工程管理と素材を考える
代表取締役 髙橋 仁「IT分野のプロジェクトマネジメントとファシリティマネジメント」
先日、会社の一部を改装しました。
その工事の折、請負企業の担当者にファシリティマネジメントについて興味深いお話をして頂きました。FM(ファシリティマネジメント)とは,ファシリティ(土地,施設,執務環境等)の総合的な企画・管理・活用を行うもので、工事請負の際のプロジェクト管理業務と捉えて頂ければと思います。実は、日本のファシリティマネジメントには3年前から関心を持っており、特に工程表に基づいた時間管理、各専門分野の手配および管理は実に見事であり惚れ惚れします。彼らが口癖のように言う「クリティカル」「段取り八分」という言葉は、シックスシグマ風に言うとCTQ(Critical To Quality)に通じるものがあり奥が深いと感心させられます。
IT分野のプロジェクトマネジメントとファシリティマネジメントのプロセス構造上の大きな違いは、「素材」の入手方法と認識します。しかもその違いは工程管理に多大な影響を及ぼしています。
ファシリティマネジメントの場合、設計が決まった瞬間から、マネジメントを行う受注者側が専門業者を選定し、素材(建材)の手配をします。工事開始時には受注者側が完全にイニシアティブを取ります。しかし、IT分野、特にコンテンツ分野では、素材の入手先が発注者側である顧客企業様であるという点です。利害関係もあり完全にコントロールが難しい環境下にあります。また素材の完成度に関してもマチマチという問題も抱えています。工程管理という意味だけに特化すればこの部分に大きな課題があると認識します。なぜならばプロジェクトにおける問題のほとんどは、プロセスとプロセスの引継ぎ時(その中間)に存在しているからです。
「素材」に関する顧客企業様が抱える問題
顧客企業担当責任者様を取りまく環境は実に多くの問題を抱えています。1)大企業であれば部門間連携が必要であり社内スケジュールが非常に困難を極めます。2)素材の作成者が多く存在し、それぞれ文体に個性があるため、タイトル、本文等統一性をコントロールすることに非常に困難を極めます。3)情報作成者はほとんど兼務で行っており、編集のプロではない場合が多く、伝えたい情報は作成できても、ユーザーが如何に捉えるかという点まで考慮するに入れることは困難を極めます。
黎明期における「素材」に関する認識
1994-1995年当時、コンテンツという側面からみれば、インターネットの革新的技術は、「画像とテキスト」が同時に一つのブラウザによって表示できたという点でした。そして、インターネット上に流通するコンテンツの広がりの第一歩は、印刷された「会社案内」をインターネットに変換すること。そして「画像とテキスト」を同時にかつ効果的に表現すること。これがミッションでした。このような当時の環境下では、「Webデザイナー」の出現が必要であり、また期待通り彼らはコンテンツを引っ張るトップランナーとして社会に出て行きました。またそれを可能にしたのは、素材はすでに存在しているという前提条件と制約条件があったからだと認識します。
「工程管理」の今後のあり方
このように、素材そのものは工程管理においてクリティカルな部分といえますが、実は、コンテンツ企業は素材そのものにはあまりタッチしていなかったという事実があります。またその扱い方法は現状でも非常にデリケートな環境下にあります。工程管理という視点から素材を考えた場合、コンテンツ受注企業側のプロジェクトメンバーの選出では不十分であると考えます。双方にプロジェクトメンバーを置き、全体を一つの組織として、コミュニケーション計画(情報伝達方法)、素材作成方法、役割、スケジュール、等々を予め定義づけるプロジェクトマネジメント計画書が不可欠です。なぜならば、工程管理上の問題要因の多くは、役割りにおける認識の不一致と、コミュニケーション方法に問題があるからです。またこれらの実施によって、顧客企業担当責任者様の社内調整の苦悩から開放することが必要です。
「素材」の扱いに関する今後のあり方
現在の顧客企業様におけるインターネット活用目的を考えると、我々コンテンツ企業が素材は存在するものという認識自体が間違っています。なぜならば、広報的役割よりも経営に直結する1)ITを利用したビジネスプロセスの構築、2)ビジネスプロセスを支えるコンテンツの構築、3)ビジネスプロセスを支える情報システムの構築、4)構築後、持続的発展・継続的改善を図る運用の実施、が主な目的になって来ているからです。つまり、コンテンツを作る前提として、顧客企業様の「事実」、主要ユーザーの要求、競合とのギャップを捉えることなく、経営に直結するコンテンツの構築には無理があるという認識です。また、今後コンテンツ企業の大きな役割は、「如何にユーザに伝えるか?」という視点から、「如何にユーザーは情報を受け取るか?」という視点に変更する必要もあると認識します。
弊社の現在の取り組みは、これらの問題を解決するための「新Webプロジェクトマネジメント」手法を開発し、また事実を捉える科学的手法も開発しております。現在の運用方法に問題がある場合、是非一度弊社の担当者まで相談していただければ幸いです。
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