ガイドラインを整備するということ
フロントエンド・エンジニア 酒井 三四郎ガイドライン作成の義務化に向けて
前回のコラムで、運用効率を高めるためのガイドラインの必要性について書きましたが、私たちは、今後の新規構築で携わるすべての案件で、構築したサイトの設計・制作情報の文書化とモジュール・テンプレートのリスト化を義務付けるべく活動しています。これは次のキーワードを実現するために重要な施策だと考えています。
- 属人性の排除
- 業務の効率化
- 品質の向上
これらは、誰もが手早く高い品質でサイトの構築・運用を行なえるようにするのを目的としています。ここで言う「誰もが」というのは当社の制作スタッフだけでを指すものではありません。その後運用に携わる企業のWebマスターや他制作会社の方々のことでもあります。
多数のスタッフが構築に関わる大規模なサイトの構築においては、ガイドラインの作成はほぼ必須と言っていいでしょう。しかしながら、小規模なサイトや、様々なポリシーを持つ複数の制作会社が運用で関わっているサイトなどでは、制作ガイドラインや使用されているモジュールなどの情報が整備されていないケースも少なくありません。
それでもサイトが運用されているのは、担当者のスキルよりも、むしろ経験や馴れによる部分が大きい面があります。そのためにガイドラインを整備し、モジュールやテンプレートをリスト化し共有することは、効率化と品質向上を図るだけでなく、属人的なフローや作業手順への依存を見直すことができます。
複雑化する手法に備えて
ガイドラインで共有すべき情報として、文書型や文字コードといったレギュレーションだけでなく、CSSやJavaScriptファイルなどの各種リソースファイルの配置ルールや、モジュールやテンプレートの利用ルールなどが例として挙げられることは、前回のコラムでも触れました。
しかし、iPhoneをはじめとするスマートフォン市場の拡大に伴い、閲覧環境が多様化する昨今では、これまで以上に共有すべき設計情報は増えるだろうと考えています。
現在、当社ではスマートフォンに対応したサイトの構築サービスを展開しています。それらの案件に携わって感じるのは、これまでのPC向けのサイト構築とは考え方も制作フローも大きく異なるということです。
スマートフォンの画面はPCと比べて小さく、マウスを使った精度の高いアクションはできません。そのため、表示する情報を吟味し、タッチインターフェースを活かした新しいUIを設計することになります。画面の導線もPC向けサイトとは異なった視点で設計する必要があるでしょう。
また、Webkitベースのブラウザを搭載したiPhoneやAndroid端末では、HTML5やCSS3といった新しい技術を扱えるようになっているため、それらを積極的に利用することで表現の幅は飛躍的に広がり、リッチなコンテンツを作れるようになっています。また、スマートフォン利用時の通信速度を想定すると、PC向けサイトの構築以上にパフォーマンス面でのチューニングが求められるでしょう。
これらの新たな課題や技術に直面することで、制作手法はより複雑化し専門的になっていきます。そのため、指針や手法が明確に共有されていないと、運用段階で品質にブレが生じてしまう懸念があります。私自身しばらくの間は、どのような方針でそれらの技術を採用し設計しているのかを、細かいくらいに文書化し、積極的に共有していくつもりです。そうすることで、最初に挙げた3つのキーワードに加えて、「人材の教育」もシームレスに行なえるのではないでしょうか。
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