私が見た日本のWebデザイン
MMC デザイナー 鄭 慈暎日本の広告デザイン、編集・印刷デザイン、CIデザインは韓国のデザイナーにとって、とても有用な資料である。デザインを勉強する学生達は日本のアニメーションをコピーしてキャラクターを研究したり、東京の有名なショップのPOPデザインを参考にしたり、広告デザイナーはCANNESやCLIOの受賞作と共に、日本の最新CMをテープに録画してチェックしたりする。全般的に日本のデザインは韓国より10年ぐらい進んでいると評価されている。
しかし、残念な事に、Webデザインはこの例に含まれていない。
韓国のWebデザイナー達はアメリカやヨーロッパのサイトのデザインを研究したり、香港のWebデザイナーの独特なWeb世界を耽溺したりするが、日本のWebサイトに対しては有名な少数のサイト以外、大抵失望させられると言う。
日本の一部の有名なサイトは世界のWebデザインをリードするほど最先端で優秀だが、一方では韓国ではもうほとんど使わない、フレームによる固くて千編一律的なレイアウトや、古いカラー配色、可読性を無視した編集、エフェクトが強過ぎるボタンデザインなどが日本の多くのサイトでいまだに使われているのが実情である。それが個人のホームページであれば仕方がないとしても、Webサイトをビジネスに活用しようとする企業サイトがこうならば、一度考えてみるべきだろう。
韓国の企業は自社サイトの制作に熱心だ。まるで競争しているかのようにリニューアルを行っている。日本の企業はまだ、“重要なのはコンテンツであり、それを適切にただWeb上に載せれば良い、デザインは重要ではない”と考えているようだ。そのため、技術的な制作費用には寛大になるが、デザイン制作には厳しく、非専門とする個人に安い値段でサイト制作を依頼して、費用節減しようとする。
Webデザインは単純に飾りやボタンを作る事ではなく、サイトの目的を視覚的に転換させる作業全体を意味するのであり、コンテンツのタイプによって適切な視覚的言語、雰囲気やテーマ、レイアウトは重要だということを日本の企業はまだあまり認識していないように感じられる。
このような企業のWebデザインに対しての認識不足がサイトの質の低下、すなわち大雑把なデザインや不便なインターフェイスをもたらしてしまう。その結果、あまり注目されなくなり、そのサイトは廃墟のようになってしまうケースも少なくない。
ある意味で、一番重要な制作者はクライアントだと言っても過言でないと思う。すべてはクライアントのWebページに対しての認識度や制作意欲、決断力によって左右されるのだ。
私は海外の驚くほど素晴らしいサイトを見る度に、それを制作した制作チームの能力よりそのようなサイトを制作する費用を支払い、OKサインを下したクライアント側の勇気と決断に拍手を送りたくなる。
制作側がどんなにいいプロトタイプを提案しても、最高の意思決定者であるクライアントがその価値に理解を示さなかったり、あるいは制作側の企画者やプロデューサーがクライアントを説得するコミュニケーション能力を持っていなかったりする場合、そのデザイン案や提案内容は無駄になってしまうからだ。
Web制作会社のポートフォリオというのは結局、制作チームの制作能力を見せる為にあるのではなく、その会社のプレゼンテーション能力、あるいはクライアントとのコミュニケーション能力を見せるためにあるのだと思う。
「踊る大捜査線」の青島は、上司に“すべては会議室で起こる”と言われて反発したが、Web制作業界では“すべては会議室で起こる!”のだ。担当デザイナーの実務作業より、クライアントとの会議で、サイトの全てが決定されてしまうのである。
韓国のクライアントは一般的に洗練されたモダンなデザインを好むのだが、日本のクライアントは”ダサクない範囲”で自社の特色を出そうとしている印象を受ける。
韓国でも日本でも、あるサイトが話題になれば、すぐに競争したり模倣したりするサイトが溢れるのは当然な事であり、さらに、ユーザビリティの為にはある程度の普遍性を追求するべきである。
しかし、3,4年後の日本のWeb業界をもっと面白くするには、流行や競合サイトを意識して作られた平凡なサイトだけで満足せずに、積極的に自社の個性を生かそうとするチャレンジ精神と決断力を持った最高意思決定者であるクライアントが必要ではないかと思う。
私は2年間日本の会社でWebデザイナーとして働きながら、日本のWeb制作会社のデザインや技術における精巧さを見てきた。制作チームの能力は高い。彼らは責任感も強いし、情熱もある。ただ、残念な事に、日本のインターネット市場はまだまだ色々な意味で、彼らの能力を十分に発揮させられるほど、成長してはいないように思う。一方、韓国のWeb業界は大変恵まれていると思う。制作者の意欲を掻き立てるインターネットへの国民の熱狂的関心や、それによるユーザーの接続環境の発達、何よりもサイトのビジネス価値を信じて、投資するクライアントの存在が確保されているからだ。
デザイン価値への深い理解や様々なアイデアを積極的に受け入れるクライアント、そして、期待感を持って、より良いサイトを待っているユーザがいる。これこそ私達Webデザイナーを喜んで夜明けまで働かせる原動力になるのではないかと私は思う。
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