仕様書・設計書を作る目的の一つとして
システム本部 新井 直人コミュニケーションは大事
先日、プロジェクトマネジメント業務に最近多く関わりだした知人から「プロジェクトをマネジメントするうえで最も重要な事は何か?」と問われました。プロジェクトの進行に密接に関わってくる環境的・技術的などの要因は多々ありますが、最も重要なのは『関係者間のコミュニケーション』。はい、月並みです。ごく基本的な事で、当たり前の事ですね。でもやはり何事も基本を押さえる事は重要です。
滞りなく進行し、何の問題も起きることなく完了するプロジェクトは、関係者間のコミュニケーションが上手く取れていた結果でしょうし、逆に、問題が発生し、炎上するようなプロジェクトは、原因を突き詰めると、関係者間のコミュニケーションの取り方に問題があった、という結論に必ず達します。
コミュニケーションの目的
では、コミュニケーションを重要視して適切に取っていく事で、どのような効果が期待できるのか、どのような目的でコミュニケーションを取っていくのか。それは、関係者間での認識のズレ、仕様の抜け・漏れ、誤解などが生まれるのを防止するという目的であり、それにより、プロジェクトの円滑な進行が期待できます。
発注者と開発者、ディレクターと制作者、SEとプログラマ、などの間での認識のズレが生じると、それが後々大きな問題を引き起こす要因となります。始めは小さなズレでも、プロジェクトが進行するごとに徐々にそのズレが大きくなっていき、気が付いた時には修正が効かないほどの大きな亀裂となり、俗にいう「デスマーチ」を引き起こしてしまいます。コミュニケーションが適切に取れていたなら、認識のズレが発生する事を抑制できますし、もし、ズレが発生したとしても、早い段階でそのズレを修正する事ができるでしょう。
不適切なコミュニケーション
発注者と開発者との間の「不適切なコミュニケーション」の例としては、次のようなものが考えられます。
- 開発者の専門的な用語を使った説明では、発注者は十分な理解を得られていないかもしれない。
- 発注者が「実装して当然」と想定している機能について、開発者は「発注者から何も言われていない」という理由で、実装する機能として想定していないかもしれない。
このように、立場などの違いによって、物事の受け取り方・理解の仕方・理解できる内容などは異なります。自分本位なコミュニケーションの取り方は適切ではなく、それでは「意思が疎通している」とは言えず「コミュニケーションの目的」を達成する事はできません。お互いの立場の違いを理解し、歩み寄るようなコミュニケーションを心掛ける事が、適切なコミュニケーションの第一歩ではないでしょうか。
コミュニケーションツールとして
仕様書や設計書、計画書などのドキュメントを作る目的の一つとして「関係者間のコミュニケーションツールとして利用するため」という考え方があります。発注者の要求を開発者が十分に汲み取り、要件として落とし込めているか、要件に過不足は無いか、発注者と開発者の認識を合わせるためのツールであり、開発側内部では、詳細な設計や実装を行うエンジニアとのコミュニケーションにも利用されるでしょう。これらのドキュメントは「関係者間のコミュニケーションツールとして利用する」という事を念頭に置き、前項の「不適切なコミュニケーション」が発生しないように配慮して作成する事で、プロジェクトの円滑な進行に役立つツールとなります。また、そのような目的意識を持つことで、ドキュメント作成に対するモチベーションが向上し、無駄が無く意味のある、高品質で完成度の高い、「生きたドキュメント」を作成できることでしょう。
低コストや短納期を最優先とするために、十分な仕様書や設計書を作成しないような場合もありますし、ドキュメンテーションにはあまりコストをかけないような開発手法を採用するような場合もあります。何がベストかは、ケースバイケースではありますが、コミュニケーションやドキュメンテーションの品質向上へのアプローチの一つとして、「コミュニケーションツールとしての仕様書・設計書」という考え方を、私は推していきたいと思います。
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。