Adobe MAX 2010参加報告
Flashデベロッパー 黄 聖實去年に続いて今年もアドビシステムズ(以下Adobe)の主催で10月25日から開催されたAdobe MAX 2010 in L.A.に参加いたしました。
Adobe MAXは年1回開催される、Adobe製品の開発者向けのためのイベントです。ここで開発者たちは新しい製品や技術について学んだり、体験することができます。
様々なデバイス、進化する開発環境
Windows、iOS、Linux、iPhone、Android、BlackBerryなど最近は様々なプラットフォームとデバイスが発売されています。エンドユーザーは新しいデバイスを購入する際、もう一度新たにコンテンツの使い方を勉強するよりも、新しいデバイスにも以前使っていたのと同じ使い方のコンテンツを望みます。例えば、自分が設定したスケジュールが新しいデバイスにも同じように表示されることを、または自分のノートパソコンで表示された場所と同じ所に検索ボタンがあることを望みます。そのコンテンツがどのような言語で作られて、どのような処理を通してどのようにして自分のデバイスに内容を出力するかということにはあまり興味がないと思います。
逆に開発者は、様々なプラットフォームと溢れるデバイスの中で、エンドユーザーに同じ使用感を持たせるように作らなければなりません。そうするために開発者は様々な開発環境に慣れておく必要があり、プラットフォームやデバイスが増えるたび、またその環境に慣れる必要があります。会社の場合でも開発環境が増えた時には人材と共に新しい開発のための時間が必要でしょう。例えば、iPhone用に開発されたアプリケーションをAndroid用にリリースしたい場合は、Android開発ができる開発者とiPhoneを制作した時とほぼ同じ開発期間が必要です。少ない開発環境で様々なデバイスへの出力が可能になり、エンドユーザーの体験もそのまま引きつぐことができれば、素晴らしいことではないでしょうか。
今回のAdobe MAXは、Adobeのフラッシュ・プラットフォーム(Flash Platform)技術でこのような開発環境を実現するための発表が主な内容でした。
余談ですが、個人的に面白かったことの一つは、去年は開発者のモバイル端末はほぼiPhoneでしたが、今回はほとんどの開発者がAndroid向けの端末を持っていたことです。マルチスクリーンを自分で試そうと思っている開発者がこんなに増えたのは、AndroidがFlash Platformのマルチスクリーンにおける初めての可能性だったからではないでしょうか。
様々なデバイスへの出口、Open Screen Project
2009年から、Adobeは様々なデバイスのメーカーをパートナーとして“Open Screen Project”を進行してきています。このプロジェクトの目的は“Flash Platformを利用してどのようなデバイスでも同じアウトプットを見せること”であり、2010年現在まで、AMD、Intel、Google、RIM、日本のNTTドコモなど約59社が参加しています。
このプロジェクトを通して、各メーカーが開発するタブレットPCはもちろん、スマートフォンとTVにもFlash Platformが使えるようになりました。パソコン以外のデバイスとして現在「Android OS 2.2以上」、「Linux基盤のOSであるBlackBerryタブレット」、「ChromeとAndroid OS基盤のGoogleのスマートTV」でFlash Player 10.1とAdobe AIR 2.5をサポートしています。
もっと軽くなったFlash Platform
様々なデバイスに最適化させるために、Flash PlatformはCPU(Central Processing Unit)で処理をしていたグラフィック演算をGPU(Graphic Processing Unit)に任せることで負荷を減らすことで、さらに安定的な演算ができるようになりました。それから、内部構造で必要性が低い要素を減らすことで、基本的な結果物の重さを縮小しました。つまり、自動車に例えると、車体を小さくして燃料消費を減らし、補助エンジンを追加してメインエンジンの仕事を手伝うようにすることと似ています。
実際にAdobe MAXの基調講演で紹介されたStageVideo(ビデオレイヤーとして新しく追加されました)を利用して動画を再生した結果、以前のプレイヤーで80%くらいだったCPU使用率が10%以下に急減するという驚きの結果が出ました。
マルチスクリーン開発に最適されたフレームワーク、Hero
