ソーシャルメディアの活用を考える
取締役 芳賀 穣7月24日正午に東北の被災地三県を除きテレビは地デジに移行し、8月3日に民放キー局5社はVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを共同で推進していくことに基本合意し、2014年度の本格運用を目指す、と発表しました。また、先日アメリカの動画サイト「Hulu」が日本で年内にサービス開始するという発表もありました。
これらのスマートテレビの本格化を象徴する出来事は、前回のコラム「Digitalコミュニケーション時代」を大きく前進させるターニングポイントになることは間違いありません。
スマートテレビが本格化すると、テレビの情報伝達のあり方が大きく変わります。情報伝達は、テレビ局からの一方通行的なものでなく、ソーシャルメディアを基盤とした、個人から他の業界までさまざまな人々のつながりを介してやり取りするものになります。
ソーシャルメディアによる大きなパラダイムシフト
ソーシャルメディアは、2010年の中東ジャスミン革命、東日本大震災で語られるように、人々の行動や社会全体へ大きな影響を与えていますが、企業やビジネスパーソンが注目すべき点は人々の購買行動や産業構造の大きな変化です。実名登録のFacebookやLinkedInは匿名制のソーシャルメディアとは異なり、ビジネスに活用すべきツールとして認知されてきており、インフラとして定着していくと考えています。
では、これらのソーシャルメディアは、ビジネスをどのように変えていくのでしょうか。
まず、一つのIDでメールもチャットも電話もできるようになり、携帯電話や固定電話による音声のコミュニケーション時間が減少します。場所を選ばずコミュニケーションが可能になるため、テレワーキングの環境も整備されていくはずです。
また、ソーシャルメディアの利用時間が増えると、比例してビジネスチャンスも増えます。ユーザーが情報を発信すればするほどデータは蓄積され、細分化されたセグメンテーションが可能となり、効率的に広告を打つことができるようになります。
求められる全体最適の視点
さらに、ソーシャルメディアは、シェアリングサービスが普及する基盤にもなっています。土地を探している人と土地を所有している人を結びつけ、家や車を貸し借りし、読み終わった本を誰かとシェアする。大量消費とは一線を画す「シェア」という消費スタイルは、信頼性が高い実名登録のFacebookだからこそ可能であるといえます。
人々のライフスタイルは変化し、さらに東日本大震災により、生活基盤や消費スタイルは見直され、これまでの価値観や発想にも大きな転換を求められています。『シェア<共有>からビジネスを生みだす新戦略』(レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース著)には、モノそのものを消費するのではなく、モノに備わる価値を共有する「プロダクト=サービス・システム」という考え方がありますが、まさに「所有」から「利用」への発想の転換です。
企業にとっては、価値共創のデジタルマーケティングへの転換期にあるといえます。ソーシャルメディアの活用により、ターゲットとなる層の属性となる情報を集め、どのような価値を求めているのかを的確に捉えたうえで、チャネルを超えた全体最適の視点でのマーケティングが必要になります。
サービスの追求による顧客との価値創造
では、「価値」とは何でしょうか。
iPodはモノであり、iTunesはサービスですが、両方がないと本来の価値は生まれません。例えば、当社に置き換えてみても、Facebookに関連するサービスを提供する場合、Facebookページを開設するだけではモノを提供しているのと一緒で、サービスを提供していませんので、他社と比べて独自の価値を提供しているとはいえません。
しかし、ソーシャルメディアを活用すれば、企業側からの一方的なサービスの追求ではなく、顧客と一緒に価値を作り出すことが可能になります。本来の顧客の視点に立ったサービスを追求でき、より大きな価値を生み出すチャンスが出てきます。そのチャンスをつかむには、顧客に対して、技術的な価値や機能的な価値より情緒的な価値やブランド体験を届けることが重要になってくると考えています。
当社のソーシャルメディアの活用支援におきましても、お客様の声をしっかり捉え、お客様と共にメディア、ツールとしての価値の最大化に貢献できるよう取り組んでまいります。
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