1年でほぼ2倍、次世代通信プロトコル「HTTP/2」急増の“もう1つの事情”
システム本部 第二部 マネージャー 榛葉 裕幸通信プロトコルレベルでWebページの表示速度改善が期待できる「HTTP/2(Hypertext Transfer Protocol Version 2)」。RFC化から3年を経過し、日ごろWebパフォーマンスやWeb品質に関心が高いWeb担当者さまは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
Q-Successによると、HTTP/2を導入済みのWebサイトの割合が過去最高を更新。このコラムを書いている2018年9月13日現在、29.9%と、3割到達が目前です(Usage of HTTP/2 for websites)。
もちろん、そこにはGoogleのスピードアップデートが与えた影響も大きいと思いますが、それ以外にも背景がありそうです。いま企業Webでは、何が起きているのでしょう。
年々、重くて遅くなるWebサイト
iPhoneの登場から10年が過ぎ、国内のスマートフォンの世帯普及率はPCを上まわり75.1%に達しました( 平成29年通信利用動向調査 )。企業Webが消費者との重要な顧客接点となるなか、消費者がWebを閲覧する環境は完全にモバイル全盛です。
年々、モバイルデバイスは高解像度になり大画面化もすすんでいます。比例して、Webページのデータ量も増加傾向にあります。実際、HTTP Archiveでここ5年のデータ転送量(Total Kilobytes)の変化をみると、デスクトップがほぼ倍増で、モバイルは4倍も増えています。
企業サイトでも高精細の画像ファイルや細かなCSSを読み込むグラフィカルでリッチなWebページが増えていますが、従来仕様の通信プロトコルHTTP/1.1では、こうしたページの読込み速度向上には限界がありました。
また、モバイル通信環境下では通信品質にバラツキがあるため速度遅延を実感しやすいといわれます(不満噴出のスマホ通信品質、携帯11社の遅延を計測)。いわゆるレイテンシの制約です。Webページの読込み速度はレイテンシに依存して、レイテンシの値が大きければ大きいほど低下するとされます(Latency as a Performance Bottleneck)。HTTP/2の主な目標は、レイテンシの短縮です(HTTP/2 の概要)。
企業Webサイトに迫りくる“10月危機”
ただ、モバイル端末の普及は今にはじまったことではありませんし、モバイル通信環境も3GからLTEに4Gへと日々進化しています。HTTP/2比率が急上昇している理由は、モバイル全盛だけではなさそうです。
ここでふたたびQ-Successをみると、常時SSL/TLS(HTTPS)対応済みWebサイトの割合が1年でほぼ倍増しています(Usage of Default protocol https for websites)。
最大シェアを持つWebブラウザChromeは、2018年7月にリリースされたChrome 68から、非HTTPSサイトにアクセスすると「保護されていない通信」と警告が表示されるようになりました。
さらに、2018年10月からは、ユーザーがHTTPページにデータを入力するときに表示される「保護されていません」の警告を「赤」に変更する、と予告されています(Chrome のセキュリティにとって大きな一歩: HTTP ページに「保護されていません」と表示されるようになります)。何より信用第一の企業Webサイトにとって、常時SSL対応は待ったなしの状況です。
実は、常時SSLとHTTP/2は密接に関連しています。HTTP/2の仕様では、必ずしもHTTPS通信を前提にしていませんが、すべてのHTTP/2対応ブラウザはHTTPSでしかHTTP/2を利用できません(HTTP/2 over TLS)。実質的に、HTTP/2を利用するには常時SSL化が前提となります。
また、従来規格(HTTP/1.1)で常時SSL化した場合、Webサイトの構成によっては表示速度の低下が懸念されます。しかし、常時SSL対応にあわせてHTTP/2にアップグレードすることで、こうしたネガティブなインパクトを無効化し、さらなるパフォーマンスの改善が期待できます。
実際、GoogleはHTTP/2による常時SSLサイトの高速化を、HTTPSを普及させるためのインセンティブとして意識しているようです(HTTPSにまつわる怪しい伝説を検証する - Google I/O 2016のセッションから)。
つまり、HTTPSの普及が、HTTP/2比率上昇のもう1つの事情と言えるのではないでしょうか。
まとめ
Webページの表示パフォーマンスの高速化と安全なインターネット利用を促進するHTTP/2は、今、本格的な普及期を迎えています。
しかし、HTTP/2も常時SSL化もサーバー側の対応が必要となりますが、現在の環境を変更するのは敷居が高く難しいケースが多くあります。そのため近年、Webサイトリニューアルに合わせて、Webサーバーやホスティングサービスも刷新する事例が増えています。
当社は、Webホスティングサービス「クラウドCMS on AWS」全プランにおいて、次世代通信プロトコル「HTTP/2」を標準提供しています。「クラウドCMS on AWS」で運営される、常時SSL化されたすべてのWebサイトは、特別な手続きや設定変更を行うことなくHTTP/2をご利用いただけます。
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