サイトリニューアル時に検討必須!5年後を見据えたWeb基盤とは?
システム本部 第二部 マネージャー 榛葉 裕幸今年は4年に一度のオリンピックイヤー。リオデジャネイロのオリンピック競技大会の熱狂も間もなく閉幕を迎えます。次は東京、4年後の2020年。世界が日本をフィーチャーする機会です。五輪スポンサーに限らず企業プロモーションの好機と意識される企業も多いことと思います。
一方で、このスポーツの祭典は「時代の転換点」を象徴する節目ともされます。企業におけるWebサイトの更改サイクルは一般的に3年から5年。これからWebサイトリニューアルを実行する企業にとっては、次の時代に向けた施策を検討すべき重要なタイミングではないでしょうか。
本コラムでは、これからWebサイトリニューアルを検討中のWeb担当者が、4年後、5年後を見据えたとき、押さえておきたい企業サイトリニューアルのポイントをご紹介します。
キーワードは「サービス」と「ライフサイクル」
4年後、5年後を見据えて、いまWebサイトリニューアルを検討されている方に強調したいキーワードが2つあります。それは「サービス」と「ライフサイクル」です。
サービスとは?
そもそも企業がWebサイトを開設して運営するとはどういうことでしょうか。それは、顧客に「サービス」を提供することだと考えます。つまり、Webサイトを通じて、自社の商品やIR情報といった、顧客をはじめとしたステークホルダーに有益な情報を提供するための一連の業務であり、ヒト・モノ・カネを使って価値(顧客にとって有益な情報など)を生産するための活動 = サービスです。
「サービス」というワードを使うとき、私どもが意識するのは「ITIL(アイティル)」です。ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略で、ITシステムを使ったサービスを、ビジネスの目的を達成するために、適切なコストで、適切な労力で、適切な品質で提供するための「好いやり方」を集めたベストプラクティス集です。もともとはイギリス政府によって1980年代にIT運用改善を目的に体系化されました。いまでは世界中の企業や政府官公庁などがIT運用マネジメントのフレームワークとして利用するデファクトスタンダードとなっています。
WebサイトもITシステムを利用したサービスの1つです。顧客がこうしたサービスに「価値」を感じるのはどのようなときでしょうか。ITILによると、顧客がサービスに価値を感じる要素は2つあるとされます。
サービスの価値 = 有用性 + 保証
どんなに有用なサービスであっても、それが利用できなければ顧客は価値を得ることはできません。たとえば、とても感じの好いイタリアンのお店があったとします。夏場の猛暑にはズッキーニ入りのカレッティエラのパスタが絶品です。しかし、カレッティエラはいつ行っても売り切れで食べることができません。絶品カレッティエラのパスタという有用性がありながら、食べられる保証がない状態です。サービスには、顧客が必要な価値を、必要なときに利用できるようにしておく、有用性と保証の両方が必要です。
Webサイトリニューアルにおいても、この有用性と保証の両方を検討する必要があります。特に、コンテンツ、情報設計やビジュアルデザインといった目に見える有用性だけでなく、保証を支える仕組みの検討が重要です。なぜなら、保証に関する要素は目に見えにくいため、意識的な検討が必要だからです。検討が後追いになったり、おろそかになると、せっかく有用性のあるWebサイトを構築できたとしても、顧客が必要とするときに必要な情報を提供できなかったりと、機会損失や信用の失墜につながりかねません。
具体的にこの保証についてITILでは、情報セキュリティ、キャパシティ、可用性、ITサービス継続性、といった論点について事前に検討・整理することを推奨しています。また、財務管理の視点も重要です。たとえば、過度なセキュリティ強化を目指したり、可用性を高めようとすれば、当然にコストに跳ね返ります。トータルでコストを最適化する視点から、費用対効果を見極めたサービスレベルの調整も必要です。
ライフサイクルとは?
