2010年、ソーシャルメディアへの取り組み –Twitterトレンドを探る–
取締役 兼 事業展開室 室長 藤田 拓2009年の振り返り
新年ということで、いつものことながら今年のことにふれたいと思いますが、2010年について考える前に、前年である2009年で目立った3つのキーワードを振り返りたいと思います。
クラウド
まずは私の昨年初頭のコラム「変容の中における所与としての2009」において取り上げさせていただいた「クラウド」。雑誌、新聞や街頭ポスター、そしてテレビCMでも目にするこのバズワードは未だ言葉の普及度と比べてその認知は未成熟ですが、多くの企業がクラウドの優位性を感じ、それぞれのサービス構築を2009年にスタートさせました。
スマートフォン –iPhoneとAndroid–
また、iPhoneに代表される「スマートフォン」はそのユーザーエクスペリエンスに加えて価格的な後押しもあり、2009年に大きく普及が広まった感があります。実際、IT mediaエンタープライズの記事「iPhoneのユーザー成長率、300%超で日本がトップ——AdMob調査」に取り上げられているように、日本での普及に大きく進んでいるようです。また、後発の強者であるGoogleが昨年のイベント「Google Developer Day 2009」においてAndroid端末を無償で配るという、この市場への本気度を垣間みせた事件もありました。
ソーシャルメディア –Twitterの台頭–
そして、「ソーシャルメディア」。Web黎明期よりその内容や可能性については多くの人がふれていたものの、言葉として強く確立したのは昨年の2009年といえるかもしれません。日本におけるその代表格はTwitterでしょう。ブログホスティング、SNSは国内産のサービスが海外シェア率の高いサービスを押しのけて独自路線をいく中、Twitterは海外産ながら多くの日本ユーザーを取り込んできており、その伸び率は驚異的な状況で、昨年末から今年にかけて多くの著名人も参加しはじめています。
2009年の延長上にある2010年
さて、では2010年についてはどうでしょうか? 私は2009年のキーワードとして挙げさせていただいた「クラウド」、「スマートフォン」、「ソーシャルメディア」が2009年の状況を土台に前進し、「ソーシャルコンピューティング」をより確立していく年になるのではないかと考えています。
実際のところ、Twitterを支えている一端はAmazon S3のクラウドコンピューティングですし、また、iPhoneの普及がTwitterの普及に関連があるといわれることもあり、これらは密接に相乗効果を上げつつ成長してきたサービスといえるかもしれません。
このインフラやデバイス、そしてWebサービスのおかげで、様々な人が様々な場所で様々な時間にテキストや画像といった情報を共有するという行動のベクトルがより大きくなってきており、その状況はブログやSNSの登場時以上に進んでいます。今後もソーシャルメディア上の情報量が増殖し続けるのは自明のことでしょうが、共用可能な情報の、かつてない膨大な量を前にしつつ、いかにして自分たちに有効な情報を引き出すかが重要になってきています。
リアルタイム
この状況下、メタキーワードとして重要になってきているのが「リアルタイム」です。Webにhtmlページが多く生成され始めた際にキーとなったのは検索エンジンでしたが、今もまた、GoogleやYahoo!は、よりリアルタイムな検索を可能とする姿勢を打ち出しています。RSSアグリゲートサイトの登場においてもリアルタイム度がアップしましたが、
今では検索エンジンが強大なクラウドのパワーを背景にそのスピードをあげたため、RSSアグリゲートサイトの旗色が悪くなりつつあるといえるでしょう。
- ※ Google Realtime Searchの動画も公開されていますので、ぜひご覧ください。
Web情報のデータ解析
上記のように情報の洪水の中、検索は明らかに有効な手段ではありますが、ピンポイントな情報の取得、および、その関連情報の取得というステップを繰り返していくことになります。もう一方で、膨大な情報を俯瞰してオーガナイズしつつ可視化することも重要となってくるでしょう。そのオーガナイズのバックグラウンドにはテキストマイニングやネットワーク分析に代表されるようなデータ解析のノウハウが必要となってきます。
twimpact社との提携
このリアルタイム、Web情報のデータ解析といったメタキーワードについて、私どもも積極的に動きたいと考えております。その一環として、この2010年1月、私どもミツエーリンクスはtwimpact社(ドイツ ベルリン)と技術提携を行なうことに合意いたしました。twimpact社はベルリン工科大学のスピンオフカンパニーで、twimpact社の共同創設者であるDr. Klaus-Robert Müller教授が率いる工学部情報工学科マシンラーニング/インテリジェントデータ解析研究室と強い結びつきをもっており、ソーシャルネットワーク解析、トレンド予測、インパクト評価に対する専門技術ならびにソリューションを提供しています。マシンラーニング/インテリジェントデータ解析研究室は、脳活動のリアルタイム解析をはじめ様々な解析の実績を持ち、その最新の研究成果をソーシャルメディアの膨大なデータ活動に適用しています。
twimpact.jpの立ち上げ
まずは手始めにtwimpact社のサービス、TWIMPACT.COM(twimpact.com)を日本向けのサイトとしたtwimpact.jpを2009年12月28日にベータ公開しました。元々TWIMPACTは、twimpact社のメンバーがベルリン工科大学で研究活動の一貫として2009年夏にローンチしたサイトでもあり、ビジネスとして始めたものではありませんでした。そのため、まだまだ機能やUIは発展途上ですが、現状のところ次の3つの情報をサービスしています。
RT(ReTweet)によるリアルタイムTwitterトレンド
RTはTwitterにおいて他のユーザーの発言を引用する行為です。Twitterのユーザーは何らかの印象を受けた発言に対してRTを行ないます。TWIMPACTでは1時間、1日、1週間、1ヶ月の単位で各発言へのRTを集計しランク付けをしています。特に1時間の集計では、ほぼリアルタイムな集計結果をリロードしてご提供しています。そのランキングをみると今どの発言が注目を集めているのか把握することができます。
Twitterユーザーの発言力をスコアリング
TWIMPACTではリーダー/フォロワー数のような単純な方法に頼らず、最新のマシンラーニングをベースとする技術を使いそれぞれのユーザー発言力をスコアリングし、その結果を元にユーザーランキング情報を提供しています。
Twitterユーザー間のRTによる有向グラフ
RTは他ユーザーの発言を引用するため、ユーザー間の関係が生まれます。TWIMPACTではこの関係をCANVASにより有向グラフ化しダイナミックな可視化に挑戦しています。現在のところまだまだベータ版ということもあり、一番調整が遅れているところでもありますが、今後更に整備したい機能でもあります。
更なるソーシャルメディアデータ解析サービスへ
2010年以降、ソーシャルメディアにおいて様々なアクターが情報を生成し続けるでしょう。私たちはtwimpact社と協力し、その卓越したインテリジェントデータ解析のスキルを共有しつつ、ソーシャルメディアの無尽蔵な情報をオーガナイズすることで、多くのエンドユーザー様に合わせたデータ解析サービスをご提供していきたいと考えております。
本年も宜しくお願いいたします。
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