利用シーンをイメージしてUI設計していますか?
UXエバンジェリスト 金山 豊浩駅での道案内
先日とある駅で、近くのコンサートホールへの道順を駅員に尋ねたところ、「左左3番」との答えが返ってきました。暗号のようでしたので、多少困惑した表情で「えっ?」と聞き直したらまた同じ答えが…。何度聞いても答えが変わらないだろうと諦め、釈然としないまま歩き始めたところ、「まず左方向に進み、突き当りを左に曲がってください。道なりに進めば3番出口がありますので、地上に出たら道案内に従ってお進みください。」との意味だったようです。何度も聞かれる質問に何度も答える内に、最小限の情報だけの答えに収斂されて「左左3番」になったのでしょう。確かに、業務遂行の効率はアップするかも知れませんが、人間相手とは思えない返答では、せっかく人を配置した意味が無いのではと感じてしまいます。
答えを知らない人の気持ちが分からない
どうしてこのようなことになったか考えてみると、「答えが分かっている人は、答えが分からない人の気持ちが分からなくなる」と言うことの典型的な例だと思います。自分は分かっているから、自分が分かる言葉で簡略化して考え、伝えてしまうのです。同じようなことが、業務アプリケーション、ウェブサイトなどのUI(ユーザインタフェース)設計でも起きていないでしょうか? システムの動き、データ構造は仕様書で定められているから、それらに合わせて画面遷移を設計し、画面の配置や各要素もデータ構造に合わせて作ってしまう。もし、そうだとすると、CPU負荷という観点ではデータ処理するのにとても効率的かも知れません。しかし、そのシステムやウェブサイトを使う人にとっては、内部構造をそのまま画面で示されても分からないことばかりです。業務フローや知りたいことの流れに沿って、機能や情報が整理されていなければ、業務や作業を分かりやすく、効率よく行うことはできません。
データ入力に追われるお医者様
体調不良で病院を訪れた際、待合室で看護婦さんから問診を受けた後、診察室に通されました。担当のお医者様は、ディスプレーに表示された問診結果を見ながら追加で質問をされ、聞いた結果を一生懸命キーボードで入力されていました。「軽い風邪のようですから薬を出しておきますね。」と言われて診察室を出たのですが、お医者様とは一度も目が合わず、ちゃんと病状を診てもらえたのかちょっと不安になりました。電子メールでやりとりしていても同じ診察結果になったような気がして、わざわざ病院に行かなくても良かったのではと感じました。これは、電子カルテの操作が煩雑で、操作に追われてしまっていたのではないでしょうか? 実際、他のお医者様に伺ったところ、ディスプレーを見ながら正しく入力できているか確かめながら診察しているのでとても大変だ、と嘆いていらっしゃる方がいました。このお医者様にとっては、2つのこと(診察とカルテ入力)を行うのが車を運転しながら携帯電話を操作するのと似た状況になっており、改善が必要だと思われます。
業務の現場を把握して、大事なことを最大限に支援する
電子カルテによって情報共有や利用が促進されることはとてもよいことだと思います。しかし診察においては、お医者様が患者さんとしっかりと向き合い、顔色を見たり会話の中から違和感や心配事に対処したりするような対応が重要なのではないかと個人的に思っています。お医者様が本来の業務(診察)に専念できて、情報入力も確実・簡単に行えるように設計するためには、お医者様と患者さんのやりとりの状況も考慮した設計がなされるべきだと感じます。つまり最近の言葉で言うと、利用状況を把握した上で最適なUX(ユーザ体験)を設計することが求められています。
弊社では、ユーザに提供したい理想のUXおよび設計コンセプトを策定し、一貫した軸を持つユーザ視点のデザインを行う「アプリケーションUIデザインサービス」を提供しています。お客様の課題解決、サービス向上にお役立ていただければ幸いです。
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