2つめのキーワードの「ライフサイクル」とは、ITシステムの構想から開発・運用・保守・廃棄に至るまでのライフサイクルです。そして、ITシステムを構成する要素は、それぞれにライフサイクルが異なるのが普通です。たとえば、Webサイトを構成する要素には、コンテンツやビジュアルデザインといったフロントエンドの要素と、サーバインフラ環境やCMSなどのバックエンドに関わる要素があります。
フロントエンドのコンテンツやビジュアルデザインは、リニューアル後も運用のなかで頻繁に更新や変更が加えられることが多く、ライフサイクルが短いのが一般的です。また、ユーザがWebを閲覧するために利用するスマートフォンなどのデバイスやブラウザといった技術要素の変化も急速です。
一方で、バックエンドのサーバインフラ環境やCMSは、フロントエンドの要素よりも比較的長く継続して利用されることが多く、ライフサイクルが長いという特徴があります。また、技術要素の変化もフロントエンドよりは緩やかで、安定性を重視した枯れた技術が好まれます。
そして、Webサイトに限らず情報システム一般のプラクティスとして、ライフサイクルの異なる要素は分離して管理する、のが鉄則とされます。なぜなら、ライフサイクルの短い要素と長い要素を密結合で一緒にしてしまうと、ライフサイクルの短い要素に引きずられてシステム全体が不安定になるためです。
たとえば、もしも(あってほしくはないのですが)、Webページの簡単な更新のためだけに、毎回バックエンドのCMSやサーバインフラに手を加えなければいけないシステムがあったとします。この場合、コンテンツ更新の度にシステム全体に修正が加わりますから、毎回、システム全体をテストしなければいけません。修正ミスを見逃せば、更新するコンテンツだけでなくシステム全体の不具合につながります。ライフサイクルの短い軽微なコンテンツ修正が常にシステム全体に影響する状態です。ライフサイクルの異なる要素は、お互いの影響が及ばないようにカプセル化して、疎結合に連携させるのが肝要です。
「サービス = 有用性 + 保証」と「システムライフサイクル」の関係
先にご紹介したサービスの有用性と保証は、このライフサイクルの視点を加えると、次のように整理できます。
- 「有用性」を構成するフロントエンドの要素(Webサイトのコンテンツや情報設計、ビジュアルデザイン) ≒ ライフサイクルが「短い」
- 「保証」を構成するバックエンドの要素(Webサイトを運用し配信するためのサーバインフラやCMS) ≒ ライフサイクルが「長い」
Webサイトの有用性を決める、コンテンツ、情報設計、ビジュアルデザインといったフロントエンドの要素は、作って終わりにはできません。社内顧客であるビジネス部門の要請にこたえて、常に最新のコンテンツを配信し続ける必要があります。ユーザの閲覧環境の変化や時々のトレンドへの対応など、サイクルの短い外部環境の変化にも対応しなければなりません。5年後の更改のタイミングには、初期構築時の状態から大きく変化しているケースも多いはずです。したがって、有用性を構成するフロントエンドの要素については、短いサイクルで変化する前提で、初期構築時はその時点での仮の姿と考えて、柔軟に変化対応できる仕組みを整備するのが重要です。
一方で、Webサイトの保証を支える仕組みである、サーバインフラ環境やCMS製品といったバックエンドの要素(ここでは総称して「Web基盤」とします)は、こちらも作って終わりではなく継続的な保守メンテナンスは必要ですが、5年後の更改のタイミングでも初期導入時の構成や運用設計をそのまま利用しているケースが一般的です。逆にいえば、初期の構成や運用設計を、フロントエンドの感覚で簡易に変えることができません。つまり、保証を支える仕組みであるWebサイトを運用し配信するための「Web基盤」については、初期構築時から長く継続利用する前提で、長く安定して使える環境を整備する必要があります。
2020年の東京オリンピックに向けて統一され安定したWeb基盤の整備を
いまWebサイトリニューアルを検討中の皆様への私どもからのご提案です。それは、フロントエンドの検討からではなく、4年後の東京五輪をマイルストーンとして、長く安定して使える「Web基盤の整備」から着手されてはいかがでしょうか。
Web基盤の整備とは、Webサイトの「有用性」を維持するために、ライフサイクルの短いフロントエンドの変化対応に柔軟に応えられる仕組み(CMSなどのサイト運営機能)の整備です。そしてまた、Webサイトの「保証」を支える、情報セキュリティ、キャパシティ、可用性、ITサービス継続性といった仕組みやプロセスの整備です。4年後には「時代の転換点」を迎える今こそ、次の時代にふさわしいWeb基盤を検討するタイミングと考えます。
具体的に、5年後を見据えたWeb基盤を整備するために、私どもが重要と考えるポイントは次の3点です。
- CMS選定はQCDがバランスする、企業ユースで安定して長く使える商用製品を
- プラットフォームは、セキュリティ・可用性・コストがバランスする、パブリッククラウドの活用を
- これからの企業サイト運営は部分最適ではなく、全社最適視点でITガバナンスの強化とコスト最適化を
セミナー開催のお知らせ
本コラムでご紹介した「5年後を見据えたWeb基盤」のより詳細な内容についてご興味のある方は、2016年9月9日(金)開催セミナー「サイトリニューアル時に検討必須!5年後を見据えたWeb基盤とは?~CMS選定からクラウド活用まで、Web担当者が知っておきたい7つの留意点~」にご参加ください。
セミナー当日は、パブリッククラウドと商用CMS製品を活用したミツエーリンクスのアプローチについて、これまで様々なプロジェクトを通じてお聴きした現場の課題に即した具体例を交えて解説します。また、国内トップクラスの導入実績を誇るCMS「WebRelease」の製造元であるフレームワークスソフトウェア・桝室様をお迎えし、デモンストレーションや事例を交えて、企業のサイト運営に最適なCMSソリューションをご紹介します。
- WebRelease
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WebReleaseは、株式会社フレームワークスソフトウェアが開発した国産の企業向け商用CMSです。2000年7月の出荷開始以来、大手メーカーや金融機関、官公庁や大学など、多くのお客様にご採用頂いています。そして今日に至るまで、数多くのお客様の様々なニーズを取り込みながら日々進化を続けてきました。
ご多用かとは存じますが、皆様のご参加を心よりお待ちしております。セミナー終了後、個別のご質問、ご相談にお答えする時間も別途ご用意する予定です。
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