PMの導入とインターネット
代表取締役 髙橋 仁プロセスマネジメント(PM)導入を検討している企業が増えてきた
先日、同じ業界でISO9001取得を目指す企業があり、「話を伺いたい」という問い合わせがありました。また、ある財団にBS7799導入に関して、大手保険企業にはJIS Z 9920導入に関して、大手ソフトウェア企業にはBS7799の審査手法に関して、それぞれ弊社が体験から学んだ感想を述べさせて頂きました。このようにプロセスマネジメントの導入を検討している企業が増加していると実感します。今回はこのことに触れてみたいと思います。
数年前、ある研修を受けた際の話です。参加企業担当者様が講師に対し質問した内容の多くは「考え方は理解できる。しかし、どのように運用するのか?」「どのように浸透させるのか?」というものでした。
このように導入は可能でも「運用方法が分からない」。これが企業側の現実です。では何故運用方法が理解できないのか? その答えはシンプルです。知識体系は語っても、運用方法に関しては多くを語っていないからです。むしろ企業文化や社風に合わせて運用すべきだというスタンスです。「企業の存続はその独自性にあり」という立場から考えればこのスタンスはむしろ正解であり、また、運用の詳細まで規定されたら企業としての個性は失われ、がんじがらめになる可能性さえあります。国際的プロセスマネジメントの手法は成功するための教科書ではなく、道案内役に過ぎず、ひとつひとつ自社の事業ドメインにあわせて自らの手で作っていく必要があります。
プロセスマネジメントを組織改革に生かすには
組織改革のためにプロセスマネジメント手法を導入するにあたって最も難しい作業は、それを受け入れる組織文化の形成だと思います。ここにつまずくとなかなか前に進むことが出来ません。たとえ導入して取得に成功しても運用効果を導きだすことは困難です。かえって社内に混乱が生じる可能性さえあります。組織文化を形成する際に注意すべき事項は何か、体験の中から生まれた私の考えを述べます。
1.企業トップ
企業のトップは、組織スタイルを「属人的組織からプロセス組織」に変革することに不退転の決意が必要です。また、そのための道のりは一定の時間とコストが伴うことを理解する必要があります。さらに、自らもプロセス組織の一員として、その役割を理解し実行することを決意する必要があります。
2.組織の編成と情報伝達システム
組織編成と情報伝達システムの変革は極めて重要です。組織編成はピラミッド型のヒエラルギー組織からマトリックス組織あるいは、ネットワーク型組織に変革する必要があります。弊社の場合、組織横断型専門チームを形成することでこの問題を解決しました。また、情報伝達システムはイントラネット等を駆使し、必要な人に必要な情報が常に伝達されると共に、誰もが必要に応じてその情報を得られる権利を与える必要があります。反面、情報のリスクを計り、不要な情報は外部に開示できない仕組みも構築する必要があります。
この部分が、最も苦労が多い事項と考えます。なぜならば既存組織構造を一度壊すことになりますので、新入社員や一般スタッフは歓迎しても中間幹部以上には受け入れがたい側面が存在しているからです。幹部は何を思うか?それは、「情報が共有化されてしまえば自分の幹部としての存在価値が低下する」と誤った危機感を抱くのです。プロセスマネジメントの導入は、トップの強い決意がなければ成功しないといわれるのは実はこのように「組織構造の変革」が存在しているからです。
3.組織要員
プロセスマネジメントを導入すると、プロセスでまわる組織になります。組織要員は開放され比較的自由の身になります。反面、定義されたプロセスを誰もが守る必要があり、さらに責任と権限がついてまわります。したがって社会人として自立、組織人としての協調性が必要となります。そのため自社の組織文化を明確に捉え、それに則した教育システム、KM(ナレッジマネジメント)の構築が必要であり、それによって情報の共有化、価値の共有化を促進しなければなりません。
プロセスマネジメント導入のゴールはどこか?
ゴールについて私の考えを述べます。例えばISOの場合、取得することをゴールと捉えるのではなくむしろスタートラインと考えることが正しいと考えます。ではどこにゴールが存在するのか? 今話題の成熟度モデルで説明を試みます。成熟度モデルにはいくつかの方法がありますが、例えばレベルを5つに分けた場合、
- レベル1 「カオス(混沌)の段階」
- レベル2 「反復可能な段階」
- レベル3 「定義された段階」
- レベル4 「コントロールされた段階」
- レベル5 「最適化された段階」
となります。例えばISOを取得したと仮定します。その時点は、レベル3程度と認識すべきです。その後運用を重ねながら、レベル4に近づけます。レベル4の「コントロールされた段階」とは、定量的データに基づいたプロセス管理ができ、効果的に結果が伴う段階を意味します。さらにレベル5を目指します。レベル5の「最適化された段階」とは、レベル4を土台に、さらに予防処置、技術的変更管理、プロセス変更管理ができる状態であり、継続的改善を伴う段階を意味します。
このように考えると、プロセスマネジメント導入の最終ゴールは、組織全体が継続的改善思考を持ち、社風として根付く段階と考えられます。この段階に達すれば、組織が活性化し、社会変動に柔軟に対応でき、かつ顧客ニーズの変化にも対応できるため、価値の連鎖がはじまり結果的に持続的発展へと導きます。
また、多くのプロセスマネジメントの基本プロセスは同じ手法を採用しており、かつグローバルに採用されている経営革新ツールでもあります。すなわち経営課題の全域に活用でき、グローバルの視点で自社のポジションニングをみることを可能にし、「顧客・競争・変革」の3つの視点をバランスよく最高水準まで追求するパフォーマンス・エクセレンス企業へと導くことも夢ではありません。
プロセスマネジメント手法を社会に還元
このように、最も重要で最も困難なことは、持続的発展・継続的改善を可能にするために予め組織文化を形成することです。組織文化の形成を効率良くかつ効果的に行うためにはインターネット、イントラネットの活用が欠かせません。なぜならば、組織文化の形成と社内情報システムは密接に関わることを実体験から断言できるからです。
弊社は社会の繁栄のため、これらのノウハウをツール化し顧客企業様に提供しようと、その準備段階に入っています。
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