適切な評価を行うことの重要さと難しさ
インタラクションデザイナー 栗山 進私は業務として普段、製品(アプリケーションやウェブサイト)の設計だけではなく、評価も行っています。今回のコラムでは、日々の業務から感じた、適切な評価を行うことの重要さと難しさについて書きたいと思います。皆様が製品を設計したり評価されたりする際の一助となれば幸いです。
評価の重要さ
近頃、UXデザイン(ユーザーエクスペリエンスデザイン)という言葉が飛び交っており、より良いユーザー体験を実現するために製品の評価を実施/検討されている製品オーナーが多くなってきた印象を受けます。弊社においても、実際にターゲット層のユーザーに製品を使用してもらいながら評価する手法である、ユーザビリティテストの依頼などが多く寄せられています。こういった評価は、より良いユーザー体験を実現、あるいは、製品をより良いものとするためにとても有効です。
例えば、前述のユーザビリティテストでは、少人数のテストで多くのユーザビリティ上の問題点を発見することができます(参考:5ユーザーでテストすれば十分な理由)。そのため、プロジェクトの適切な段階(例えば、製品の試作品を作成した段階)でテストを実施すれば、多くのユーザビリティ問題を改善した状態で製品をリリースすることが可能になります。その結果、よりユーザーに受け入れられやすい製品になるばかりでなく、リリース後に問題を発見・改善するよりも修正コストを低く抑えることができます。このように、製品の開発において評価は有効かつ重要なものと言えるのです。
適切な評価を行うことの難しさ
このように、評価を行うことは製品開発において有効かつ重要なのですが、適切な評価を行うことは難しいものです。不適切な評価を企画、あるいは、実施してしまったという例を少なからず耳にします。それらは大きく以下の3ケースに分けられるように感じます。
- 評価を実施するよりも、他のことを実施した方が良いケース
- 評価手法の選択が不適切なケース
- 何を、あるいは、どの側面を評価すれば良いか認識できていないケース
1つ目のケースは例えば、(ユーザーからのカスタマーサービスセンターへの声などから)製品の問題がかなりの程度すでに明らかになっている場合です。私はこういった場合、すでに明らかになっている問題を評価を行って再認するのではなく、すぐに製品の改善を行う、あるいは、その問題を改善した試作品を作成し、その試作品に対して評価を行うことを薦めています。製品を改善するために確固とした証拠が必要な場合を除き、単純に評価だけを行うことはしません。これは、製品の改善(問題の解決)に可能な限り繋げたいと考えているためです。
次に2つ目のケースですが、これは、何を評価すれば良いかは分かっているが、評価手法の選択が不適切なケースを指します。例えば、製品のユーザビリティを評価したいのに、ユーザビリティテストではなく、グループインタビュー(様々な意見やアイデアを集めるのに向いている調査手法)を選択してしまった場合です。この場合、勿論、期待する評価結果が得られません。そういったことにならないよう、各評価手法が何に向いているのかを事前に良く調べたり、評価の専門家に相談するなりした方が良いでしょう。ご自身で調べられる際は、評価の世界は広く深く、専門家でもすぐに答えを出すことが難しい場合があることを心に留めておくことをお勧めします。
最後に3つ目のケースですが、これが一番厄介です。評価の必要性は認識しつつも、何を評価すれば良いか、あるいは、どの側面を評価すれば良いかをきちんと認識できていないケースです。これは例えば、新しい料理を模索していて、「美味しさ」を追求しようとしているのに、その美味しさではなく、「食べやすさ」で評価してしまった場合です。こういったことは、製品のコンセプトやプロジェクトの目的が不明確になっている時に起こりやすくなります。評価というものは元来、目的/目標が達成できているか(あるいは、できそうか)を調査することです。何を評価すれば良いかを明確にできない場合、適切な評価を行うことができないばかりか、製品を望ましくない方向へと導いてしまうことすらあります。これを防ぐにはプロジェクトの目標や製品のコンセプトなどを常に明確にしておくこと、プロジェクト全体における評価の位置付けを明確化しておくこと(いつどのような評価を行い、その結果をどう活用するのかなどを決めておくこと)が有効です。
おわりに
適切な評価を行うことの重要さと難しさ、良くある問題と対処方法について見てきました。上記が参考になり、世の中の製品やサービスがより良くなることを願います。また、弊社ではウェブサイトやアプリケーションの設計から評価まで、一貫してご支援することが可能ですので、選択肢のひとつとして覚えておいてくだされば幸いです。
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