UX Masterclass 2018参加報告
UXリサーチャー 賀来 大登3月22日にイタリアのミラノで開催された UX Masterclass に参加をしてきました。
UX Masterclassの主催者は世界25カ国以上のUXエージェンシーにより構成されるUX Allianceという国際ネットワークで、当社も日本パートナーとして加盟しています。UX Masterclassは毎年開催され、世界各国のUX、イノベーション、カスタマーリサーチなどの業界に携わる専門家がプレゼンテーションやワークショップを行う場となっています。
今年のUX Masterclassのテーマは「UX Beyond the Screen」。発表内容のカテゴリーは「Customer Experience Design」と「User Centered A.I.」の二つがあり、私とUXマーケティングマネージャーのジョン・ウィークスの二人で「Enhancing Machine Learning with Better UX」というタイトルの発表させていただきました。
UXと機械学習の専門家が協力する重要性について
機械学習はここ数年で最も人気の高い技術の一つであり、コンピューターに自ら学習する能力を与えるための技術を指しています。機械学習を活用したシステムやサービスの例としては商品のレコメンデーションやSiri、Alexaなどのデジタルアシスタントが挙げられます。
この技術により、これまでコンピューターが行うことが不可能だったタスクも可能になりました。しかし、「レコメンドシステムで意味のわからないものを勧められた」「どのような個人情報や公開情報が利用されているのかわからない」「個人情報の利用を停止することができない」「機械学習を搭載しているらしいが、特に必要性を感じない」などとまだユーザー視点で見ると課題は多いのが現実です。
このような状況になってしまった理由としてはいくつかありますが、機械学習が流行っているという理由のみで導入されたことに起因する問題や、そもそもの機械学習の制限がユーザビリティに与える影響を十分に加味しなかったことによる問題が多いのではないかと思います。
この現状を解決するためには、機械学習の専門家とUXの専門家が共同して働く必要があります。発表の後半では、組織としてどのようにアプローチすべきかについて話しました。チーム形成面のアプローチについては、人材の集め方や様々な専門知識を持つチームメンバーの中でどのように共通認識を作り上げるかについて話しました。また、メソドロジー面のアプローチも紹介し、初期のユーザーリサーチフェーズから商品リリース後までの開発フローでUXの専門家と機械学習の専門家が協力して働くことの重要性について話しました。
このような話をすることにより、機械学習システムの強みとUXをどのようにして両立できるかについてそれぞれの専門家が考えるきっかけになればよいと思っています。
音声インターフェースのUX
UX Masterclassではビッグデータの活用方法や具体的なサービス開発の事例など、様々なセッションが行われていましたが、音声インターフェースに焦点を当てたセッションが特に多かったことが印象に残りました。
日本でも2017年の後半からスマートスピーカーが販売されるようになり、海外では特に若い世代においては受け入れられるようにはなってきましたが、まだ音声インターフェースの裏にある機械学習システムは言語が持つ曖昧性や不透明性といった特性を理解できるまでのレベルには達していません。ユーザーが自然に音声インターフェースシステムと接することができるように「過去の会話内容を記録しておき、必要に応じて引き継ぐ」「システムがユーザーの入力を待っていることがわかるようにする」などといったベストプラクティスがすでに存在しないわけではありません。しかし、これからさらに音声インターフェースを利用するシステムが増えることを考えると、どのようにしてインターフェースの定義づけを行い、プロトタイプを作成して、テストするのか?といった質問に対して積極的にUX業界として考えていく必要があることが述べられていました。
終わりに
機械学習といった新しい技術が活用されることにより、音声インターフェースなどのようなこれまでには不可能だったインターフェースや機能が生み出されますが、それはこれまでには存在しなかったようなユーザビリティ問題が発生することも意味しています。UXの専門家としては、技術の進歩にかかわらずユーザーにとって最適なUXを提供できるように、早い段階から新しい技術が可能にする機能や制限などについて理解することの重要性を実感しました。
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