12年前に今を予測した一冊
代表取締役 髙橋 仁「年末になると不思議と思い出すあの本」
毎年、年末になると不思議なぐらいに同じことを思い出し、同じことをつぶやきます。一冊の本を思い出し、「今年もなんとか生き延びたなあ」と同じつぶやきを繰り返すのです。
ここに12年前、創業前に購入した一冊の本があります。「全予測90年代の世界」(牧野昇著、三菱総合研究所著、ダイヤモンド社)という本です。その268ページに、僅か1ページ強でうっかり見落としそうなボリュームですが、「メディアの複合化時代のコミュニケーション形態」という小さなタイトルのページがあります。
当時蛍光ペンでマーキングした部分が残っています。
- 「メディアの複合化」
- 「消費者の価値観・行動が多様化」
- 「ニーズの個別化」
- 「パーソナルな形態および内容の情報提供」
- 「パーソナルメディア」
- 「パーソナルコミュニケーション」
- 「双方の長所を複合化」
- 「個別対応性と双方向性」
- 「注目されるパソコン通信・ワープロ通信」
- 「双方向ネットワークを組むことで、人々の情報行動に影響力を強めていく」
- 「発信される情報をパーソナルな人的・情報ネットワークを通じて受容するという、高度な水平的ネットワークを介したコミュニケーションが増えていく」
この本に出会ったインパクトはあまりにも大きく、今でも思い出すと静かな心の高まりを感じます。当時あまりにも何度も読み返した結果、そのページだけは綴じた本から剥がれた状態になっています。
12年経過した今でも、今後の流れとして活用できるキーワードが多く含まれています。キーワードの中には「注目されるパソコン通信・ワープロ通信」とあるように、当時はパソコン通信でさえマイナーな存在であり、パーソナルメディアとして活用できるものは電話であり、FAXでさえも少しずつ家庭に入り始めた時代だったと記憶しています。勿論、インターネットは商用としては世界に存在すらしていない時代です。この本が如何に時代を予測していたかと今でも感動します。私はこのキーワードに刺激を受け、起業することを決意したと言っても過言ではありません。
「マスメディア構造への疑問」
誰もが見落とすような僅か1ページになぜそこまで刺激を受けたのか? その背景を説明すると、私はこの会社を始める前(20代から31歳まで)は年商50億円の中堅企業の中枢部門にポジションがありました。そこで私は「人材募集」「広告・宣伝」「市場調査」「テレビCM」「新商品開発」「人事管理」「売上管理」・・・と経理部門以外は何でもやらなければなりませんでした。力不足だったせいで気が狂うような日々が約6年以上も続いたように記憶しています。その中で最も苦しかったのが、人材募集や広告・宣伝等にかかる費用対効果の問題です。店頭公開の話も浮上し、経費に関わる企業トップからの厳しいプレッシャー、費用対効果が上がらない現実。片や現場からの突き上げ、現場の立場に立つと広告せざるを得ない現実。このように、マスメディアの無力感、パワーゲームに陥る現実、力のある企業だけがさらに大きくなるという構図。いつも自分の力不足と共にメディアの仕組みに怒りさえ覚えていました。
「全予測90年代の世界」の中の僅か1ページ強の内容に共感し光を感じた要因はここにあったのです。
私と同じ境遇の方が全国、いや全世界に如何に多く存在しているかは想像が出来ました。この一冊の本が予測するようなマスメディアとパーソナルメディアが融合できる時代が到来すれば、如何に多くの人々が助かり、小さくても良い会社が社会の中で存在感をアピールでき、拡大のチャンスに恵まれ、社会の繁栄に結びつくかが凡そイメージできました。
こんな私でも社会繁栄に貢献できることがあるとすれば、人生のミッションとしてやるべきことは「コレだ」と直感しました。
しかし、インターネットが日本に上陸し、急速に伸び始めた95年までにはさらに5年の歳月が必要だったのです。
ベンチャー企業など相手にされない時代であり、しかも創業資金も無い私が「不安は無かった」と言えばうそになります。それでも、たとえ僅かな灯火で一隅を照らし続ける「一灯照隅」の存在でもかまうことはないと思い、その当時唯一のパーソナルメディアとして機能していた電話音声にターゲットを絞り、ビジネスを考案しました。
そして時代が変わり、新しい媒体やITが社会に出現しても、私達全スタッフはその初心を忘れることなく、何のためにその媒体やITなのかを問い正しながら現在に至っています。
「私達の夢への果てしない挑戦」
このようにミツエーリンクスは一般のコンテンツ企業とは創業の背景も思想も全く異質です。
私達はインターネットが社会と変えるという視点は持ちません。人々や企業の繁栄に如何にインターネットが活用されるべきなのか、また、ユーザニーズの個別性に如何に対応し、最適化されたコミュニケーション形式および表現が取られるべきなのか?それを実現するためにどのような組織を形成し、技術とサービスが必要なのか?・・・ 私達全スタッフの夢と挑戦は果てしなく続きます。
最後に、ミツエーリンクスを創業するきっかけ作り、ぶれることがないスタンスを形成してくれた、三菱総合研究所「全予測90年代の世界」(ダイヤモンド社)の著者にこの場を借りて深く感謝申し上げます。
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