CSR(企業の社会的責任)とどのように向き合えばよいか?
代表取締役 髙橋 仁CSR(企業の社会的責任)の構築において、CSRというテーマに対してどのように向き合えばいいのか? 実際に取り組む側の企業の視点にたって私の考えを述べてみたいと思います。
ISO規格、JIS規格?
大手メーカ系は、ISO規格、JIS規格には非常に馴染みが深く、CSRがISO化されるあるいはJIS化されるといえば、なるほどね。と大概受け入れてしまうのではないでしょうか? 一方サービス系営業系の企業にとっては、なんだか難しそうなものが要求され始めて来た、と、引いてしまいたくなるようなテーマではないでしょうか?
しかし、ISO化とは138カ国から構成される国際標準化機構が各国の合意のもとで規格化されるもので、さらに、全世界の企業が導入可能かどうかも十分検討して作られますので、規格要求自体にそれほど複雑で難しいものはないと思うべきでしょう。
したがってまず最初はノウハウ本を読むより、「規格」本体を穴のあくほど繰り返し読むべきです。どの規格もあまりにあっさりしていて驚くほどです。つまり、たったこれだけ?? という印象を持つことでしょう。
次に、どのISO規格も持つ共通の基本的なマネジメントフレームワークと、要求事項の解釈です。ここが第一の難関です。
マネジメントフレームワーク
これは慣れてしまえば簡単ですが、初めての方には理解し辛いものかもしれません。ISOの持つ基本的なマネジメントフレームワークを私なりに解釈しますと
プロジェクトマネジメント手法 + PDCA
と言えます。プロジェクトマネジメントの発祥は、「軍隊統制管理システム」です。つまり、どの規格も個ではなく組織を動かすために作られていますので、このスタイルが採用されています。特徴は、組織編成、権限の明確化と情報伝達システムにあります。
PDCAは、定義されたものを組織で運用するにあたり、継続的に改善するためのエンジンと思えばいいのではないでしょうか。チェック機能=内部監査を実施するために記録や文章類の扱いに関しては非常にうるさい性格を持っています。またこのPDCAは、日本文化であり、非常に受け入れやすい性質でもあります。
要求事項の解釈
ISOは、どの企業でも採用できるように、要求事項は汎用的です。したがって非常に分かり辛い性質があります。一言で表せば、各企業の性格、業態の中で解釈しなさい、と言っているようなもので、逆に言えばそれでいいわけです。この要求事項の解釈に答えはなく、どこかに落ちているものでもなく、自分達で答えを導き出さなければなりません。
基本的にISOは、WHAT(要求事項)には触れていますが、HOW(どのように)に関しては触れていません。解釈したものをどのように組織運営に生かすかということは、各企業が決めるものと理解しています。
ここに各社の独自性が出てきます。ISOの導入は、企業の独自性を失うものではないということが理解できると思います。・・・・・・ここまでで、どのISO規格も持っている基本的なマネジメントフレームワークについて触れてきました。
CSRのメリットは何か?
「CSR=企業のリスクマネジメント」ととらえると経営層は理解しやすいかもしれません。性格としてはプラス側面の増大ではなく、企業の持つマイナス側面の削減の為のマネジメントシステムととらえるべきです。また、製品の品質等ではなく、組織構成員=「ひと」に関するものだと考えますと、非常に理解しやすいと思います。よくCSRは「姿勢」が大切だといわれる所以です。
リスクがより少ない企業は、社会や消費者から歓迎され、信頼も増大し、結果的に生涯顧客の獲得へと結びつきます。また、リスクの少ない企業は、持続的な成長が期待できますので、投資対象としても上のランクに位置付けられることでしょう。さらに、このような活動を継続的に実施している企業こそ、見習うべき企業としてよいイメージを社会が持ち、結果として頑強で真の「ブランド」が形成されていくものではないでしょうか?
以上、取り組む企業側の視点で述べさせていただきましたが、CSRはそれだけではなく、他のすべての国際規格の最上位概念に位置されるであろうと予測すると共に、思想や宗教を越えて人類が持続的に生き延びる為の「共通言語」になる時代が来ると私は思っています。
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