リッチ・インターネット・アプリケーション
ブロードバンドコンテンツ事業部 デザイナー 川村 健一インターネットの強みの一つに、「インタラクティブ(双方向/対話)性」が挙げられています。この言葉が意味するところは、情報の送り手と受け手が双方向に作用し合う様子を指します。インターネットに関する初心者向けの雑誌やTV番組では、この事をJavaScriptやFlashによるロールオーバーなどを例に解説していますが、本当の意味は他のメディアと比較してみると良く分かります。
紙やラジオ、TVといった従来のメディアは提示されているものを見ていくだけで、見ているものをコントロールできません。できても、チャンネルやボリュームを切り替えることくらいです。インターネットの場合、先の例のように、ユーザーのアクションによりコンテンツに変化を起こすことが容易なほか、サイトにあるメールボタンやBBSによって、情報提供者とユーザー、あるいはユーザー同士で対話することも可能です。
つまり、従来のメディアでは考える必要のなかった、ユーザーとのコミュニケーションを追求する作業こそ、インタラクティブ・デザインといえます。ここでは、技術的な側面からウェブサイトとインタラクティブ・デザインについて考えてみましょう。
今までのWebデザイン
私がWebデザインを始めた当初はネットスケープ3が主流の頃で、表現方法にかなりの制約がありました。インタラクティブという言葉ばかりが先行して、出来ることといえば、ロールオーバーやフォームでの掲示板、メール送信といったコミュニケーションツールとは程遠い簡単なものでした。無意味なフレームや、テーブルによる「無難ではあるがつまらない」デザインが使われ出したのもこの頃です。
ブラウザのバージョンが4になると、スタイルシートが実装され、スクリプト機能が強化されました。これにより以前のバージョンでは不可能であったレイアウトもスタイルシートを使えば簡単に実現でき、スタイルシートとスクリプトを組み合わせる事で、ページを構成する各々のパーツをオブジェクトとして操作できるようになりました。(参考)
これは通称「ダイナミックHTML」として、多くのウェブサイトで用いられるようになり、弊社でも積極的に取り組んできました。中でも、レイヤーによるナビゲーションは、サイトに導線を与える手法として今や定番の技術といえるでしょう。
一方で、スタイルシートやダイナミックHTMLには「ブラウザ」という大きな壁がありました。
Netscape Navigator、Microsoft Internet Explorer、opera というブラウザ毎に全く異なる仕様で実装されていたほか、たとえ同じブラウザと言えど、バージョンやOSが異なると、それぞれの環境に応じた対処が必要であったため、開発・保守という面で労力がかかり過ぎたのです。
そんな折、Flashのバージョン5がリリースされました。Flashを使用すれば、ブラウザやOSの違いをプラグインが吸収してくれるため今までの問題から解放されます。また、Flash以前では難しかったモーショングラフィックが手軽かつ少ないファイル容量で作成できるようになり、プラグインというハンデを乗り越え、広く一般に普及する事となります。初めの頃こそ、イントロ・ムービーの様な意味の無い装飾としてしか利用されなかったFlashですが、ActionScriptを実装したFlash5の登場により、インターフェイスやサーバー・サイドと連携したアプリケーションなどさまざまな分野で活用されるようになりました。
Flash MX はこの流れを決定的にしたといえるでしょう。Flash Communication Serverを使えば、サーバーサイドと連携した映像コンテンツを手軽に作成できますし、ColdFusionやFlashRemotingを活用すれば一般のソフトウェアに引けを取らない本格的なアプリケーションを構築できます。今やWebはコミュニケーションツールとして十分な機能を有したといえます。
導線とコンテンツ
ところが、現状はどうでしょう? 技術的な制約がなくなっているにも関わらず、多くのウェブサイトは、ネットスケープ3の時代からほとんど変化がありません。さらに、サイトの情報もまるで紙媒体の会社概要を焼き直したかのような状態です。今のインターネットでの話題はもっぱらアクセシビリティやSEOであり、コンテンツや見せ方に関してまで手が回っていないサイトも少なくありません。
たしかに数あるサイトの中から自分のサイトを検索してもらうためにSEOは必須の施策です。しかし、いくら見てもらってもユーザーはコンテンツに魅力が無いと判断すれば直ぐにBackボタンを押すでしょう。アクセシビリティやSEOは導線に過ぎないのです。もう1つ大切な視点はアクセスしたときに、ユーザーをいかに引き止められるかにあるのです。
