IIA2012IC参加報告
経営監査室 公認内部監査人(CIA) 野口 由美子2012年7月8日から11日まで、アメリカのボストンでIIA(The Institute of Internal Auditors/内部監査人協会)の国際大会が開催されました。世界中から3000人もの内部監査人が集まり、合計83のセッションが行われました。前回はマレーシアのクアラルンプールで開かれ、「アジアで初めて」、「IIA70周年」ということで、祝賀ムードでしたが、今年はまた違った雰囲気を味わうことができました。
Revolutionize Internal Auditing
大会に先立ち、IIAからスマートフォン・アプリの提供がありました。保守的なイメージのある内部監査人の集まりでこうしたものが利用されるとはちょっとした驚きでしたが、スケジュール・会議室の確認や事務局からの連絡、他の参加者とのコミュニケーションなどに使えてとても便利でした。
今回の大会テーマは、“Revolutionize Internal Auditing”(「内部監査を改革しよう」筆者訳)です。当社の内部監査部門も設置から6年が経とうとしており、ノウハウは蓄積され、PDCAも回っています。しかし、マイナーチェンジだけでなく、ときに抜本的な改革についても考えてみる必要があるのかもしれません。なぜなら、世の中、マイナーチェンジだけでは追いつかないような、大きな変化が起こりうるからです。
セッションのひとつに、産業も市場も顧客も変化しており、好むと好まざるとにかかわらず、それを無視することはできないという話がありました。産業や市場や顧客が変われば、当然、リスクや対応策も変わり、監査手法も変わってくるかもしれません。ですから、内部監査人は変化に対して、柔軟に対応しなくてはならないと思います。大会アプリの提供は、その一例を示すためだったのかもしれません。
歩いてみんなハッピー
話は変わりますが、参加者全員に歩数計が配られ、大会中、全員合わせて10,000マイル歩いたら、IIAから、障害をもつ方の支援を行う団体に10,000ドルの寄付を行うというプログラムが実施されました。社会貢献活動としても、もちろん素晴らしいプログラムですが、座りっぱなしの参加者にとって健康のためにも、大きな会場をあちこち移動しなければならないストレスを和らげるためにも、セッション終わりにぶらりとボストンの町を散策して息抜きさせるためにも、事務局への苦情を軽減するためにも役立ったと思います。社会貢献活動は、いろんな人がハッピーというのが成功の秘訣なのではないかと思いました。そのほうが、社会貢献活動をしようとする人にとって、敷居が低くなり、続けやすいからです。
ルールやプロセスについても同じことが言えるかもしれません。会社にとってだけでなく、運用する人にとっても、良いことというのは、受け入れてもらいやすく、根付きやすいのではないでしょうか。そうした観点で改善提案をしていけたらなあと思います。
グローバルスタンダードをカスタマイズ
IIAのスタンダードは、前提となる組織の形態もグローバルスタンダードです。昨年、国内外で大きく取り上げられた日本企業による損失隠し事件では、アメリカの大手メディアの記事では「監査役」が“Internal Auditor”と訳されていました。アメリカでは監査役制度がないので、こうした表現になるのでしょう。つまり、アメリカで、グローバルスタンダードで、“Internal Audit”と言うとき、範囲は、より大きいわけです。
しかしながら、ガバナンスを含むグローバルスタンダードを頭に入れておくことは、日本で内部監査業務を遂行するうえでも大きな意味があると思います。ひとつには、いわゆる内部統制において、内部監査部門が独立的モニタリングを担当することが多いと思いますが、「全社的な内部統制」も評価範囲に含まれるからです。また、会社の価値観は、各プロセスや従業員の仕事ぶりに反映されるものだと思うのです。
ただし、グローバルスタンダードをそのままもってくればいいわけではないと思っています。たとえば、日本だったら監査役との連携が欠かせないと思いますし、フラットな組織とヒエラルキーの厳格な組織では、必要となる経営層の支持の度合いが違ってくるのではないでしょうか。グローバルスタンダードを念頭に置きつつも、日本の、業界の、そしてその組織の特性を加味してカスタマイズする必要があると思います。
さいごに
国際大会は、私にとって2度目の参加でしたが、内部監査のグローバルな状況や関心事を見聞きし、大いに刺激を受けることができました。内部監査人にとって重要なことのひとつは、世の中で起こっていることに対して、感性を磨き、意識の度合いを高めることではないかと思います。来年の国際大会は、IIAの本部があるアメリカのオーランドで開催されます。また参加できることを楽しみにしています。
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。