書くスキルがビジネスチャンスを作る
第五本部 エグゼクティブエディター 上原 佳彦7年前と変わらない? 書くスキルの扱われ方
2006年6月に、私は当欄で「国民総ライター時代のWebライティングとは」というコラムを書きました。内容を簡単に要約しますと、以下のような感じです。
- これまで文章を書くことは、誰もが日常的に行っているせいか、他のビジネススキルと比べて軽視されがちだった
- しかし、最近(2006年当時)はあらゆる媒体で「文章の書き方」を指南するコンテンツを目にするようになった
- メールやBlogなどで書く機会が増え、「書く」技術の重要性が認識され始めている兆候ではないか
- あらゆる人が文章を書き、メッセージを発信する文化が浸透した「国民総ライター時代」の今、競合との差別化をはかっていくためにも、Webにおけるテキストの分かりやすさを向上する必要がある
今あらためて読み直すと、記事展開のつたなさが至るところに染み出ていて、上のような意図が含まれていたことに気づかない方もいらっしゃったのでは? と心配です。「国民総ライター時代」という言葉で興味を引いておきながら、その説明が最後の最後まで出てきませんし…。それでも恥を忍んで引用したのには理由があります。それは、2006年当時も2013年の現在も、ビジネスシーンで文章を書くことに対する世の中の意識は、あまり変わっていないことをお伝えしたかったからです。
今もあらゆる媒体で、「文章の書き方」や「文章によるメッセージの伝え方」を伝授する本やコンテンツが、いろいろな切り口で次々と輩出されています。むしろ、2006年当時より数は多いように感じます。それだけ市場には「うまい文章を書きたい」というニーズもあるのでしょう。
しかし、実際に「文章を書く」スキルを上達させることが、他のビジネススキルよりも優先されるようなケースはいまだに少ないと思います。私の周辺、という非常に狭いコミュニティーにおける傾向ではありますが、「いつかは文章を書くスキルを向上させたいけど、優先順位としては下」と考えている方が多いように感じました。「いつやるの?」と尋ねても、「今ではない」という答えが返ってきそうです。
書くスキルの有無で、ビジネスチャンスが巡る確率は変わる
一方、2006年から2013年になり、大きく変わったことがあります。それはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の浸透です。人と人とがコミュニケーションする場所や手段を提供し、つながりを持つことを促進・支援するSNSは、ここ数年で顕著に利用者数を増やしました。SNS代表格であるFacebookの、2013年3月期の月間アクティブユーザー数は、今や11億1000万人にのぼるといわれています。
SNSのビジネス活用も盛んに行なわれています。ある企業は、公式Webサイトとは違った立場から記事を投稿するポータルサイトとして活用し、新たなファンを獲得しています。また、あるビジネスパーソンは、新しいビジネスパートナーの発見や情報交換・情報収集、採用・転職のきっかけ作りとしてSNSを活用しています。しつこくて恐縮ですが、私の周辺でさえSNSでの記事・発言がきっかけで、新しいビジネスチャンスをつかんだという例が複数あるのです。
何気なく書いた一言でブログやtwitterが炎上する恐れがあるかと思えば、何気ない投稿がきっかけでFacebookやLinked Inから仕事依頼・協業依頼の連絡が入ったりもする。不思議なものです。
こうした例から分かるのは、読んだ人を何らかのアクションに導いているものは、そこに書かれた言葉だということです。「何気ない」かどうかは問題ではありません。そこにどのような文章を書くことができるかによって、SNSを介したビジネスチャンスは増えたり減ったりするのです。逆に、自分の思いをうまく文章で表現できない限り、チャンスが巡ってくる可能性は低いままかもしれません。
私はSNSのビジネス利用を推奨したいわけではありませんし、その逆でもありません。ただ、しっかりビジネスに活用していくと決めたからには、いつまでも「何気ない」頼みではダメです。自ら「文章を書くスキル」を養って、ビジネスチャンスを高めることが必要だとお伝えしたかったのです。「いつやるの?」と聞かれたら、さまざまな企業でSNSの活用が進む「今でしょ!」と答えたかったのです。
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