価値を付加する内部監査
経営監査室 野口 由美子どのような内部監査が、ミツエーリンクスに対し価値を付加することになるのか。それが経営監査室としての最近のテーマです。景気後退により全社的に各業務の効率性・有効性を見直す気運のなか、内部監査の業務についても例外でないと感じています。部署開設から3年弱。これまでは、とにかく必要なことをこなすのに無我夢中でしたが、今回、3つの切り口でこのテーマを考えてみました。
内部統制における役割
昨年度は、内部統制の評価手続き(経営者に代わり内部監査人が行う部分。以下、単に「評価手続き」といいます)を試験的に行いました。当社は、内部統制構築の義務はありませんが、上場企業と同等な内部統制を構築・維持するという全社的試みの一環です。内部統制の運用方法は、当社にすでにある各種マネジメントシステムと同じだと思ったのですが、評価手続きについては、いわゆるマネジメントシステム監査とはまったく異質です。
評価手続きは、期末日を評価時点とする定点観測的なものだと思います。内部統制が期末時点で作成される財務諸表のバックグラウンドだと考えれば当然です。したがって、基本的に「期初に計画したことが、期末には完璧に行われている」という筋書きが実現できるよう、整備状況評価、運用状況評価と進めることになります。しかしながら、実際には、いわゆる運用テストのなかで整備上の不備が見つかることがあったり、是正スケジュールは運用側しだいということがあったりで、筋書き通りにはいきません。もし、期末日に問題なしという結果のみを求めてしまうと、実効性が揺らいでしまう危険性があると感じました。
評価手続きは、内部統制のモニタリング機能であり、改善を促す機能でもあります。当社は、プロセスの徹底に関して、トップダウンではなく、草の根的活動が実績をあげてきたという特徴があります。そして、内部監査もそのひとつだと思います。評価スケジュール的にはかなり困難がありますが、部署ごとに回り、内部監査の結果をダイレクトにフィードバックしていくことが有効なのではないかと思います。
内部統制を評価するための証拠を提供する役割と、継続的改善のための役割の両方を効果的に満たす方法を探っていきたいと考えます。
内部監査の品質
内部監査は、被監査部署の協力なしには成り立ちません。皆それぞれの仕事を抱えるなか、ヒアリングのための時間を割いてもらったり、記録類を見せてもらったりします。内部監査の性質としては、受ける側にとって愉快なものではないと思います。自分の仕事ぶりをチェックされたり、口出しされたりするわけですし、何を調べているのか、どういう指摘を受けるのかといった不安や不信感もあるでしょう。そのようななか協力してもらう以上、内部監査の品質が信頼できるものでなければならないと思っています。
個人的な話になりますが、子どもを保育園に預けて仕事をしています。以前は、保育園の先生って子ども好きなのだろうなあくらいにしか考えていませんでした。しかし、知識、ノウハウ、そして、子どもにとっていいかどうかという決してぶれることのない価値基準を持ち、まさに保育のプロなのだなと思いました。当初は、子どもを預けることに抵抗があったものですが、いまでは毎日安心してお願いしています。
内部監査にも同じことがあてはまるかどうかわかりませんが、プロの仕事をすることは、関わる人の信頼を獲得するうえでも大きな要因なのではないでしょうか。プロの仕事と言えるまで、まだ道のりは長そうですが、業務の継続的改善とスキルの研磨に努めていきたいと思っています。具体例としては、ここまでほとんど実践だけできてしまったので、理論や知識についても必要性を感じています。それらは、実践のなかでまだ出会わない事象、うまくいかなかったこと、迷いが生じていたことについてのとるべき方向性などを示してくれるのではないかと思います。実践と理論を組み合わせ、監査の品質向上につなげられたらうれしいです。
経営監査室のあり方
経営監査室の役割について考えていて、ふと、当社に古くからある検品部署をイメージしました。検品部署は、納品前の制作物を検査し、不具合を発見したら制作担当者にフィードバックする。制作担当者は修正を行い、再度検査を依頼する。OKが出て初めてお客様に納品する、という運びです。このプロセスは、会社全体としては完全な制作物をお客様に提供することが目的であり、検品部署の役割はあら探しをすることではなく、品質を保証することです。扱うものに違いはあれ、経営監査室についても同様かなと思います。内部監査を通して内部統制や各種プロセスなどの不備を発見し、改善を促すことで、会社は不備のない状態を維持する。いわば会社の品質を保証することを目的とする部署なのではないかと考えています。
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