倫理的なWebの原則
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁さまざまなWeb技術を標準化するW3Cについては、電通B2Bイニシアティブに掲載いただいたインタビュー記事、「ミツエーリンクスが語る!B2B分野におけるWebサイト制作や継続的な改善サポートの極意」において、当社 代表取締役社長(CEO)の藤田が以下のように言及していました。
ミツエーリンクスはW3Cの理念「Webの可能性を最大限に引き出す」という部分に以前から共感しており、W3CのWeb制作会社のなかでは最古参となるメンバーです。
そのW3Cが発行する文書にはさまざまな種類があり、よく知られているのが標準に用いられるRecommendation、日本語で「勧告」と呼ばれるものでしょう。Webコンテンツのアクセシビリティ品質に関するガイドライン、Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)も、W3C勧告として策定されたものです。
いっぽう、標準に属さない文書の多くはNote(ノート)と呼ばれ、さらにノートのなかにStatement、「声明」と呼ばれる種類の文書があります。声明は公式な標準、技術仕様とは異なりますが、しかし正式にW3Cにおいてレビューや承認を経て発行されるものです。
前置きが長くなりましたが、昨年12月12日付けで、W3C声明として初めて発行されたのが「Ethical Web Principles」、倫理的なWebの原則です。
- Ethical Web Principles is a W3C Statement
- W3C Statement on Ethical Web Principles guides the community to build a better web
- Ethical Web Principles: Building a better web
W3Cの公用語は英語のため、この声明も英語で書かれていますが、有志の方が翻訳された日本語訳(倫理上の Web 原則 — W3C TAG Ethical Web Principles)を読むこともできます。全部で12ある原則を、ひとまず私の訳でご覧ください:
- Webは1つである(There is one web)
- Webは社会に害を与えない(The web does not cause harm to society)
- Webはコミュニティや議論の健全性を支える(The web supports healthy community and debate)
- Webはすべての人々のためにある(The web is for all people)
- Webはセキュアであり、人々のプライバシーを重んじる(The web is secure and respects people's privacy)
- Webは表現の自由を可能にする(The web enables freedom of expression)
- Webは情報が正しいかどうかの検証を可能にする(The web makes it possible to verify information)
- Webは個人のコントロールやパワーを高める(The web enhances individuals' control and power)
- Webは環境的に持続可能なプラットフォームである(The web is an environmentally sustainable platform)
- Webは透明である(The web is transparent)
- WebはブラウザやOS、デバイスの別を問わない(The web is multi-browser, multi-OS, and multi-device)
- Webは人々の選ぶ方法で利用できる(The web can be consumed in any way that people choose)
いかがでしたでしょうか。ニュースなどで誤情報やデマの拡散が取り沙汰されることの増えた昨今、7番目の「Webは情報が正しいかどうかの検証を可能にする」という項目が、とくに興味深く映るかもしれません。
私は昨年からSustainable Web Interest Groupの活動に参加していますが、9番目にある「Webは環境的に持続可能なプラットフォームである」は、サステナビリティの文脈で今後ますます、重要になっていくのではと思います。
また、当社が長く取り組んできたアクセシビリティと密接に関連する「Webはすべての人々のためにある」「WebはブラウザやOS、デバイスの別を問わない」「Webは人々の選ぶ方法で利用できる」の3つは、私の個人的なお気に入りです。
いずれにせよ、これら12の原則を踏まえW3C標準、ひいてはWebそのものが、今後形作られていくことでしょう。Webサイトの構築・運用を主たる事業とする当社においても、これら12原則を念頭に置き、Web技術を活用する必要があると考えます。
今を遡ること21年前、W3Cに加入した当時に掲載したお知らせでは、次のように記していました。
弊社は、W3CのWeb標準を視野に入れて制作物のクオリティをさらに追求する一方、W3CのメンバーとしてWeb技術の発展と普及に貢献していきたい所存です。
この初心を貫徹し続けるうえでも、上記の12原則を大切にしたいと私は思います。加えて、Webサイトの構築・運用をご一緒させていただく顧客の皆様とも同じ倫理観、言わばWebの基本的価値観を共有したく、本コラムを書かせていただきました。
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