多様なデバイスへの拡張、Adobe MAX 2009 in L.A.
Flashデベロッパー 黄 聖實“目の前には情報が表示される透明なスクリーンが置いてある。マウスもキーボードも使わずに、ただ指だけでスクリーンを触って、パソコンをコントロールし、サーバにアクセスして写真のデータベースから似ている顔の犯罪者の住所を調べて、犯罪者を逮捕する。”
映画「マイノリティ・リポート」で出た印象的な場面です。でも、この話はもう映画の話ではなく、現実に適応される話になると思います。
2009年10月3日〜10月6日に開催されたAdobe MAX 2009 in L.A.では、このような技術が十分に実現できる可能性を感じました。
Adobe MAXは、アメリカ、ヨーロッパ、日本などで年1回開催されるイベントで、その目的は、コンピュータのソフトウェア開発会社Adobe Systemsが開発した最新の技術を、コンピュータデベロッパーまたはデザイナが経験して習う機会を作ることです。
今回のAdobe MAX 2009 in L.A.の主な内容は、Open Screen Project、Flash Player 10.1、AIR 2.0、LiveCycle ES2、ColdFusion 9、Adobe CS5についてでした。なかでも注目度が高かったのが、「アドビフラッシュプラットフォーム(Adobe Flash Platform)」を拡張させて、PCだけではなくスマートフォンや他のデジタル機器まで同じようにサポートできる‘Open Screen Project’の新しいパートナーについてと、スマートフォンや他のデジタル機器に最適化されたより良い技術についてです。
アドビフラッシュフラットフォーム、多様なデバイスへの拡張 − Flash Player 10.1とAIR 2.0の発表
Open Screen Projectと同時に、さまざまなWebブラウジング環境で一貫したフラッシュ環境をサポートしてくれる「Flash Player 10.1」と、Webブラウザがなくても操作できるFlash Runtime Applicationの「AIR2.0」が紹介されました。また、スマートフォンとでデジタルTVで実現されたデモをシミュレーションし、Open Screen Projectの現在の進捗が紹介されました。
モバイルでも、高解像度のコンテンツやビデオ、アプリケーションをパソコンと一緒に使用できるFlash Player 10.1。スマートフォンがサポートされ、モバイルなどのデジタル機器に有用なマルチタッチ機能がアップグレードしました。モバイルに最適化されたGPU(NVIDIA社のTarga)の機能を活用してビデオとグラフィックを具現しますので、リソースとバッテリの使用量を最小化してくれます。特にソケットサーバやUSBメディアを認識することで、もっとさまざまなApplicationの開発ができると思います。
アドビフラッシュフラットフォーム、スマートフォンへの拡張 − Open Screen Projectのパートナー
Open Screen Projectは、PC、モバイル、TVなどさまざまなプラットフォームでPCと同じようなUI機能をサポートするのを目標として進んでいます。Open Screen Projectには現在、フラッシュ技術を持っているAdobeのほか、ハードウェアとネットワーキング及びコンテンツ関連の50社ほどのグローバル企業が参加しています。今回、Adobe MAX 2009では、インターネット検索サービスを代表するGoogleと、スマートフォンを製造するRIM(Research in Motion)がパートナーに参加したと発表されました。
「SWFとFLV/F4Vのスペックの公開、デバイスにアクセス可能なAPIサポート、Flash Cast/AMFプロトコルの公開、Flash/AIRデバイスのライセンス無料」というポリシーを持つこのプロジェクトを通して、Flash Playerはモバイルなどの多様なデバイスに設置されて、さまざまなFlash開発者がより多様なデバイスの開発に参加できるようになっていくことでしょう。
個人的に、このようにデバイスライセンス無料をうたいながらOpen Screen Projectに参加しているAdobeが希望するのは、おそらく “多様なプラットフォーム向けに制作されたアプリケーションの市場形成”ではないかと思います。まさに「SHIBUYA Project」がそれです。
Apple Storeのように開発者はFlashまたはAIRで多様のプラットフォームアプリケーションを開発してWebで販売してその利益を配分する感じになるのではないかと思います。
iPhone用フラッシュアプリケーションが開発できる「Flash Professional CS5ベータ」の紹介
また、AdobeはAppleのiPhoneとiPod Touchのためのインタラクティブなアプリケーションが開発できる「Flash Professional CS5ベータ」も見せました。Adobeは今回のMAXで、Flash Professional CS5で既存のFlash Applicationのソースコードをそのまま利用してiPhone用のApplicationが開発できる事を発表しました。
さらにAdobeは、Blue Sky North、Bowler Hat Gamesなど世界的な開発企業がFlash Professional CS5で開発した新しいiPhoneのApplicationを見せて、現在アップストアにも登録されていると説明しています。これに関して、Adobeの最高技術責任者(CTO)のケヴィン・リンチ(Kevin Lynch)は、Flash開発者がiPhone用のApplicationをApple Storeに登録する道を開きました。また、「AppleがiPhoneユーザのためにフルブラウジングをサポートする準備ができているのであれば、いつでもFlash PlayerをSafariに提供する準備ができている」と説明しています。
Flash Professional CS5は、iPhone用Applicationをより簡単に開発できるだけでなく、新しいテキストエンジンなどのさまざまな機能が追加されました。
- iPhone用Applicationの開発が可能
- Text Layout Framework(TLF)の追加
- プロジェクトにすぐ使えるCode Snippets Panelの追加
- Flashプロジェクトの作業をするときに、Flash BuilderをAction Scriptエディタのように使用できる機能
- よりレベルアップされたAction Scriptエディタ
企業業務システムのサーバ用ソリューション − LiveCycle Enterprise Suite 2
開発者とデザイナに対してのAdobe MAX 2009の主役が「Flash Player 10.1」と「AIR 2.0」なら、企業業務システムの管理者には「ライブサイクルエンタプライズスウィート2(LiveCycle ES2)」の発表が注目だったのではないかと思います。
