#13「最近のWebについて全盲のエンジニアに聞いてみた」
ミツエーリンクスで働く全盲のエンジニアに最近のWebについて聞いてみました。
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- 橋本
- こんにちは!
- 大塚
- こんにちは!
- 橋本
- ミツエーテックラジオは株式会社ミツエーリンクスのスタッフがWebデザイン、 WebフロントエンドなどのWeb技術に関するニュースやツールなどをシェアするためのポッドキャストです。
司会は橋本が務めさせていただきます。今回のゲストはアクセシビリティ・エンジニアの大塚くんです!本日はよろしくお願いします! - 大塚
- よろしくお願いします! 20年新卒入社ということで橋本くんと同期の大塚です。私なんですが、視覚障害があり、先天性、生まれつきの全盲です。現在はアクセシビリティ部でアクセシビリティ・エンジニアとして仕事をしています。
- 橋本
- はい。自分ははじめて大塚くんと会ったときは本当に目が見えていないの?って思うくらい自在にパソコンを操っていたので、それはすごくびっくりしました(笑)
今日はそんな全盲のエンジニアとして当社で働いている大塚くんと最近のWebについて同期対談的な形でお話ししていければと思います! - 大塚
- はい!よろしくお願いします!
- 橋本
- お願いします!
最初にちょっと、先ほどの自己紹介でもあったアクセシビリティ部について、大塚くんが普段どんなことをやっているのかについてお聞きしてもいいですか? - 大塚
- はい。まず一つ、社内外へのアクセシビリティの啓発をしています。中途入社された方向けの研修でスクリーンリーダーについて解説したり、社外向けのセミナーで登壇したりしています。ほかには、最近だとアクセシビリティに関連した調査レポートの作成もしています。
- 橋本
- なるほど。確か、昨年の10月ごろにセミナーに登壇してましたよね。
- 大塚
- はい!
- 橋本
- そこで新卒1年目でそういった社外に向けての発表の場に登壇していてすげーって思いましたね(笑)
- 大塚
- ありがとうございます!事前にリハーサルなどは何度もしていたんですが、当日は本当に緊張しました。セミナーでは、パソコンやiPhoneを実際に操作しながら、スクリーンリーダーの使い方などをお伝えしました。セミナーに参加いただいた方からも好評をいただくことができたので、セミナーで伝えたかったことを伝えられたのではないかと思っています。
- 橋本
- おぉー、流石ですね。ちなみに、先ほどアクセシビリティ部の活動として社内外のアクセシビリティの啓発というのがあったと思いますが、最近だとどんな活動をしたんですか?
- 大塚
- 最近だと、1月のことになるんですが、筑波技術大学の情報システム学科の講義に登壇したりしましたね。
- 橋本
- 活動の守備範囲が広いですね(笑)
- 大塚
- はい(笑)。筑波技術大学が私の母校ということもあって、大学でお世話になった先生から声をかけていただき登壇しました。 筑波技術大学は、視覚障害、聴覚障害を持つ学生が通う大学なんですね。実際に卒業生がどのような仕事をしているのかを学生たちに話してほしいということで、アクセシビリティに興味を持ったきっかけや就職活動についてなどをお話しました。
- 橋本
- なるほど。そうですよね、コロナ禍の影響でより就活とか生活に不安が結構ありますよね。今回大塚くんのお話を通じて、多くの同じ境遇の方の力になったと思います!
- 橋本
- 話は変わって、大塚くんの普段のWebの使い方についてなんですが、目の見えない方って画面が見えないのでマウスを使わずに、基本的にキーボードのみでWebを操作する感じじゃないですか。
- 大塚
- はい。
- 橋本
- その時にどのようにして情報を得ているのかっていうことが気になっているんですけど、その辺についてお聞きしてもいいですか?
- 大塚
- わかりました。私を含めて画面を見ることができない全盲のユーザーは、スクリーンリーダーという画面上のテキストを音声で読み上げるソフトを使っています。スクリーンリーダーの音声を頼りに、マウスではなくキーボードを使って操作しています。ちなみに、スクリーンリーダーはパソコンだけではなく、スマートフォンで使うこともできます。
- 橋本
- あっ、そうなんですね。
- 大塚
- はい。で、スクリーンリーダーを使っているといっても、普段やっていることというのは皆さんと基本的には変わらず、たとえばECサイトで商品を購入したり、ニュースを見たり、SNSでコミュニケーションをとったりしています。
- 橋本
- へぇ~、基本スクリーンリーダーとキーボードだけなんですね。それで問題なくサイト上で商品を購入できちゃうのはすごいなぁと思いました。
- 大塚
- はい、ほんとにすごいことだと思います。アクセシビリティ様様です(笑)
- 橋本
- 次はちょっと開発者に関わる話になるんですが、大塚くんがスクリーンリーダーを使用するうえでWeb制作で踏まえてほしいポイントみたいなのがあれば教えてください。
- 大塚
- はい。細かく挙げていけばいろいろあると思うのですが、コンテンツを適切な順序で、適切な要素を使ってマークアップすることが重要なのではないかと思っています。スクリーンリーダーは、HTMLを記載された順に直線的に読み上げるんですね。その時には、たとえばリンクや見出し、テーブルなどの構造に関する情報も読み上げます。なので、内容が伝わるような順序で、正しい構造を伝える要素でマークアップすることが重要です。
それと、先ほど話したように、私を含めてスクリーンリーダーユーザーはキーボードを使って操作しているので、フォーカスの順序と見た目的な順序を一致させるというのも重要です。 - 橋本
- はい、ありがとうございます。自分も開発者なので、今挙げていただいた点はよく気を付けてマークアップはしています。ただ、それでもたまに抜けがあったりしちゃうので、スクリーンリーダーなどの支援技術を実際に使いながら、そういった状況下の人の立場に立って制作していくと良いのかもしれないですね。
- 大塚
- はい、無料で使えるスクリーンリーダーもあるので、ぜひ使ってみてください!
