データビジュアライゼーション —想いを伝える可視化の技法—
株式会社サイン(ミツエーリンクス グループ) 代表取締役 鈴木 雅彦想いを伝える難しさ、事実すら伝わらない葛藤
「想いを伝え、それに賛同してもらいたい」
それは、恋の告白から商談に至るまで、ごくありふれたワンシーンです。にもかかわらず、私たちのコミュニケーションの永遠のテーマとして、誰もが日々悩んでいます。
例えば、ビジネスの現場では、数字や表といったデータを使います。それは提案者にとってみれば、自分の根拠となる大切な情報です。
しかし、情報の受け手にとっては、「それがどう大切なのか、自分は賛成できるのか」、すぐには判断できません。なぜなら、与えられたデータ、その1つ1つが物語っている数字をみても、判断を下すだけの材料にならないのです。
「あなたのいいたいことはわかります。このデータも真実なのでしょう。」
そしてこう続きます。
「しかし、これだけを見せられても“納得感”がないのです。腑に落ちない。」
このような返答がかえってきます。皆さんも経験があるのではないでしょうか?
データをもって語らしめる
「データをもって語らしめること」は、日増しにその重要性を強めています。
事実を咀嚼し、発見された問題に対して、その解決方法をプレゼンテーションする機会も増えていくでしょう。
しかし、高校、大学の受験勉強を振り返ってみてください。ある問に対する正解を述べることに、多くの時間を占めてきたのではないでしょうか。データを集めて問題を提示し、自ら考えた仮説に対して解決策の合意を得る。このような「訓練」はほとんどされてきません。
さらに、朝起きてから就寝するまで、スマートフォン、タブレット端末などから、あらゆる情報が無尽蔵に入ってきます。膨大なデータにさらされながらも、
- データを読解する技能
- データを論理的に伝える技術
- データを考察するための時間
これら3つが、圧倒的に足りていないのが現代人特有の問題だったりします。
データを取り巻く社会構造が大きく変わっていくように、データを使ったコミュニケーションも有用な進化を遂げるべきではないでしょうか。そのきっかけとなるのが、今回ご紹介する「データビジュアライゼーション」と呼ばれるものです。
調理方法としてのデータビジュアライゼーション
データビジュアライゼーションとは、複雑なデータから、パターンや関係性を抽出し、それを可視化していく手法です。
「データ(素材)」から、「情報(価値のある意味)」を生み出す過程において、データの加工が行われます。それは、表にまとめたり、グラフにしたりと、あらゆる手段でデータを加工することになります。このような可視化が行われることで、データから意味を見いだしやすくなります。
例えば、食卓にあがる料理に置き換えると、
- データは「食材」
- 情報は「料理」
- ビジュアライゼーションは「調理方法」
となります。
膨大な数値やテキストが語ることを、俯瞰された「インタラクティブなUI」で表現することにより、驚くほど短時間に、そして直感的に意図することを相手に伝えることができるようになります。それが可視化のメリットであり、前述の「調理方法」としての最大の特長です。それまでは無機質な数字の羅列だったデータが、知的好奇心を掻き立てられる図解へと進化を遂げることができます。
データには、それぞれ相性のよい調理パターンがあり、最も効率的に情報伝達できる表現方法があります。内在する問題、個々のデータの相関に対して、最もアクセスしやすい「UIの型」が隠れています。これらのパターンを理解した上で、インタラクティブな表現を行うことが必要になってきます。
ビジュアライズのもたらす次の世界
データビジュアライズを可能にしたインタラクティブなUIの発展。
その先に待つ未来はどのようなものなのか想像してみてください。10年前は想像もできなかったスマートデバイスが台頭しているように、新しい時代が目の前に迫っています。
1つ予想するなら、私は「目に見える事実、それに価値がある時代は終わる」のではないかと思っています。
それは、一握りのスペシャリストだけが、特別なスキルをもって気づくことができた考察や気づき。これらのデータの背景に潜む「目に見えない関係性」に、誰もがアクセスできる時代がやってくるということです。
ビッグデータという言葉が巷を賑わせていますが、行政機関や企業がもつデータの集合、事実の集まりを、インタラクティブなUIを使って上位に昇華させる動きが活発になるのではないでしょうか。
折しも、近年は様々なデータが入手しやすい時代です。事実の断片でしかなかったデータを、ありきたりなグラフを超えて可視化する。ビジュアライズされた美しい図解は、見ているものを魅了し、新しい表現の世界として楽しませることもできるでしょう。
それらの方法論を、下記の書籍にまとめました。ご興味があれば、ご一読いただけると幸いです。
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