LiveCycle ES2は名前からも分かるように、企業のクライアントのためにできた製品で、既存のLiveCycle ESからアップグレードされたバージョンです。LiveCycle ESは企業または公共機関でPDFベースの電子文書を利用して、クライアントと一般ユーザ、パートナーとの業務を効果的に進めるようサポートをするサーバ用のソリューションです。
企業業務の効率化というと、Enterprise Resource Planning(ERP)、Customer Relationship Management(CRM)、Enterprise Content Management(ECM)などを先に思い出すかと思います。しかしこのようなシステムは、効率化はできますが、構築が難しく、費用が高く、画面やプロセスが複雑である、などの理由で活用度が低くなるのが課題でした。でも、LiveCycle ESは企業がより効果的により簡単に有用な業務管理システムが構築できるシステムです。まさにPDFとFLEX基盤のRich Internet Application(RIA)の環境のおかげで、ユーザに活用度が高いApplication環境ができて、業務環境をより便利にする事が可能になりました。
LiveCycle ESはデザイナが作業した2D/3Dのデータを自動にPDF化してくれる「LiveCycle PDF Generator 3D ES」、企業用Applicationの開発期間を短縮してくれる「Solution Accelerator」、企業用コンテンツ管理システム「LiveCycle Contents Service ES」で構成されています。今回のAdobe MAX 2009で発表されたLiveCycle ES2には、さらに他のアプリで生成されたドキュメントをLiveCycleサーバで自動にPDFに変換してくれるDesktop Widget「LiveCycle Launchpad ES2」、「PDF Portfolio」が追加されました。モバイルとの連動機能も強化されて、Windowsモバイル環境だけではなく、iPhoneとBlackBerryなどさまざまなスマートフォンでもアクセスできる環境をサポートします。開発環境に関しても、Flash Applicationが簡単に生成できる「LiveCycle Mosaic ES2」が追加されました。
また、LiveCycle ES2はCloud Computing基盤のウェブソフトウェア(Software as a Service : SaaS)機能をオプションでサポートしています。これで、企業がサーバの構築をしなくてもAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)を利用してLiveCycle ES2の機能を利用する事ができるでしょう。
3つのキーワード - Distribution、Collaboration、Social
現在Adobeで進んでいるFlash Platform Servicesは、分配(Distribution)、共同作業(Collaboration)、ソーシャル(Social)という3つのキーワードを持っています。
分配サービスでは、言葉通りFlash Platformが分配できるスペースを作ります。
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制作されたFlash Applicationを多様なデバイス用に分配することができます。
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Facebook、Myspace、iGoogleなど70個以上のソーシャルサービスに分配するための複雑な過程が減らせます。
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プロモーションと広告をもっと簡単に使えます。
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分配されたFlash Applicationの統計情報が習得できます。
共同作業サービスでは、LiveCycle Collaboration Serviceを利用して、Adobeからチャット、オーディオ、ビデオなどのストリーミング技術を、技術・費用のストレスなしで利用できるようにサポートします。
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簡単なチャット、ネットワークゲーム、e-Learningまたはクライアントサービスアプリケーションに使用できるリアルタイムプッシュメッセージングサービス(Real-time Push Messaging Service)が利用できます。
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デフォルトで生成されているダッシュボード、チャット、ウェブカメラ用のコンポーネントが利用できます。
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認証されたシステムで、ユーザを選択し、現在のステータスを変更できるユーザ管理サービスが利用できます。
ソーシャルサービスでは、FacebookやMyspaceのようなソーシャルネットワーク用アプリケーションを簡単に開発できます。(2009年10月現在未公開)
このようなサービスを利用することで、開発者は既存の技術を使って開発したFlashコンテンツを多様なデバイスに分配しやすくなりますし、それによってアプリケーション数が多くなりユーザの経験を極大化する効果とともに、開発者とAdobeはその分の利益が得られる効果が期待できると思います。
もうFlashは今まで知っていたWeb基盤のインタラクティブなコンテンツを抜け出して、裏ではColdFusionとLiveCycleが、表面ではFlash Playerを活用した多様なデバイスでのコンテンツに発展しています。これを通して、営業スタッフのためのモバイルアプリケーションの開発や、プロモーション及び販売のための「SHIBUYA Project」コンテンツの開発、社内インフラ管理システム、リアルタイムな会社リソースの管理システム、Cloud Computingを通した顧客の好みに合わせたサービスなどの企業効率化システムはもちろん、デバイス本体のアプリケーションの開発も可能だと思います。
今回のAdobe MAX 2009では、ある特定技術に関する知識の勉強より、このようなAdobeの進む方向性を読めてその方向性を自分の技術にどうやって適応するかについて考えられた有益な場だったと思います。
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