IIA国際大会参加報告
公認内部監査人(CIA) 野口 由美子2011年7月10日から13日まで、マレーシアのクアラルンプールでIIA(The Institute of Internal Auditors)の国際大会が開催されました。今回は、その参加体験を報告します。
IIAの国際大会について
IIAは1941年にアメリカで設立され、今や165か国、約170,000人のメンバーを抱える国際組織です。設立当初から年に一度、大会が開催され、今年70回目を迎えました。ただ一度、開催されなかったのは1945年で、戦況のため*1というから歴史を感じます。そして、アジアで開催されるのは今回が初めてだそうです。会場となったKuala Lumpur Convention Centreの近くには、大会テーマである“Standing Tall!”のシンボルとなったPetronas Twin Towersがそびえたっていました。大会には、内部監査人に求められる継続的専門能力開発(CPE/Continuing Professional Education)の一環として参加しました。
内部監査人の“Leadership”とは
今回の大会テーマ、“Standing Tall!”は、「しっかりとしたガバナンスの基準や実践内容の推進・唱導において、さらに大きなリーダーシップの役割を引き受けていこうという内部監査人たちへの呼びかけ」だそうです*2。昨年、アトランタで開かれた国際大会のテーマは”Auditing Through Leadership”であり、「内部監査人のリーダーシップ」という概念が、ちょくちょく出てくるようです。コンカレントセッションの9つのテーマのなかにも“Leadership & Professional Development”というのがありました。
「リーダーシップ」というと、管理職向けの教育資料などでよく目にするように、上司が部下を引っ張るためのものというイメージだったので、最初、戸惑いを覚えました。それに、内部監査部門は業務の指示や命令を直接に行いません。しかし、よくよく考えてみれば“Leadership”が本来意味するところは、立場の上下とは無関係ですし、指示や命令によるものとも限らないのです。
内部監査人の業務が目指すところは、あるべき姿と現実の状態のギャップを埋めることです。ただし、あるべき姿を実行する権限は業務の担当者にあり、内部監査人にできることはあるべき姿の提示とそこへの引き上げを促す以外にありません。したがって、内部監査人にとって「促す力」が重要なのであり、それが“Leadership”ということになるのでしょう。とりもなおさず、“Leadership”への関心は、小手先の技術ではなく、内部監査の実効性にフォーカスしていることの表れなのだと思います。
参加して
基調講演7つと、選択式のテーマ別セッション7つを聴講してまいりました。参加者は皆、熱心に講師の話に耳を傾け、Q&Aの時間も活発なやりとりがなされていました。日本のセミナーのように講義資料が配付されないせいか、講義中にすべてを吸収しようとするかのように見えました。講師も質問者も、様々な国から来ているので、本当にありとあらゆる国のアクセントの英語を聞いたような気がします。基調講演では、国連やマレーシア政府など公的機関やグローバル企業の方、エコノミストなどの話を聞くことができました。講義形式も通常のスピーチから、パネルディスカッション、エンターテイメントショーに趣の近いものまであり、貴重な経験でした。テーマ別セッションは9種類のなかから選択するわけですが、興味深いものばかりで、毎回どれにしようか迷ってしまいました。個人的な志向なのかもしれませんが、受講したものは、ヒューマン・ファクターを扱ったものが多かったような気がします。
ところで、帰国の途に着く前にPetronas Twin Towersに登ってみようと思いましたが、今回、その高みに登ることは叶いませんでした。内部監査人としての成功も、一朝一夕になせることではないのかなあなどと思いつつ、これからも謙虚な気持ちで地道に自己研磨に努めていきたいと決意を新たにしました。
- ※1 Trivia Answers - The Institute of Internal Auditorsより
- ※2 The IIA's 2011 International Conference - Foreword by Chairmanより
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