ITCカンファレンス2009参加報告
ITコーディネータ 田口 公章2009年8月28日と29日の2日間開催された「ITCカンファレンス2009」に参加しました。2009年は 「IT経営による経営革新」をテーマに、様々な講演や事例発表が行なわれました。今年は2日間で約1,600名の参加があったそうで、活気に満ちた会場で最新の講演や事例に触れることができました。
時代の変化、顧客ニーズの変化
冒頭の開会宣言では、世の中の変化・価値観の変化に触れ、そこにどう対応してゆくべきか?という話がありました。時代の変化により顧客が変わり、新しい顧客ニーズが生まれたこと。これによって「競争」そのものが変化した。一方で、価値観は「個性重視」「環境重視」「健康重視」へと移り変わった。これらの価値観に応えるために、商品は「感性型」「癒し型」「自然回帰型」「ライフスタイル型」といったものが必要とされている、というまとめでした。
Webサイトの価値と「顧客視点」
今回のカンファレンスではクラウドコンピューティングに関する講演や事例発表がいくつかあり、クラウドの本質である「ITの所有から利用へ」という流れが現実に採用されていることが確認されました。私どもはWebサイトをソリューションの中心に据えていますが、Webサイトも今や存在すること自体は当たり前で、それをどう利用してゆくかが問われています。この点で、私たちが普段携わっているWebサイトの仕事もクラウドの本質「所有から利用へ」と同じ流れの中にあると言えます。「利用する」と言うのは簡単ですが、提供者側であるWebサイトのオーナー様のニーズとあわせて、実際にサイトを利用するサイト訪問者のニーズを正確に掴まないことには、十分な成果を挙げることは難しいと感じます。
カンファレンス初日にあったヤマトホールディングス様の基調講演で、今後の方向性として「お客様の中へ」というキーワードが上げられていたのが印象的でした。最近では、顧客へ荷物を届けたところ、「なぜ家族に渡したのか?中を見られたではないか」という依頼主からのご意見があるそうです。これまでのように個人宅へ指定時間に届けるだけではもう顧客ニーズは満たせず、これからは玄関先からさらに家の中へ入り、個人に直接届けることが必要になっているそうです。
また、ITコーディネータの支援事例のいちエピソードとして、Webサイト改善の事例もありました。とある印刷会社様の支援において、それまでの Webサイトでは印刷会社視点のコンテンツ構成になっており「チラシ印刷 500枚で7,500円」などとしていたそうです。この表現を、「チラシ印刷」「会社案内印刷」「フライヤー印刷」「ハガキ印刷」「パンフレット印刷」「名刺印刷」「学校新聞印刷」といったように細分化しただけで、Webサイトからの問い合わせが大幅に増えたそうです。印刷会社側としては、どれも同じ「チラシ」で提供価格もすべて同じだそうですが、顧客視点で切り口を変えることで顧客の具体的なニーズとのマッチングが可能になり、ようやく提供者側、利用者側双方が本当の意味でサイトを利用可能になった、という好事例だと思います。
お客様の期待に応えるために
顧客企業様への支援においては、単にITシステムやWebサイトをどうこうという話はありがたくなくて、顧客企業様のビジネス全体の大きな絵を描くことができ、コミュニケーション全体をデザインすることが重要だということが、事例発表に共通していました。私たちのようなソリューションを提案する側には、既存の選択肢にとらわれず、全く新しい形をどれだけキャッチアップして発想できるか?という力が問われています。成果をあげるための大きな発想の例として、宿泊施設への集客をするために、宿泊客に対して近隣地域の見所やショッピングなどの情報を提供している、という事例がありました。宿泊客に喜ばれる付加価値を提供し、同時に地域コミュニティへの人の流れを作ることで地域全体を盛り上げる。結果として自分たちの本業へもよい影響がある、という構図です。先の印刷会社様の事例でも、やはり自社への集客ばかりではなく、自社が所属する商店街の活性化をはかり、結果として印刷物注文の増加を狙う、という戦略が紹介されていました。
私たちのアイデアも、単にWebサイトだけにとどまらずWebを中心としたコミュニケーション全体を描いて提案できなければなりません。これからの私たちには「お客様の期待を形にする」という力と「大きな絵を描く」という力が求められてることを実感した2日間でした。
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