多様化する環境への対応を考える
R&D本部 矢倉 眞隆電車や街中を見渡して、スマートフォンを使う人が増えたなあと改めて感じるこのごろです。タブレットもAndroidタブレットが次々に発表されていますし、今後普及するのかなと思っています。
どちらもPCよりも身近な情報端末ですから、これらからのWebアクセスも増えていくでしょう。PC以外の閲覧環境をふまえ、どういった情報を、どのようなかたちで、どう作りどう見せていけばいいのだろうかと考えることが多くなりました。
「スマートフォン版」「PC版」という溝
以前、なにかのスマートフォン利用者調査で、不満に思うことの中に「スマートフォン用サイトは情報が少ない」といったものがあったのを目にしました。スマートフォンは画面が小さいので、あまり多くの情報を表示できません。ズーム機能は備えていますが、ズームアウトした状態では文字が小さく、ズームインすればページ全体を見渡しにくいという問題があります。ですので、スマートフォン用のサイトはほぼすべてで、見せる情報を減らすように作っています。PC版サイトに慣れている方、欲しい情報がスマートフォン用サイトになかったという方は「物足りない」「不便だ」と思うのでしょう。
しかし、PCサイトをそのままスマートフォンで見せることがいいとはあまり思えません。現在のWebサイトの多くは、PCが持つ「大きな画面」上を「マウスで操作する」環境をふまえて作られています。一方スマートフォンは「小さな画面」を「指で操作する」環境にあります。ですから、ズームしても目的の情報を探しづらい、間隔の狭い小さなリンクやボタンはタップミスするなどと、使いづらいことが多いのです。環境が異なるのに、一方の環境に依存したつくりを押し付けてしまうわけですから、不都合が生じて当然です。
となると、PCでもスマートフォンでも見られる「ひとつのサイト」があればいいのではないかと思うようになります。PC版、スマートフォン版というふたつのサイトは、制作・提供する立場からは管理や制作コストなどの面であまり望まれません。ただ、今のままではそういったサイトを制作するのは難しいと考えています。
今のやり方ではどっちつかずになる
理由は、提供する情報やつくりの落とし所を決めにくいのではないかという懸念です。スマートフォンのWebサイト制作は、デスクトップブラウザと同等のエンジンを搭載していること、携帯電話サイトを表示できないといった特性から、PCのWebサイト制作に影響を受け易いものとなっています。しかし、端末の性質を考えると、画面サイズや回線速度、モバイルという「手軽さ」など、携帯電話と共通しています。利用したい情報や利用している状況は、PCよりも携帯電話に近いのではないかと思うのです。ここで、PCサイトの情報構造が過度に影響してしまうと、ただスマートフォンで拡大しなくて良いだけといったレベルになってしまいます。同じ情報があるわけですが、「多すぎる」という印象を与えかねません。
技術的な観点からも懸念があります。現在のPCサイトは古いブラウザへの対応が求められるため、HTML5やCSS3といった新しい仕様はおろか、CSS2といった現在の基本仕様もフルに活用できていない作りになっています。CSSがフルに使えないページでは画像を多く使うのですが、Webサイトは読み込むファイルが多いほど表示時間がかかってしまいます。スマートフォンのように、回線速度が速くない環境では、これが顕著になります。
スマートフォンは新しいブラウザを搭載しているので、新しい技術を多用する傾向にありますが、古いPCブラウザではその恩恵が得られません。動的な表現やHTML5などの新しい機能を代用させるためにはJavaScriptを使うのですが、使えば使うほど実行パフォーマンスが下がってしまいます。古いブラウザはJavaScriptの実行速度が遅いので、その「対応」が足かせとなってしまう場合もあるのです。
どちらに傾いても、問題がでてきます。バランスを取ることができればいいのですが、まだ今のところは、どっちつかずな「ひとつのサイト」になってしまうおそれが大きいように感じています。それはスマートフォン対応の経験が充分ではないことに起因しているのかもしれませんし、スマートフォンからのWebアクセス自体がまだ充分に大きくないことも影響しているのかもしれません。
とはいえ、Webやモバイルの移り変わりはとても速いもの。タブレットの広がりなど、すでに見えているものもあります。変化を予想しつつ、現段階でできる範囲を見極め、対応を進めていきたいものです。
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