withコロナを生き抜く、企業Webの”BBB”
システム本部 プロダクトマネジメント部 榛葉 裕幸”BBB(Build back better)” より良く再建しよう、再建するなら前よりよいものを。
約2カ月続いた緊急事態宣言は解除されました。しかし歴史を振り返ると、第2波、第3波は不可避。慎重に再起動すべきときです。しかも元通りとはいきません。withコロナのニューノーマルを見据えた「BBB」が求められます。
戦略的ITとしての”コーポレートWebサイト”
COVID-19で、景色は一変しました。急速に悪化したビジネス環境下で、財務体質の強化は必然の流れでしょう(ガートナー、新型コロナの影響下にて財務面で生き残るためにCIOが取るべき8つのアクションを発表)。
他方で、生き残りをかけたIT戦略も加速するといいます(7割が「新型コロナがIT戦略の遂行を加速した」アイ・ティ・アールがコロナ禍の企業IT動向に関する影響調査)。
新常態に適応すべく、デジタルで、従来の稼ぎ方や働き方を変革しようというわけです。テレワーク制度の導入や付随して発生するIT関連投資はわかりやすいですが、それだけではありません。”コーポレートWebサイトの強化・見直し”も戦略的ITとして位置づけられています。
”ビジネス貢献に意識高い”企業Webの共通点
では、戦略的ITとしてのエンタープライズWebとは? ひと言でいえば、ビジネスへの貢献、事業へのインパクトを意識するか否か。コスト抑制思考で費用対効果を指向するコストセンターにとどまるのか、事業貢献への投資対効果(ROI)を意識したビジネスドライバーを目指すのか。
もちろん、ECのデジマや販促で意識される短期の売上貢献とは違うでしょう。コーポレートサイトでは、以前からGoogleが提唱するZMOT(The Zero Moment of Truth)のように、どちらかというとプル型で、コンテンツを通じた中長期での自社ビジネスへの貢献がイメージされます。
実は、Webのビジネス貢献度が高い企業には、3つの共通点があると考えています。
1. リーダーシップ
Web活用がうまくいっている企業には、Webならこの人という”チャンピオン”がいます。自社ビジネスに精通したドメインエキスパートであるとともに、情報技術にも明るく、クリエイティブにも目配りができる。そしてビジネス成果を意識し、エグゼクティブからの支持を取り付けることができる人材。
かといって、チャンピオンはなんでもできる”強い”リーダーではありません。むしろ自分の”弱さ”を隠さず、謙虚さと敬意をもって臨みます(HRT原則にも適う)。そして、外部パートナーを含む多様な関係者から適切な支援を引き出し、コラボレーションを通じて成果を出します。
先ごろIPAから公開された「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」によると、DX推進に重要度の高い人材タイプとして、プロダクトマネージャーとともに「ビジネスデザイナー」があげられています。チャンピオン人材は企業Webのビジネスデザイナーともいえます。エンタープライズWebでも、人材の発掘と育成はますます重要になるでしょう。
2. 組織変更
Webをビジネスに不可欠な重要業務と位置付け、企業Webを推進する中心チームを組織化しています。
従来のWeb担当というと他の専門業務との掛け持ち、組織横断的な(といえば聞こえはいいのですが)人も予算も権限も”ない”集まりであることもしばしば。ノウハウ伝承や人材育成はおろか、中長期で成果を目指すことは難しい。人も予算も権限も”ある”組織とすることで、中長期の成果にコミットでき、戦略的な仕掛けが可能となります。
またWeb業務は、会計や経理などとくらべると歴史が浅いためか、業務領域の境界が固まりきっていません。今も変化の途上です。時間とともに様々な職域に細分化され、職域ごと組織構造も専門分化してきました。こうした変化にあわあせて、組織も業務も定期的に見直すことが大切です。
3. 技術の現代化
クラウド移行など、システムのモダナイゼーションに取り組んでいます。
目的は、単に新しめの技術に置き換えることではなく、”ユーザー体験の向上”です。顧客体験はもちろんですが、昨今特に重視されるのは”エフォートレスな従業員体験”。Webを運営する側が、努力を必要とせずに、楽にうまくいく仕組みづくり(システムの再構築)です。
サーバレスでセキュアな配信環境の整備、コンテンツやアプリのリリースプロセス自動化(CI/CD)、組織構造に適したアーキテクチャへの見直しなど、実際の施策は個別事情により様々です。共通するのは、差別化につながらない重労働からの解放、自然と本業に集中できる仕組み。ビジネス成果にこだわる企業ほど、エフォートレスな業務体験を意識しています。
まとめ
ITというと、なにか目新しいツールの購入やソフトウェアの開発と思いがちですが、そうではありません。ソフトウェアを作ったり購入する前にすべきことは、ビジネス(業務・組織)のデザイン(設計)です。
業務デザインは、現行の棚卸し(As-Is)と、あるべき姿の構想(To-Be)から。アズイズを振り返り、「はじめる」「やめる」「続ける」の3つの観点で施策の全体「業務・組織・IT」を見直す。自社で内製すべきコア業務は何か、外部パートナーにオフロード可能なノンコア業務は何かを考え抜くこと。
危機は点検と変革の契機といわれます。再起を期す今こそ、先行企業の取り組みも参考に、自社のWeb業務全体のあり方「業務・組織・IT」を考えてみてはいかがでしょうか。
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