユーザーに響くコンテンツを生み出すのはなかなか難しいといえるのではないでしょうか。
ここは判断が難しいところですが、全てのユーザーに響く「クリティカルな」コンテンツの創作のために多くの時間や労力をかけることも大事ですが、身近な素材のアレンジでコストを抑えつつコンテンツを作り、公開の継続性を維持する方法でも、同じように高い効果が得られるのではないかと感じています。
ここで1つの例を紹介します。数年前、あるお客様が公式Webサイトのアクセス解析を行なった結果、「事例」などのキーワードで流入してきたユーザーが、主力サービスのページや下層の事例ページから比較的早い時間で離脱している傾向が見られました。そこで、箇条書きだけでまとめられていたわずかな既存事例ページに対して、ストーリー性を盛り込むこと、ビフォアアフターを明確にすること、そもそも紹介する事例の件数を増やすことなどを含めたコンテンツ改善を提案しました。
しかし、当時は「詳細を公開して他社に知られたくない」「他社も同じような箇条書きスタイルで事例を公開しているから」という理由で、ボツになってしまったのです。結局そのときはTOPページから主力サービスのページ、そしてそこから事例ページへの導線増強、イメージ画像の追加などを行なって様子を見ることになりました。
その後数カ月のあいだ、Webサイトのアクセス状況を静観していたのですが、わずかな改善効果しか見られませんでした。そこで、あらためてアクセス解析に基づくコンテンツ改善の必要性をご説明し、当社が勧める改善施策をご採用いただきました。具体的には数件の既存事例ページにストーリーを持たせたほか、導入前後の課題と効果が分かりやすく明確になるようにアレンジし、3カ月かけて公開する事例件数を2倍に増やしました。
その結果、主力サービスページにおけるユーザーの平均滞在時間が約7倍、問い合わせ件数も3倍に増加したのです。今ではお客様もコンテンツの拡充に積極的で、主力サービスの具体的なコンサルティング内容やコンサルタント側の思いなども関連ページとして公開し、さらなる効果増大をはかられています。
ここでの成功要因は、アクセス解析結果から得た「ユーザーが求めている情報」をコンテンツとして用意できたことにあります。しかも、ただ新規にコンテンツを創作したのでは時間と費用の負担が大きいのですが、「公開中の事例と代わり映えがしないから」といって眠らせていた事例の素材を適切な形でページ化したことで、あまりコストをかけずに事例件数を継続的に倍増させることができました。この実例が示す結果から、私は「身近な素材をうまくアレンジして仕立てたコンテンツでも高い効果を得られる」と考えているのです。
コンテンツをもっと容易に増やしたい、と考えていた企業を後押しする
これまでにも、「以前からコンテンツを増やしたいと考えていたが、自社には公開してユーザーに喜ばれそうなネタはない」「継続的にコンテンツを増やすことのメリットは知っているが、定期的にコンテンツを創作していくだけのパワー(コスト)がない」と、あきらめていた方もいらっしゃると思います。しかし、磨けば有益なコンテンツになる素材の原石は、意外と身近なところに潜んでいるものです。コンテンツ追加のたびに一から創作するのではなく、こうした素材をアレンジして活かす手法を利用すれば、「コンテンツをもっと容易に作成したい」というお客様の要望を、少しでも支援ができるのではないかと考えています。
ところで、ここでいうアレンジとはどんなことを指すのでしょうか? それはWebサイトにおける編集のことを指します。対象となるユーザーやマーケットを考慮しながらユーザーを引き付けるための情報を収集し、集約しながら魅力あるコンテンツに仕上げることです。今後はおそらくこの「編集」に関する技術が、企業のWeb担当者にも求められるようになると考えています。
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