磯野家に“Echo”が来る日
システム本部 第二部 マネージャー 榛葉 裕幸年度はじめの日曜日、国民的アニメのスポンサーが交代し、新しい電化製品のコマーシャルが流れました。そこに、次代の表徴をみた方もいたのではないでしょうか。
新しい電化製品とは「Amazon Echo※1」です。クラウドベースの音声サービス「Amazon Alexa※2」が搭載され、話しかけると、音声に反応して照明を点けたり消したり、音楽を流したり、今日の天気やニュースを教えてくれたりもするスマートスピーカーです。最近の調査によると、米国では、このスマートスピーカーを 成人の約2割 が所有し、Echoがデバイスシェア7割 を占めるといいます。
3月30日から、Amazon.co.jpはAmazon Echoの一般販売を開始しました。今後、日本国内においても、スマートスピーカーは新しいモノ好きだけでなく”磯野さん家”に象徴されるような一般層にも広く普及していくと予想されます。
ここでは、企業と消費者のコミュニケーションデザインにおいて、重要なポイントを三つお伝えしたいと思います。
第一に、音声インターフェース「Voice User Interface(VUI)」という消費者との新たなコミュニケーションチャネル(顧客接点)が出現した、ということです。これまでデジタルにおける顧客接点といえば、自社WebサイトやアプリにSNSといった画面ベースのインターフェース(Graphical User Interface、GUI)が中心でした。しかしこれからは、家の中に永続的な位置を占める(であろう) Echo のような音声インターフェース(VUI)を備えたデバイスも、重要な顧客接点になってくるということです。
第二に、Alexaのような高度な音声人工知能(AI)がクラウドを通じて利用できることです。つまり、企業は、音声認識や自然言語処理などの専門知識を持たずとも、Alexaと自社が保有するデータやサービスを連携させることで、音声対話による新しいコミュニケーションチャネルを創出できるのです。ただし、そのためには、消費者とのコミュニケーションに資する有益なコンテンツデータや、Alexaと自社のサービスを早く容易にそして安全に連携・展開できる仕組みの整備がより重要になってきます。
第三に、音声インターフェース(VUI)の最適な使い方や利用シーンについては、まだ誰も多くを知らない、ということです。実際に、Amazon社がEchoを日本市場に投入するにおいて、4か月間の招待制を経て一般販売を開始したのは、日本人の発話特性を把握し、より自然な会話に対応できるようAlexaを学習させるために助走期間を必要したからでしょう。音声インターフェースを通じた消費者とのコミュニケーションは、まだはじまったばかりです。このような文化が定着するかも予断を許しません。発展途上の導入最初期であるいま、企業がすべきは、試行錯誤を通じた「探索」と「学習」という次代への準備でしょう。こうした新しいテクノロジー(情報技術)を活用した探索と学習には、PoC(Proof of Concept)プロジェクトが有効といわれます。
期せずして、Amazon Echo の一般販売の発表日と同じ3月29日に、当社は、新サービス「音声AIチャネル創出プログラム for Amazon Echo」の提供を開始しました。
本プログラムは、クラウドベースの音声サービス「Amazon Alexa」と、企業さまが保有する「コンテンツ資産(データ)」をAPI化してつなげることで、スマートスピーカーを利用した、企業とそのお客さまとの音声対話によるタッチポイント「Tech-Touch(テックタッチ)」の創出を、企業さまと「共」に「創」る、共創プログラムです。当社は、AWS(Amazon Web Services、アマゾン ウェブ サービス)が提供するクラウドサービスを活用した、各種ITソリューションの提供を通じて、企業さまのPoCプロジェクトを支援します。
きょうび、デジタルシフトが進展するなか、B2B、B2C、業種、業態を問わず「デジタル」が重要な顧客接点となっています。これは、テクノロジーの力、すなわちICT(Information and Communication Technology)とソフトウェアエンジニアリングによって、新たなタッチポイント「Tech-Touch(テックタッチ)」を創造する構想力と実行力こそが、いま企業に求められていると考えています。
当社の経営理念は「Smart Communication Design Company」です。これを私の部門のビジネスドメインに即して解釈するならば、まさにICTとソフトウェアエンジニアリングの力で、企業さまとそのお客さまとの顧客接点(テックタッチ)を創造し改善すること。本プログラムの提供は、当社の経営理念のひとつの実践でもあります。
磯野さん家の面々とお茶の間で戯れるアレクサ。そんな日が来るのはそう遠くないのではないでしょうか。磯野家に Echo がやって来るその日に備えて、今のうちから準備したいとお考えの企業さまと共に、音声対話による新しいユーザー体験(Voice Experiences)の創出を一緒に推進してまいりたいと願います。
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※1
Amazon Echo – ハンズフリーで利用が可能、いつでも待機、直ぐに反応
Echoは、音声による操作で、常にハンズフリーで利用でき、いつでも反応します。お客様が部屋のさまざまなところから声をかけ、各種の情報や音楽の再生、ニュース、天気などの情報を求めると、Alexaが直ぐに対応します。Echoは、遠隔音声認識技術と7つのマイクアレイにより、部屋中のさまざまなところから発せられる音声を明確に聞き取ります。また、それぞれのマイクの信号を合成する先進のビームフォーミング技術により、ノイズや反響音、さらには音声指示以外の話し声さえも抑制します。Echoの先進的なオーディオデザインには、専用のツイーター、2.5インチ ダウンファイアーウーファーを組み合わせ、部屋全体に鮮明なボーカルとダイナミックな低音レスポンスを実現するDolbyプロセッシングが採用されています。 -
※2
Alexa – Amazon Echoを支える頭脳
Amazon Echoを支える頭脳であるAlexaは、クラウドに構築され、常に進化し、賢くなっています。Alexaに話しかけるだけで、音楽の再生、ニュースやスケジュールの読み上げ、タイマーやアラームのセット、プロ野球や大相撲などスポーツ結果の確認など、日常のさまざまな場面で役に立ちます。Echoの遠隔音声コントロール技術により、部屋中のさまざまな場所からでも、話しかけるだけで、これらのすべてを行うことができます。
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