価値あるWebページをつくりだす
テクニカルディレクター 水上 勇人インターネットによる情報収集ステップの移り変わり
インターネットは登場以来、コミュニケーションの手段や方法、ビジネスを大きく変えてきました。そしてインターネットユーザーが情報収集の際にどういったサイトやサービスを利用し、どのように移動していくのかの流れは、その時代とともに大きく変化してきました。
「巨大な混沌」の情報収集ステップ
近年、ブロードバンドの低価格かつ大容量の通信環境や、インターネットを利用できるPC、携帯電話を代表とするモバイル端末の処理能力の増大、そしてGoogleなどの検索エンジンの登場により、インターネットユーザーが目的のページにたどりつくためのステップはインターネット初期と比較して大幅に減りました。一方で、誰もがインターネット上の各種コンテンツに対してコメント、トラックバック、ブックマークといったリアクションやブログ記事の投稿、動画投稿などのアクションができる端末やサービスが次々と登場することで、インターネットの情報量が爆発的に増えました。その結果、目的のページや情報にたどり着くステップは減ったものの、複雑さは増しています。情報収集行動の大方は、検索エンジンやサイト内検索、ソーシャルブックマークやソーシャルネットワークを利用して膨大な量のWebページの中から有益と思われるWebページやコンテンツをユーザーが選別し、検索キーワードや条件を変えたり、検索を繰り返したりして大規模サイトの下層ページにたどり着く。それがここ数年の状況=巨大な混沌=ではないでしょうか。
「検索エンジンやソーシャルネットワークの次」の情報収集ステップ
近い将来、microformatsやSemantic Webの普及が進むにつれて、データやWebページに意味が付与され、ユーザーが動くのではなく、ユーザーのソフトウエアエージェントがユーザーに代わって情報を検索し、整理し、提供することで目的の情報に到達できる日がくることでしょう。
巨大な混沌から抜け出す動き
さて、「検索エンジンやソーシャルネットワークの次」のような状況はすぐにやってくるのでしょうか。現時点ではデータベースの中にある「整理され、構造化された情報」であっても、Webブラウザを利用して閲覧する際には取り除かれてしまっています。あるいは構造化された情報は隠されており、公開はされていない状況です。少しずつ歩んでいますが、すぐに利用できる状況ではなく、またそのためのアプリケーションは見当たらない、といえるのではないでしょうか。
このコラムを書いている途中で米Yahoo!が、「オープン検索プラットフォーム」を強化する目的でSemantic Webに対応するという大きな一歩を踏み出しました。「検索プラットフォームのAPIを提供し、外部の開発者が構造化データを使って検索結果をカスタマイズし、ユーザーの利便性を向上させられるようにする」としています。ただし、米Yahoo!の取り組みが、日本でも大きな一歩になるかどうかは継続して追いかける必要がありそうです。それは、ここ日本では日本語でコンテンツが生成されているためです。
インターネットユーザーにとって価値あるWebページとは
巨大な混沌から抜け出すための各種取り組みが行われている状況の中、mediajamでは、数多くのWebサイトがもつ有益なWebページと、その情報を必要としているインターネットユーザーのマッチングに貢献すべく、ニュースアグリゲータサイト「mediajam」の企画・開発・運営を行っています。
mediajamは80以上のニュースを中心としたサイトを自動巡回して、ニュースのナビゲーションサイトを自動的に構築しています。巡回先サイトの体裁やマークアップ、文章構造などはさまざまですが、以下を自動的に行っています。
- 巡回先サイトの違いを吸収して収集(集める)
- すべてのコンテンツを同一体裁で表示(生成する)
- 内容の類似しているページは関連リンクとしてまとめ、各ページに関連するキーワードを自動付与してリンクをつくり、さまざまな情報を緩やかにつなぐ(つなげる)
mediajamでは、インターネットユーザーにとって価値のあるページを重視して各ページを緩やかにつなぐことに力を入れています。
ここでいう価値のあるページとは、「大規模サイトの下層ページ」や「あるブログの中の1つのエントリー」など、インターネットユーザーが「探す」「情報収集する」「知りたい」という行動や考えに対して最終的な回答を得られるページを指します。また、「情報を緩やかにつなぐ」とは、今までのWebにおける分類の主流であったツリー構造(Webサイトのサイトマップに代表されるもの)を排除し、ユーザーにとってより自然であり利用しやすいキーワードで分類し、類似性でリンク(ハイパーリンク)を生成してつなぐことを指しています。
Webで重視されているものとは
