マルチデバイス時代のCMS
システムエンジニア 野澤 聡史2011年はスマートフォン元年と呼ばれ、国内の携帯各社が積極的にスマートフォン製品のリリースを開始しました。既に多くの人がスマートフォンをもちスマートフォンでWebサイトを閲覧しています。
それに対応するために、PC向けサイトとは別にスマートフォンの操作性に特化したサイトデザインの再設計が求められ、スマートフォン対応を完了した、または検討を考えている企業は多く、ひとつの新時代を迎えたと感じました。
このようなWebにおける時代の分岐点はWebサイトを運営する担当者に大きな影響を与えます。少し前の分岐点ではブログツールの流行から始まり、情報資産を円滑管理するためのWebCMSが洗練されコンテンツの管理方法を見直す大きな分岐点がありました。そしてスマートフォン対応とCMSは密接な関わりをもちます。
スマートフォンとCMS
ミツエーリンクスでは、初めてのスマートフォン対応を含めたCMS案件はスマートフォン元年より幾分早いものでした。2009年末頃のプロジェクトでは既にスマートフォン向けサイトも視野に入れて要件定義を行うプロジェクトがありました。
早々にスマートフォン対応を要件としていたプロジェクトはモバイル対応(ガラケー向けのWebサイト)にも力を入れており、Webサイトのマルチデバイス対応の意識が高く、多様に広がる訪問導線と訪問機会の損失を少なくするという明確な目的がありました。
今日ではCMS案件には必ずといっていいほどPCサイト構築と合わせてスマートフォン対応の要件が加えられ、CMSという分野にもスマートフォンが密接に関わってきました。そしてWebサイトの管理対象がPCサイトだけに留まらずガラケー、スマートフォンとマルチデバイスに広がりをみせています。
既にCMS導入済みのWebサイトとそうでないWebサイトではスマートフォン対応を完了するまでの道のり、完了後の運用業務はまったく違うものになります。
スマートフォン対応案件の経験をふまえて構築時のタスク、運用時の担当者の負荷を軽減できるのはCMSであるという更なる確信を得ました。CMSを導入すればひとつのコンテンツを更新すると管理対象のデバイスへ即座に更新内容が反映されます。これはCMSの最大の特徴でありますが、管理対象が複数のデバイスになることでCMSが更に魅力的なツールになります。情報(コンテンツ)とデザイン(テンプレート)を分離するCMSの基本思想が今のマルチデバイス時代に活かされています。CMSでコンテンツを一元管理し、ブラウザへの出力にはデバイス分のテンプレートを実装することでマルチデバイス化を実現します。
CMS案件のスマートフォン対応、Webサイトのマルチデバイス化は先に述べたようなワンソース・マルチユースの手段、そしてCMSの基本思想が必要になります。
スマートフォン対応方法
ミツエーリンクスが扱うCMSのスマートフォン対応方法はそれぞれ異なります。
システムそのものが違うので対応方法が変わるのは当然のことですが、コンテンツとデザインを分離する基本設計ではどのCMSも変わりません。そして対応方法の設計指針も変わりません。
機能、テンプレートは再利用性を高くし、共通化できる機能は共有し、分離する機能は明確に分離することを念頭に置いた機能設計、テンプレート設計を行います。
この考えは運用時の機能改修、テンプレート改修の作業負荷を軽減することや改修作業においてデバイス間で影響を皆無にするなど、すべては円滑な運用を行えるCMSであるためです。
eZ Publishのスマートフォン対応方法を例にあげるとサイトアクセスという機能を活用します。この機能はスマートフォン時代の今日に用意されたものではなくeZ Publishの初期のバージョンから用意されています。つまりeZ Publishはマルチデバイス対応を初期設計時に考えられていたCMSであり、開発を行う私もスマートフォン対応のために特化した機能追加を行うことはありませんでした。
またスマートフォン対応などマルチデバイス化が要件であったとしてCMSの構築作業は変わることはありません。
スマートフォン対応をCMSで行う際にワンソース・マルチユースの手段をご紹介しましたが、時にはワンソースではない管理方法になることもあります。それはPCサイトをベースにしたコンテンツを再利用した場合、バナー画像などのサイズ容量がガラケーサイトで制限されることやバナー画像の見た目が最適化されていない、外部サイトへリンクするページがPCサイトとは同一とは限らないなどの理由があります。マルチソースにコンテンツ設計を行いCMSにコンテンツそのものをデバイス毎に分離登録することも時には必要なのです。
これはワンソースに扱うことにとらわれ管理方法、運用手順が乱雑になってしまう懸念を解消するための手段です。この点は要件定義において慎重に協議する必要がありますし、すべては運用しやすいのか、ということを念頭に置く必要があります。
eZ Publish 4.5月からの新技術
2011年3月にリリースされたeZ Publish4.5。このバージョンで追加された新機能にREST APIがあります。REST APIはシンプルに設計されより軽量により新鮮なデータを提供することを実現したAPIです。
主に外部サイト、外部システムへのコンテンツ提供、コンテンツ連携に利用します。
コンテンツの出力形式はXMLやJSONなどの外部サイトが要求する形式でeZ Publishに登録されたコンテンツを出力することができます。
このAPIの利用シーンとしてはスマートフォンサイトのインターフェース構築に特化したシステムにコンテンツ提供を行うことやスマートフォンアプリへのコンテンツの提供など他システムとの連携方法としての利用が考えられます。
マルチデバイス対応が必要な要求に応えることができるAPIであり、他のCMSとの連携やスマートフォンアプリとの連携などシステム全体においてコンテンツ管理の基盤としてeZ Publishを利用することができます。
マルチデバイス時代においてeZ Publishは他システムとの連携に特化した機能をこれからもリリースすることが予想されます。新バージョンの4.6のリリースも控えているeZ Publishをこれからも変わらず動向を追い続けます。
マルチデバイス時代のCMS
CMSにおいてコンテンツをマルチデバイスに最適化することは既存のコンテンツをどのように利活用するか、またデバイスにおいて足りないコンテンツは無いかなど、コンテンツの取捨選択が求められます。この取捨選択の作業は既存のコンテンツの設計をより最適なものに変えていきます。スマートフォン元年がもたらしたWebサイトのマルチデバイス対応は管理する資産(コンテンツ)をもう一度見つめるきっかけとなるのです。
関連情報
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。