O'Reilly Where 2.0 Conference参加報告
ミツエーインフォメーションネットワークテクノロジー テクニカルディレクター 水上 勇人2007年5月29日から30日の2日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンノゼにて「O'Reilly Where 2.0 Conference」が開催されました。今年で3回目となるこのカンファレンスには、800人以上の技術者、地理学者、投資家などが参加し、セミナー形式をメインとして2日間で合計50近くのセッションが開かれ、マッピングテクノロジーや地図アプリケーション・サービスに関する新機能、各種活動報告や動向などが発表・議論されました。
数年前まではWeb上で地図といえば、地図という名の画像が置いてあるのみであり、それを使う経験はあまり多いとはいえませんでした。また、使った経験による驚きや楽しみ、そして利便性を感じることはなかなかできませんでした。ところが近年、マッピングテクノロジーや地図アプリケーション・サービスが続々と拡張を続け、位置情報を記述・表現するデータフォーマットはKMLやGeoRSSがほぼ標準として認知され、ユーザーが地図を使う状況から、地図を作る状況にまで変わりつつあります。このような状況や位置情報という各種データのなかの一要素のもつ可能性に興味を持ち、マッピングテクノロジーに関して初心者ながらもカンファレンスに参加させていただきました。
ニュースとして多くのサイトで取りあげられたGoogleやMicrosoft、MapQuestの新機能の発表などにより、カンファレンスは非常ににぎやかな場となりました。マッピングテクノロジー・位置情報検索サービス分野でしのぎを削る各サービスは、Webブラウザや専用アプリケーションから、より多くの人に位置または地図データとの双方向(地図を使える/地図を作れる)な体験・経験をもたらすことができるWebマッピングアプリケーションに向け実験・開発を重ねています。注目が集まるこのカンファレンスは、その発表会も兼ねるといったところでしょうか。
Googleは車にカメラを設置して街中を走りまわり、画像データを集めて検索・閲覧可能にしてしまう力業で、Google MapsにStreet View機能を追加しました。Street Viewは会場にて大きな拍手で迎えられ、発表中に多くの来場者が新機能を「お試し」して会場内の一部で無線LANにつながらない(少なくとも私と、私の両隣の方)状況にまで至りました。また、カンファレンスのProgram Chairを務めたBrady Forrest氏のBlogエントリーには「私の環境からは利用できない!」という反響が多数見受けられました。Street Viewに関してはその後も話題は絶えません。多くのBlogで機能だけにとどまらず、プライバシー問題などが紹介・議論されています。
また、同日にGoogle Mappletsも紹介されました。こちらはStreet View機能のもつ、見る・探す楽しみよりも、開発者がmashup(Webサービス同士あるいはデータを組み合わせて新たなサービスを作る)する楽しみが得られる機能といえるでしょう。日本でもすでに「防犯マップ大阪 ‐Mapplet版(beta)‐」というGoogle Gadget(時計やカレンダーなどの小規模なアプリケーション。iGoogleなどで利用可)も登場しているようです。こういった、生活する上で知っておくべき情報に位置情報を追加することで、過去のデータや点在していたデータはさらに「価値のある情報・アプリケーション」となることでしょう。データ(文字情報や画像)に位置情報を付与し、より見やすく、探しやすく、たどり着きやすくするという意味では楽しさ、利便性の向上だけではなく、今後生活に欠かせないツールとなる可能性を秘めた機能となるかもしれません。
一方でMicrosoftもLive Search MapsにNewYorkなどの街の追加を発表し、Webブラウザで閲覧できるリアルな3Dマップ(さすがに車からの撮影ではなく、航空写真測量の技術で3Dマップを作成)に関しては、Googleの一歩先を行くことに成功しています。現状では主要な数十の都市(日本は2Dのみ)に限定されていますが、今後は順次3D化されることが発表されました。会場では、同様に多くの来場者が3D Viewをその場で「お試し」し、拍手が送られていました。一方で注意事項として、閲覧には初回のみActiveXコントロールのインストールが必要になり、かつ日本語環境はオフィシャルサポートがありません。また、環境も制限されMicrosoft Windows XP Service Pack 2、Microsoft Windows Server 2003、あるいはWindows Vistaのみでの閲覧が可能です。このように環境が制限されることに関してはProgram Chairを務めたBrady Forrest氏もMacユーザーやLinuxユーザーへの開放をBlogで提案していますが、今後の動きが気になるところです。
さらに地図アプリケーション・サービスでは古株であるMapQuestも、サービスの方向性やActionscript3 向けのAPIを発表しました。Webクリエイターの新たなモチベーションとなるのではないでしょうか。また、Movable TypeやWordPressといった、日本でも人気のBlogツールで位置情報を公開するためのプラグインであるGeoPressも発表されました。これにより、位置情報が各Blogからもますます配信されることになり、そのデータを集めてインデックス・公開するサービスもますます勢いづき、そのデータを再利用するサービスがさらに続き、マッピングテクノロジーや地図アプリケーション・サービスはさらに拡張していくことが予想されます。
マッピングテクノロジーそしてユーザーインターフェースは、今回発表された各種リリースを含め日々進化し、それに伴いサービスのエンドユーザーのニーズ、開発者のアイデアも日々広がっている状況です。ドライブルートと渋滞に関する情報を手に入れたら、次は一番安いガソリンスタンドの情報を手に入れて、そこをめざします。また、自分がドライブしたルートを詳細に振り返ることもできるようになりました。家探しは間取りからではなく地図から選び、そのあと間取りを確認することができます。そしてニュースは郵便番号で分類・整理され、地図から街を探した後は、街のニュースやニュースに対するリアクションをまとめて読むことができます。さて、今度はどんな驚き、楽しみ、そして利便性を感じることができるのでしょうか。
最後になりますが、今年に入ってからmediajamというWebサービスの立ち上げに携わるという、すばらしい機会と経験を得ることができました。まだまだ、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ前進している状況ではあります。このカンファレンスで機能追加が発表されるやいなや、会場内のネットワークを落とすようなエンドユーザーあるいは開発者のエネルギーを体感したことで、同じような状況を生み出せるサービス・機能・ユーザーインターフェース・利便性を提供できるようにしていきたいと強く思いました。
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