インターネットユーザーにとっても検索エンジンにとっても、Webページで重要となるものはリンクでしょう。書籍などと異なり、Webページ同士はリンクを経由して自由に移動することができます。リンクがなければ個別のページはアクセス元を失い、またたどりつけてもそのページだけで収束してしまいます。リンクが重要なページ間で張られることで、さらに情報が広がっていき、ページそのものの価値が向上します。さらにそのリンクが、共通のキーワードや、今いるページの内容に類似・関連したもので構成されていれば、インターネットユーザーが情報収集を効率化することができることでしょう。
mediajam miniがもたらすもの
mediajam miniは、SaaS(ASP)形態を採用し、mediajamが持つ機能の80%を継承しています。ニュースに限らず、幅広いコンテンツのリンクを生成し、サイトを構築していくことが可能です。弊社では、より多くのWebサイト企画・提案ご担当者や、サイト運営に携わる方々・サイトオーナーの皆様(情報発信者)、そしてインターネットユーザーにご利用いただきたいと考えています。そこで以下では、mediajam mini導入がもたらすメリットについて具体的に触れてみたいと思います。
(1)サイト内、そしてサイトを越えたページ間の連携が可能に
mediajam miniが収集したWebページはサイト内で関連リンクが自動生成されていきます。ページの内容を解析し、関連・類似しているページを次々とつないでいきます。現在運営しているサイトを、今と変わらぬ更新作業で、情報発信者として気がついていなかったWebページ間のつながりを実現できます。つまり、インターネットユーザーの情報収集を支援する、下層ページ間のリンクが出来上がるわけです。たとえば弊社のサービスの1つである「Videocastサービス」に関連する弊社のサイト内関連リンクは以下のようになります。
また、「CMSソリューション(eZ Publish)」のサイト内関連リンクは以下のようになります。
上記のサイト内関連リンクは今後、Webページが追加され、その内容が類似していると判断された場合に自動で追加されていくことになります。
(2)データフォーマットの変換による、サイトや端末の枠を超えた連携が可能に
RSSフォーマットで情報を配信できることで、単にRSSフィードを購読してくれているユーザーに対しての情報配信だけでなく、内外のWebサイトでの再利用のチャンスが広がります。その理由は、RSSが「WebサイトのコンテンツをWebブラウザやプログラムなどが扱いやすい形式に要約したもの」であるため、関連・提携しているサイト上に自社の最新コンテンツを自動掲載することが容易となるからです。そして、モバイル端末に向けたサイトでの再利用も手間なく実現することも可能となります。
一例をあげると、mediajamのモバイルサイトの「主要ニュース」では生成されたRSSを別のサーバにある小さなスクリプト(簡易RSSリーダー)で読み込んで表示しています。読み込んだ情報から必要な情報のみを取り出し、モバイルサイトの主要ニュースを自動掲載しているのです。
(3)特化型サイトでユーザーの情報収集効率化を支援
mediajam miniで構築されたサイトは、Googleなどのように検索エンジンが不特定多数のサイトを巡回して集まったデータからではなく、特定のサイトから集めたページを検索・閲覧することができます。対象となるWebサイトを絞り込んで作る密度の濃い特化型の「情報のハブ」サイトは、インターネットユーザーにとって、キーワードや他のユーザーの行動を参考に、効率よく情報を得られる場所として大いに期待できるでしょう。
(4)ユーザーは、ページから欲しい情報を一気に集めることが可能に
mediajam miniに取り込まれたページには、取り込まれるタイミングでキーワードが付与され、キーワード別にWebページが生成されるので関連する情報を一気に集めることが可能となります。また、個別のページでは関連・類似した内容のページが複数表示されるようになっています。ページ間の関連が表現されていることで、情報収集は閉じた1ページからキーワードを抽出して再度検索し直すよりも効率化されますし、キーワードに依存した検索よりも多角的な情報収集が可能となります。
(5)ユーザーの継続的な情報収集が可能に
mediajam miniでは自動付与されるキーワードごとのRSSフィード以外に、検索キーワードと条件式の利用による検索結果のRSSフィードも生成・自動更新しています。あなたが作成した条件で配信されるRSSにより、気になる情報は継続して追いかけていくことが可能となり継続的な情報収集を支援します。
最後に、mediajamでは今後も有益なWebページ、そしてそのページを必要としているインターネットユーザーのマッチングに貢献していきたいと考えています。そのためにできること・すべきことを判断しながら、仕組みや機能、サービスの開発に取り組んでいく予定です。
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