社会人基礎力への取り組み
アートスタッフ株式会社 芳賀 穣日本人材派遣協会が四半期ごとに発表する「労働者派遣事業統計調査」(2010年第2四半期)によると、派遣スタッフ実稼働者総数は対前年同期割れの減少傾向が続いています。また、先日総務省が発表した7月の完全失業率は5.2%(前月から0.1ポイント低下)となっており、雇用を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。
労働者派遣法改正
先日の民主党代表選では、菅直人首相が再選しました。4月6日に衆議院に提出された労働者派遣法の改正案は、廃案とはならず継続審議となりましたので、次期国会で可決されるとみています。その主な内容は以下のとおりです。
- 登録型派遣の原則禁止(専門26業務等は例外)
- 日雇派遣(雇用契約期間が日々または2カ月以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止
- 直接雇用みなし規定の創設
- 均等待遇の確保
- 情報公開の義務範囲の拡大
- 派遣先責任の強化
- 罰則の強化
この法改正により労働者保護の強化や処遇改善は、構造的な問題を解決することができるか。当事者であるわれわれ派遣元は、行政の動向を見ながら、より適正な事業運営を追求しなければなりません。
ただ、昨今話題になった派遣切りは、派遣という雇用形態自体が問題というわけではなく、労働者保護が不十分なまま規制緩和が進んでしまったことに問題があります。雇用形態、就業形態の多様化は、現代社会における労働者のニーズでもあります。
一方、企業にとっても、厳しい競争を勝ち抜くため、柔軟な雇用調整が必要な場面が出てきます。人材派遣はこのような労使双方のニーズから生まれたものです。
「社会人基礎力」とは
WebディレクターやWebデザイナーは、労働者派遣事業において、26専門業務と政令で定められています。つまり、業務の性質上常用雇用の代替の恐れが無い専門的業務であるということです。
しかしながら、派遣先の人材に対する要求レベルは、スキルセットにとどまらず、マインドセットへの評価も厳しくなってきていると感じています。
アートスタッフも派遣労働者の教育訓練の強化に取り組んでいますが、マインドセットの教育の一つとして、「社会人基礎力」に注目をしています。「社会人基礎力」とは、「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行なっていく上で必要な基礎的な能力」と定義されており、以下の3つの能力で構成され、さらに12の能力要素に分類されています。
- 前に踏み出す力(アクション)
- 考え抜く力(シンキング)
- チームで働く力(チームワーク)
2007年に経済産業省が発表した企業の求める人材像と社会人基礎力と関係を見ると、クリエイティブ系の職種において、求める社会人基礎力は、「考え抜く力」が最も高く、3つの能力のうち唯一全職種平均を上回っています。
また、不足が見られる社会人基礎力については、「前に踏み出す力」の不足が最も目立っていますが、全職種平均を上回る能力は、「チームで働く力」。要素別では、「創造力」、「柔軟性」が、全職種平均に比較して高く求められており、中でも「柔軟性」の不足が全職種平均に比較して不足が目立っており、ニーズが高い能力と出ています。
今後も高まる派遣労働者の社会人基礎力
経済産業省が「社会人基礎力」に取り組みはじめた背景には、若年労働者層(29歳までの若手社員)を中心に、社会人基礎力不足している人材が増えてきていることにあります。
ゆとり教育やメール・ゲーム文化などの影響とも言われていますが、企業側は新卒社員の採用プロセスや入社後の人材育成において、社会人基礎力を重視する傾向が今度も高まっていくことでしょう。当然のことながら、社会人経験の浅い派遣労働者にもあてはまることであり、われわれ派遣元が取り組まなければならない大きな課題と認識しています。
派遣先企業、派遣労働者双方の関係をwin-winに導くことが派遣元の使命ですので、アートスタッフでは、ミツエーリンクスとの連携により、教育・研修制度の充実に努め、今後も働く一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる環境構築、雇用創造に取り組んでまいります。
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