顧客満足度120%を目指すシステム開発(3) 〜プロジェクトマネジメント〜
取締役 IT事業部長 高田 淳志私にとっては、今年度最後のコラム寄稿となりました。システム開発ということに関わり出して若干10年足らずの自分が、それはいろいろと好きなことを書いてきたなぁという思いはあるものの、一方で、『顧客満足度120%を目指す』と大きなタイトルを掲げたからには、その実現に向けてこれからも邁進していけるよう意を新たにしています。
さて、今回は弊社の開発プロセスマネジメント標準として採用しているCMMIということにも関連してきますが、システム開発のプロジェクトマネジメントということについてお話ししてみたいと思います。
プロジェクトマネジメントに注目が集まる理由
システム専門部隊に所属する私にとっての「プロジェクト」とは、取りも直さずシステム開発に関わるプロジェクトとほぼイコールなのですが、プロジェクトとは決してシステム開発に限った用語ではなく、建設・プラントなど既に何百年もの歴史を経てきた分野でも使用される用語です。それらに比べればIT分野は随分と歴史が浅く、プロジェクトマネジメントという点に関しても、未だ模索、成長段階ともいえるのかもしれません。
一昔前までは、コンピュータシステムなどというものは、金融機関を筆頭に大規模なホストコンピュータを必要とする業態の企業にその存在が限られ、その企業専属で働くエンジニア達に支えられてきました。極端な言い方をすれば、彼らにとって必要な知識とは即ちその企業独自のノウハウであり業務フローだったわけです。企業のコンピュータシステムは、その企業の業務を熟知した匠集団に支えられていたといっても過言ではないでしょう。
しかしながら時代は明らかに変化してきました。
アーキテクチャは、一社独占型のメインフレームから、標準技術に基づいたオープンシステムへ移りつつあります。開発・運用体制は、企業専属のエンジニアで維持する体制から、マルチベンダー、それも場合によっては国を超えた協業体制を組むことも珍しくはなくなりました。開発専門・運用専門のような、ライフサイクルの一部のフェーズだけをスコープとしたビジネスも存在します。そこでは、当然異なるフェーズを担当する企業間の連携が必要となります。
今やHTTP※1やXML※2・UML※3など、技術分野での共通語は揃いつつあります。そして、いよいよプロジェクトマネジメントそのものにも共通語を、という大きな流れを感じます。残念ながら日本は、海外に比べてプロジェクトマネジメントに対する意識は弱いといわれています。しかし、ようやく国内でも大きなうねりが訪れているように思えるこの頃です。
- ※1 HTTP:Webなどインターネットの仕組みを支える技術の一つ。インターネットの爆発的な普及に大きく貢献した。
- ※2 XML:コンピュータシステム間でデータ連携を行うための技術。データの永続性・透過性に優れる。
- ※3 UML:コンピュータシステムにおける設計図の表記法の一つ。一部の分野ではデファクトスタンダードとなりつつある。
システム開発においてのプロジェクトマネジメントとは
弊社のシステム開発におけるマネジメント標準として採用するSEI(Software Engineering Institute:カーネギメロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所)のCMMI(Capability Maturial Model Integration:ソフトウェア開発能力成熟度モデル)での「プロジェクト」の定義は次のようなものです。
プロジェクトとは、相互に関連し合う管理された一連の資源であり、一つ以上の成果物を顧客または最終利用者に納入するものである。この一連の資源には、明確な開始と終了があり、通常は計画に従って運用される。その計画は頻繁に文書化され、納入または実装される成果物、使用される資源と資金、実施される作業およびスケジュールが明記される。
とあります。また、プロジェクトマネジメントを構成する領域としてPMI(Project Management Institute)のPMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント基礎知識体系)では、下記の9つの領域を示しています。CMMIにしてもPMBOKにしても、従来の品質・コスト・納期という点だけに着目するのではなく、プロジェクトに関わる人材や設備までを含めた全体をバランスよくコントロールしていこうというのが、今話題になっているプロジェクトマネジメントということのようです。(これを指して、モダンプロジェクトマネジメントという呼び方もあるようですね。)
- 統合マネジメント
- スコープマネジメント
- タイムマネジメント
- コストマネジメント
- 品質マネジメント
- 組織マネジメント
- コミュニケーションマネジメント
- リスクマネジメント
- 調達マネジメント
CMMIで実践するマネジメント
弊社のシステム開発部隊は、今のところはSmall Business Unitと呼ぶことが相応しいような小さな開発集団です。システム開発をメインビジネスとし、大規模な開発から手がけているベンダー各社に比べれば、自社内だけでは全く開発パワーは足元にも及びません。しかし逆にいうと、だからこそ独自のシステム開発マネジメント手法ではなく、標準的なCMMIという手法を取り入れることを決意したという経緯もあります。
大規模なシステムになれば当然、他ベンダー企業と水平分散した開発協業体制の必要が生じるでしょう。また、弊社から技術力のある協力会社と垂直分散で分担する機会も少なくないでしょう。その時に、お互いの組織風土や企業文化をぶつけ合って衝突していたのでは、プロジェクト自体もうまく進まなければ、そこから出来上がる成果物の品質も向上していきにくくなります。それでは何よりクライアントが不幸です。そんな時に、CMMIとかPMBOKといった共通スキームがあれば、お互いが効率的により良いものを造り出していけると考えています。
このコラムの欄でも何回か寄稿していますが、弊社のCMMIの取り組みは今まさに始まったばかりです。その効果も効能もこれから少しずつ成果となって現れてくるのだと思います。そういった実績データも積極的に公表していこうと思っています。弊社のようなWeb制作会社の中の一部隊であっても、つまり会社規模や開発要員の人数に関わらず、しっかりプロジェクトマネジメントを実施していけば、必ずその成果は上がるものだと示し、システム開発業界の成熟の一端を担えたら・・・そんな思いで来年1年間も頑張っていこうと、関係者一同張り切っています。
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