顧客満足度120%を目指すシステム開発(4) 〜エンジニアのスキル〜
取締役 IT事業部長 高田 淳志来月9月、ようやくCMMIの公式アプレイザル(評価)を受けるに至りました。CMMIというマネージメント手法を活用し、自社のSPI(Software Process Improvement:ソフトウェアプロセス改善)活動を行ってきましたので、その成果の尺度として果たしてレベル2に到達するに至ったかどうか、非常に楽しみにしています。
さて、プロジェクトを成功に導くために組織として取り組むべき課題として、上記のようなプロジェクト運営インフラの整備と、実際にプロジェクトに関わるエンジニアの養成という両面に取り組んでいかなければなりません。今回はエンジニアのスキルということに関して触れてみようと思います。
曖昧なエンジニアのスキル表現
「エンジニアのスキルをどう客観的に表現するか?」という点では、残念ながら業界として統一された尺度のようなものは今現在存在していないように思います。よくある表現形式としては、『技術経歴書』のような形で、これまでに関わったプロジェクトのプロフィールであるとか担った役割とかが羅列されているものです。確かに、ないよりはあった方が良い気はします。
もっとも目にするシーンとしては、エンジニアの採用の時、そして協力会社への発注の時でしょうか。もちろん、私も参考資料の一つとしては有用ですが、あくまで目安ですね。「百聞は一見にしかず」の言葉通り、会って話して納得しなければ採用も発注もしません。特に、弊社のほとんどの割合を占めるWebという分野では、気軽に始められるプログラム言語が多く存在していることもあり、業界全体を見回すと、残念ながらスキルの偏った若いエンジニアが多いような気がします。「プログラマーなのにビット操作が出来ない」とか「Web系のシステム開発をしているのに、HTTPの仕組みをきちんと理解できていない」、はたまた「SEと名乗っているのに全般的な設計が出来ない」とか。そもそも、「プロジェクトマネージャー」「プロジェクトリーダー」「SE」などさまざまな役割名があるにもかかわらず、どこにもその本来的な定義がない。それが何より問題なのかもしれません。
客観的・共通的なスキル評価に向けて
上記に関しては、経済産業省がITSS(IT Skill Standard)の中でスキル・フレームワークというものを定めています。その中では、次の11の職種と専門分野が定められ、それぞれの専門分野についてのレベル達成度指標が設定されています。
図では一部分だけを引用して記載していますが、このような形で、各職種・各専門分野について、達成レベルを判定するための指標が記述されています。
詳細情報は、情報処理推進機構(IPA):ITスキル標準センターなどで入手下さい。
ITSSという言葉が出てきてから確かもう2年くらいが経つのではないかと思いますが、Googleで「ITSS」をキーワードに検索すると、16,700件がヒットしました(8月9日時点)。ノイズも含まれているとは思いますが、用語が出て暫くの間は、経済産業省のページぐらいしかヒットしない感じだったと思いますので、自社で取り組もうと言う企業、ITSSに沿った教育を新サービスとして立ち上げた企業など、いずれにしても業界各社の興味が急速に高まりつつあるのは間違いないようです。
こういう形で「組織の能力」だけでなく「個人の能力」も客観的に計測できるようになれば、システム開発の発注側・受注側双方の人材面でのミスミート(間違った出会い)がなくなり、結果として、それもプロジェクト成功要因の一つになると考えられます。
どこの企業も、必要無い経費は徹底的に削り、一方で力を注ぐビジネスに1円でも多く投資をしたいと思っているはずです。そんな中で、割高な工数単価を支払っているのにもかかわらず、駆け出しの知識不足なSEをリーダーとしてよこされて失望することも減るでしょうし、契約金額として幾らが妥当なのかという判断もつきやすくなることでしょう。
そしてエンジニア自身も、自分の評価を決める指標が出来るため、いわゆる「スキルアップ」ということに対する目標が立てやすくなりそうです。今でも、情報処理技術者試験で取得した「システムアナリスト」「プロジェクトマネージャー」とかの資格が印刷されている名刺を時折見かけますが、ITSSに関しても、「ITスペシャリスト システム管理 レベル6」なんていうのが、技術経歴書や名刺の裏面で見かけるようになるのかもしれません(私が知らないだけで、もうされているのかもしれません。)
各種試験への取り組みもエンジニアの姿勢の現れ
今でも、情報処理技術者試験のような国家試験をはじめとし、技術尺度を測定するタイミングとなるような試験は、さまざまな分野のものが実施されています。自身の進みたい方向性に合わせ、もしくはその時に業務に直結した必要性に駆られ、多くの方々がチャレンジされていることと思います。
しかし、誰もがそういったことへの意欲を持っているかというと、そうでない人も多いですね。システム開発というのは、その仕事に就くにあたり、いわゆる免許なるものが必要ありません。免許がないから、当然、更新審査のようなものもありません。「試験なんか業務には直結しないし」というのも、チャレンジしない人からはよく聞く台詞です。
逆に意欲的にチャレンジしている人は、自分の能力を表現する客観的な指標として試験を活用しています。そして、そういう客観的な評価を大切にする人は、広く世の中を見渡していて、「こういう風に歩んでいきたい」というようなビジョンをある程度描けている人が多いですね。自分の能力をきちんと相手に知ってもらう、それもまた大切なことだと思います。
弊社でも、近頃は春・秋の情報処理技術者試験には各人が積極的にチャレンジしています。開発部署としては、資格ホルダー10割を目指したいと思っています。そして、Web業界の中でも「基礎からしっかり技術理解をしているエンジニアの集団」として市場から認知してもらえるよう、これからも全員でスキルアップを目指して頑張っていきます!
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