海外インターンシップを通して感じた海外デザイナーの働き方
第七本部(UX) デザイナー 本多 菜々子2015年の7月から9月末にかけてロンドンにある Sutherland Labs へ、3カ月間のインターンシップに行ってきました。
私が所属しているユーザーエクスペリエンス部では、Webサイトやアプリのユーザー体験をリサーチしリデザインする仕事をしており、現在約半数が海外クライアントからの問い合わせです。
今回インターンシップをしたSutherland Labsでもリサーチチームとデザインチームが共同でプロジェクトを行っており、デザイン、リサーチの両側面から日本と海外の違いを学ぶことが目的でした。
今回のコラムでは、主にデザイナーの視点から、海外と日本を比べ私が特に刺激を受けたこと5つを紹介していきたいと思います。
1. 「Less is more」という考え方
どのデザイナーも繰り返し使っている言葉がありました。「Less is more」、少ないことはいいこと、という意味です。
アイコンひとつから始まり、Webサイトの原稿、提案書すら、要素はどんどんシンプルにしていこう、という考え方をクリエイター全員が持ち合わせていたように感じます。
インターン終了後、社内で「海外デザインの特徴って何?」と聞かれることが多くなりましたが、ファーストビューにできるだけ情報を詰め込もうとする日本と比べ、一番大きな違いはここだと感じていいます。
英語圏、特に米国、英国のサイトを見ていると洗練されていると感じることが多いですが、要素をシンプルにすることで、余裕を感じる余白ができ、ダイナミックな写真の使い方が活きてくることが理由のひとつではないでしょうか。
作ったものが複雑になっていると「ちょっと多いね、削ろうか」と言われる、この現地で掴んだ削ぎ落とす感覚は、ビジュアルデザインの洗練感、ブラッシュアップに繋がると実感しています。
2. Love chatting! おしゃべり大好き。それでも作業が早い理由とは?
オフィスでは、本当に全員がよく喋ります。
面白いのは、たくさん喋っているのにいつのまにかデザインができあがっていることです。
では、なぜデザインのスピードが早いのでしょうか?おそらく、手を動かしてから迷っている時間のなさだと思います。
私のチームのデザイナーは、大きな方向性を決めて決断する、ということがとても上手でした。そうすることで、作業中に大きくぶれて迷ったり戻ったりする時間が少なくなるのです。
慎重に、丁寧に、間違いなく作業をするのは日本人の得意分野ですが、その決断力と集中力はぜひ取り入れていきたいもののひとつです。
3. 限られていないデザイナーの役割
ブランディングのプロジェクトが始まると、必要になるデザイン物と優先度、スケジュールとその作業割り振りまで一気に書き出して資料をつくる。例え経験したことのない媒体でも、必要ならばどんどんと制作範囲を広げていき、MacBookを持って社内外を移動し、自らプレゼンもする。
パワフルでフレキシブル、そういった現地のデザイナーの働き方を間近で見られるのは何よりの刺激でした。大きな組織でおちいりがちな細分化された限られた範囲でしかものを考えられなくなっている状況は危険だと感じましたし、今後も変化していくであろうWebデザイナーという職業で何ができるかを考える機会となりました。
4. 一方通行ではない、双方向のコミュニケーション
ワークショップやセミナーでもお互いに発言しあう
クライアントとのワークショップを見学する機会があったのですが、お互いが、提案待ち/要求待ちという姿勢にならず、ミッション達成に向け協力しあっているチームメイトの様な姿が印象的でした。
それは、セミナーや大学の講義でも同じだそうで、登壇者が一方的に話すものではなく、受講者とやりとりを頻繁に繰り返すシステムがよく採用されているそうです。
また、インターン期間中に現地のチームに向けて、英国と日本のリサーチの違いというセッションを行いましたが、セッション中もどんどん質問を投げてくれることで非常に盛り上がりましたし、双方向のコミュニケーションの結果、発表者の私が気づかされることも多くありました。
ミーティングの迫力
社内ミーティングの一つに出ているだけでも刺激を受けます。発言が飛び交い、職場で一番年下の社員も堂々と意見を交わしている姿がそこにはあります。
日本の社員を一から育てていく「新卒」というシステムや年功序列の意識はなく、チームにジョインした時点で一人前とみなされるからです。
5. 仕事場での何気ない会話を大切にすること
通りかかった時に、「How's it going?」(調子はどう?)と話しかけられ、画面をのぞいた時に「I love it!」と言われる、これらはよくある日常のコミュニケーションです。一見作業が切断されて時間のロスのように思えますが、こういった何気ない会話がきっかけとなって、デザインが進んだり、意外な解決に繋がったりすることを何回も経験しました。
こういった経験から、オープンな雰囲気を楽しめるようになりましたし、チームメイトに話しかけることも増えていきました。
おわりに
上記が、私がインターン中に特に刺激を受けたこと5つです。
テクニックやツールよりも、どう仕事に取り組むか?どう人と関わるか?というマインドの部分に大きく刺激を受けましたし、日本との違いも大きいと感じました。
国が違えばクライアントもユーザーも違うので、今回紹介したことが日本の環境で全てうまく適応できるかどうかはわからない部分もあります。
しかし、こういった考えをシェアすることで、プロジェクトを円滑に進めるためのヒントになったり、仕事を楽しむ瞬間がより多く訪れたりと、職場を盛り上げていくためのきっかけになればいいと思っています。
こういったマインドを自らの働き方に取り入れつつ、インターンから持ち帰ったものをさらに社内外にシェアしていきたいと考えています。
Image credit: Sutherland Labs
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