- 橋本
- はい、使ってみます! 次は音声コンテンツについてちょっと触れようと思うんですが、大塚くんは今年に入ってから話題になっているClubhouseについてご存知ですか。
- 大塚
- はい!もちろん知っています!最近は落ち着いてきていますが、 Clubhouseが出たころには対抗馬としてTwitterからSpacesが発表されたりと音声SNSが盛り上がっていましたね。
- 橋本
- あー、そうですね。これらのコンテンツって視覚情報に頼らないので大塚くんとしても結構親しみやすいんじゃないですか?
- 大塚
- そうですねー、私自身常に音声情報に頼り切った生活をしているので、音声のみを使ったコミュニケーションが注目されるのは単純にうれしいですね。 アクセシビリティに関連した話をすると、実は先ほど橋本くんが話してくれたClubhouseのiOSアプリは、リリースされた直後はほとんどのボタンを読み上げなかったり、スクリーンリーダーユーザーにとって非常に使いづらいものとなっていたんですね。ただこれは今では大きく改善されていて、かなり使いやすくなっています。音声をメインで扱うサービスは特にスクリーンリーダーユーザーがより多く利用すると考えられるので、アクセシビリティを考慮することはより重要だと改めて感じました。
- 橋本
- あー確かに、音声をメインで扱うとなると普通のユーザーよりもスクリーンリーダーユーザーの方が恩恵があるのでそのニーズは大事ですね!
- 大塚
- はい。個人的には音声SNSは長続きしてほしいですね。
- 橋本
- そうですね。
引き続き近年の情勢の話になるんですが、視覚に障害のある方とか高齢者の方がコロナになってからWebにおいての情報入手が困難になったっていう記事を前に閲覧したことがありました。 これの原因の1つとして、先ほどから話に出てきているスクリーンリーダーを使った読み上げ機能に対応していないことだと思うんですけど、大塚くんはこのコロナを通して何か困った事ってありましたか? - 大塚
- そうですね…、確かにアクセシビリティに関する問題で情報入手がしづらいという側面もあると思うのですが、個人的にはWebでの商品購入や手続きが注目されるようになって、Webサイトが使いやすくなったり、Webでできることの幅は広がっているんじゃないかと思っているので、どちらかといえばプラスにとらえています。
直接的にコロナが影響しているのかはわかりませんが、たとえば去年あった国勢調査では、回答用のWebサイトがスクリーンリーダーでかなり使いやすくなっていました。ほかにも、オンラインでのマイナンバーカードの申請や、携帯の機種変更が推奨されるようにもなったりしています。 Web上で完結することでのメリットを感じられるのは、障害を持つ人だけではないはずなので、どんどんWebでできることが広がっていってほしいですね。 - 橋本
- なるほど。そうですね、悪い側面がありつつも、Webの使用者が増えたことによって、これまで大々的に見えていなかった問題点が洗い出されていったって感じなのですね。今後そういった問題がさらに修正されていくといいですね。
あと、仕事に関してでいうと、会議がZoomやTeamsなどのコミュニケーションツールを使ったオンラインで行われることが結構増えてきている状況で、目が見えないと大人数で会議する時に、誰が今話しているのかわからなかったり、カメラを通したコミュニケーションが難しそうな印象があるんですよね。 - 大塚
- そうですね。実はコミュニケーションそのものは、方法が変わったとしても音声をベースにしたものであることに変わりはないので、たとえば声から話している人を判断する必要があるといったことは変わらなかったりします。ただ、これはどうにもならないことも多いのですが、画面共有が見えている前提で話が進むこともあったりするので、そういったときに必要な情報を得るには工夫が必要なのかなと思います。
- 橋本
- なるほど。確かにそういった場合には周りの配慮も必要になってきそうですね。
ということで、今回のミツエーテックラジオでは全盲のエンジニアである大塚くんとスクリーンリーダーや最近の情勢を交えつつWebについてお話ししました。今回割と大塚くんにフォーカスしたお話だったのですが、スクリーンリーダーなどで視覚情報に頼らずにWebを活用している方のWebの使い方だったり意見を聞くことができて、よりコンテンツをアクセシブルにするための対応の大切さを実感できました。最後に大塚くんから何か話しておきたいことってありますか? - 大塚
- まだちょっと先の話にはなるんですが、6月4日に「スクリーンリーダーで学ぶWebアクセシビリティ」というセミナーを行い、そこで自分は講師として登壇させていただきます。 このセミナーはすべての方が参加できるわけではなく、対象を企業のWeb担当者中心にしているため、対象のリスナーの方でもし興味がありましたら是非参加してみてください!
- 橋本
- ありがとうございます!セミナー頑張ってください!
- 大塚
- ありがとうございます!
- 橋本
- 最後に、ミツエーリンクスではスマートなコミュニケーションをデザインしたいUIデザイナー、UI開発者を募集しています。採用サイトではオンライン説明会やオンライン面接なども行っていますのでチェックしてみてください。
また、このPodcastはApple Podcast、 Google Podcast、Spotifyで配信していますので、お好みのプラットフォームでフォローいただけると、最新のエピソードをすぐ視聴できます!こちらもぜひご活用ください。
それでは今日はこの辺で!ありがとうございました! - 大塚
- ありがとうございました!