アプリケーション化するウェブサイト
ここで、インターネットの世界から少し離れて考えてみましょう。経営手法の1つに「ナレッジ・マネジメント(KM)」があります。KMは大量生産・大量消費という神話が通用しなくなったバブル崩壊後、注目を集めている経営手法です。バブル以前は規格化された商品を安く大量に裁けば商売になりました。ところが、現在は一部の量販系百貨店の例を見てみると明らかなように、このパラダイムでは市場に通用しません。消費者は自分にあった良い商品を求めるようになっているからです。このため、企業側としては顧客が何を考え、何を欲しているのかを探るようになります。この過程をシステム化して捕らえたもの、それがナレッジ・マネジメントの本質といえるでしょう。
今やウェブサイトにも同じ事がいえます。一般的なウェブサイト風にサイトを構成すれば、ライバル企業の水準よりも下回る事は無いかもしれません。しかし、顧客が求めているのは、より直感的で分かりやすいページであり、サイトを通じて情報提供者とのコミュニケーションを望んでいるのです。
たとえば、フコク生命が提供している保険選びコンテンツ「fit」を見てみましょう。保険というと、一般の人から見ると難解な分野の1つです。それにも関わらず、同業他社のサイトを見てみると、テーブルに情報を流し込んで多少デザインを施しただけの分かりにくい構成になっています。結果、ユーザーは本来見る必要の無い情報にも目を通し、欲しい情報を自分で探していかなければなりません。これはユーザーからするとかなりのストレスに感じるでしょう。この過程を fit ではユーザーがゲーム感覚で欲しい情報へアクセスできるようにアレンジすることに成功しました。このように、ほんの少しの工夫でユーザーにとって便利な仕組みを提供することができます。
以上、見てきたように、多くのウェブサイトはまだまだWebの本質を引き出していません。過去の成功体験に囚われず、新たな視野にたち、ユーザーの視点から見つめ直す。今、わたしたちに求められています。
弊社の取り組み
最後に、弊社での新しい取り組みについて述べたいと思います。顧客企業様の要望に応じて最適なコンテンツを提供することはもとより、私どもの方でも幾つかのプロダクトを提案しています。
- QuickLearning
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ADSLや光ファイバーといった高速・大容量回線が当たり前となるブロードバンド時代、インターネット上での教育、すなわちe-lerningは大きな需要が見込まれます。弊社が開発した「QuickLearning」を使用すれば、リーズナブルな価格でハイクオリティなe-lerningが可能です。サンプルムービーでは、音声と静止画で構成されていますが、音声とモーショングラフィックスを同期させることで、更に分かりやすいプレゼンテーション力を発揮します。また、サーバーサイドと連携させる事で、オンライン上でテストを行ったりデータ管理なども簡単に行えます。
- Sound Presentator
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インターネット上で、デザインされたプレゼンテーションを公開したい、そんな要望を適えるのがSoundPresentatorです。基本は音声と静止画ですが、オプションとして、モーショングラフィックス版も用意しています。
- QuickSeminar (開発中)
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オンライン上で、セミナーを公開したい場合、QuickSeminarが最適です。バッグエンドにFlash Communication Server を利用しているので、ストリーミング・コンテンツ(音声・映像)を自由に操ることが可能です。
- Phototide
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最後に、私たちは遊び心も忘れてはいません。本当のヒット商品とは狙って生まれるのではなく、普段の何気ないアイデア、遊び心から生まれると考えているからです。このコンテンツは、フォトグラファーに撮影して頂いた季節の写真を時間軸に載せて表示し、今という瞬間を感じていただきたい、そんな想いで作成しました。
このような心を胸に、日々、邁進しています。
私たちと一緒に、「インタラクティブなサイト」を作成してみませんか?
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