進むWebブラウザとAI技術の融合
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁AI技術ベンダーのPerplexityが、「Comet」と呼ばれるWebブラウザを開発中であることが、先日報じられました。現時点では、まだCometを使用することはできず、いち早く試したい人向けに、順番待ちリストへの登録を受け付けているようです。
ChatGPTが普及し始めて以来、Webを対象とした検索サービスが将来はAIチャットサービスに取って代わられ、さらにはAI技術がWebブラウザ市場を侵食するのでは、といった予測が語られてきました。
ですから、AI技術ベンダーがWebブラウザを手がける、すなわちWebブラウザとAI技術が融合する動きは、驚くに値しません。
事実、ChatGPTの開発元であるOpenAIは、今年に入って独自ブラウザを使用しタスクを実行できる「Operator」を発表しました。また、Webブラウザ「Arc」を提供するThe Browser Companyは昨年、AI技術を統合した「Dia」を提供予定であることを明らかにしています。
この流れを踏まえるなら、AI技術が席巻した暁には、人間がクリックやタップでWebを閲覧する従来のブラウザは不要になるのでは……などと想像する読者の方がいらっしゃるかもしれません。
長期的にはわかりませんが、短期的にはそのような状況は訪れないだろうと私は思います。なぜなら、人間が行う情報探索のすべてが機械によって代替可能とは限らず、たとえ非効率であっても自ら試行錯誤しながら調べたい、あるいは特定のWebサイトに能動的にアクセスしたいという欲求は、当面のあいだ無くならないと考えているからです。
その種の欲求とて、もっともらしいけれど誤った内容をAIが回答する「ハルシネーション」問題が解消されれば、いずれ消え去るかもしれませんが……少なくともCometやOperator、Diaといった新興ブラウザがGoogle ChromeやApple Safariといった既存ブラウザの牙城を崩すには、一定の時間を要するでしょう。
また関連して、SEO(Search Engine Optimization)はもう古い、時代はAIO(Artificial Intelligence Optimization)だ、というような論調を目にします。一理あるとは思いつつ、GoogleにしろBingにしろ、検索サービスへのAI技術の統合はすでに進んでいるわけで、私はSEOとAIOを別物とは見ていません。
もとより機械可読性と人間可読性を両立させる必要のあるWebコンテンツにおいて、機械と人間のどちらにどこまで歩み寄って作るかというテーマは不変であって、SEOにしろAIOにしろコンテンツを提供する側として取り組むべき中身は本質的に変わらないのでは、とも思います。
さて、このWebブラウザとAI技術の融合という話題、実は4月10日に再演を予定している2025年のWebデザイントレンド 解説セミナーで触れる話題の1つです。多くの組織で新年度を迎えるタイミングではありますが、昨年末の開催回に参加されなかった皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
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