デザインインパクトにより新たな経験を作り出す
ミツエーメディアクリエイティブ 取締役 橋本 敬現在公開されているWebサイトの多くはグリッドシステムという考え方に基づいてデザインされています。もともと印刷の分野で生まれたこのテクニックを用いてWebデザインをしていく中で、今考え、取り組まなければならないことがあると私は感じています。
グリッドの歴史
グリットデザインの歴史は、15世紀半ば、活字による印刷が発明された時代に端を発した、いわば伝統的なレイアウトテクニックです。印刷の世界では、画面をグリッドと呼ばれる格子状の線で仕切り、すべての要素をこのラインに揃えます。レイアウトの要素である行、段、見出し、図版などをユニットとして捉え、任意に組み合わせたり、交換したりすることを可能とします。
インパクトがない
ところでWebデザインも突き詰めていくとグリッドによるデザインに収まってしまうのでしょうか。グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち,作業者が異なったり,更新の際に時間が隔たっていても複数の画面を同じように見せることができるという特徴を持ちます。また、Webサイトの画面構成は基本的に矩形に基づくので、グリッドによるレイアウトは理にかなっていると言えます。ヘッダ、フッタ、上部のグローバル、左もしくは右側に位置するローカルメニュー、中央に設けられたイメージエリア。多くの企業が採用しているこの形は、限られたエリアの中でユーザーの視線を誘導する役割を持つため、企業が伝えんとする情報をうまく整理し、効果的に伝達することが可能なのです。
しかし、多くの企業が採用しているということは、それだけ一般化しているということでもあり、見慣れてしまったという感も否めません。つまりインパクトがなくなってきているのです。
ブランディング、マーケティング、プロモーション、Webサイトで取り組むべき課題は、多岐に渡ります。特に、企業サイトの構築の場合、他社との差別化は永遠のテーマであり、Webサイトだけで解決できない課題がありますが、反面、他のメディアでは解決するのが難しいため、Webならではの解決方法というものが存在するのも事実です。
問題解決のためにコンサルティングを重ね、ロジックを組み立てながらWebサイトは構築されていきますが、最終的にグリッドに落とし込めば間違いないというような風潮を感じたりもします。
問題の本質を捉えて解決しながら、デザインというインターフェースを用いてユーザーにインパクトを与える。この二つが達成できて初めて効果のあがるWebサイトを構築できた、と言えると思います。ところが現状のWebサイトを見ると、ロジックを重視するあまり、デザインによるアプローチが弱くなってしまっているケースが多々見受けられます。
デザインにはルールがあります。しかし、時にはそのルールを大胆に破ったり、ルールの解釈を変えたアプローチも必要だと痛感しています。インパクトを与えるというのはそういった大胆さのことを指すのではないかと思います。私たちがテレビCMや雑誌・交通広告で「へぇ」とか「やられた」と思うのは、ルールにとらわれないものに出会ったときではないでしょうか。少なくとも私はそうです。
新しい経験を
ユーザーの経験に基づいて、仮説と検証を元に画面を構成していくのがWebデザインの常套手段ではありますが、逆の発想をしてみると、ユーザーが経験をしたことのないような表現で驚きや新鮮味を与えるということも、もっともっと必要に感じます。課題の解決に加え、「楽しい」「キレイ」「カッコイイ」といったユーザーの新しい経験を作り出すことが、今特に必要だと感じています。グリッドを用いたデザインが悪なのではなく、見え方にもっと工夫すれば良いのです。これはアプローチの仕方しだいです。フォーマットは必要になるので、その中で反復と構図のバリエーションをしっかりと打ち出していけば良いのです。
ただ、サイトの顔となるトップページに関しては、もっとインパクトを重視したデザインにすべきです。矩形の呪縛があるのなら、FlashやCSSを積極的に利用するのも一つの手ですし、もっと大胆に、時には繊細に組み立てていくことでWebサイトに息吹を与えることができます。
エンドユーザーの顔を意識し、想像しながら、企業の顔を作り上げる。アーキテクトのロジカルな思考とクリエーターのオリジナリティ、大胆さを絶妙に調和させながらサイトを構築していくことで、差別化を実現するインパクトのあるデザインができあがるのです。ユーザーが体感した新しい経験は、企業イメージの付加価値に繋がると私は考えています。
差別化を図りたいのならば、今こそがチャンスです。
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