Adobeはまた、マルチスクリーン上の開発環境をもっと簡素化してくれるFlex SDK 4.5 Heroを発表しました。モバイル用に最適化されたボタン、チェックボックス、ラジオボタン、テキストボックス、そしてタッチスクロールとリストスクロールなどが追加されました。
さらに、メディアプレイヤーとしてOSMF(Open Source Media Framework)1.0が採択され、TLFライブラリが新しく変更されました。この変更により、何回かクリックするだけでデータベースと連動するリストやタッチスクロールバー、ボタン、それからモバイル用の効果が簡単に作れるようになりました。
これをもとに、開発者はデザインと開発の際の生産性を最大化しながら、ウェブとデスクトップのプラットフォームを作るのと同じように、スマートフォンやタブレットPC及びTV用モバイルへのマルチスクリーンに最適化されたアプリケーション開発が可能になります。
地世代FLASH 3D API, Molehill そしてPixel Bender 3D
今回のAdobe MAXではマルチスクリーンだけではなく、コードネームMolehill(来年中旬ベータ版公開予定)と呼ばれるFLASH 3D APIも紹介されました。
新しく追加されたStage3Dレイヤーで作動するこのAPIは「Low-level GPU Accelerator 3D API」といって、FlashとGPUの間をパソコンが理解する言語(Actionscriptのように人が使用する言語ではなく、パソコンが理解する言語)で処理するため、より早く演算できます。もちろん、この新しい3D機能はAlternativa3D、Away3D、Flare3D、Sophie3D、Yogurt3Dなど普段よく使われる他の3Dフレームワークと一緒に使用できます。Pixel Benderの場合は以前からありましたが、これから3Dも対応するようになります。Pixel BenderはPixel単位の処理をActionscriptではなくネイティブコードで処理するため、大量の演算をActionscriptより早く処理することができます。
今回の発表でPixel Benderが3D APIにも対応できるようになりましたので、3DレンダリングはMolehillで処理、Pixelの効果はPixel Benderで処理することでレンダリングのスピードやアウトプットの品質をもっと向上させることができるのではないかと期待しています。
八方美人、Adobe AIR 2.5
Adobeは今回のAdobe MAXで、TV、タブレットPC、スマートフォン、デスクトップなどマルチスクリーンをサポートするAdobe AIR 2.5を発表しました。Adobe AIRはウェブブラウザを使わずにインターネット上のFlashコンテンツを実現するローカルアプリケーション技術です。
今回の発表によると、Adobe AIRを基盤にして開発者はアドビ・フラッシュ・プロフェショナル・CS5(Adobe Flash Professional CS5)、アドビ・フラッシュ・ビルダー(Adobe Flash Builder)、アドビ・フレックス(Adobe Flex)を含め普段使われているFlash Platform用の開発ルーツを利用して、各デバイス環境に合う独立系アプリケーションが作れるようになります。
加速度センサー、カメラ、ビデオ、マイク、マルチタッチ及び動作認識を含んだ新しいリッチなアプリケーションのユーザー体験を提供します。開発者はGPS(Global Positioning System)機能を使用して位置基盤のアプリケーションサービスを提供できたり、HTML5が利用できるネイティブブラウザコントロールを見せたり、外部入力デバイスを利用してコンテンツをコントロールすることもできます。そして、SQLiteを利用してアプリケーション内部にデータを簡単に保存することもできます。
アプリケーションマーケット
Adobe AIRの開発者は各デバイスに合わせて開発したアプリケーションをAdobeのアプリケーションストアであるアドビ・イン・マーケット(Adobe InMarket)だけではなく、アンドロイド・マーケット(Android Market)、インテル・アップアップ・センター(Intel AppUp center)、アップル・アップストア(Apple App Store)などにも登録して販売できます。
そして、アプリケーションの制作の際にAdobeから提供された管理用Actionscriptコードを追加することで、専用の管理ページからアプリケーションの現在の状態を簡単に確認、分析などの管理ができます。
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