マイクロソフトBuild 2012 参加報告
インタラクティブ・コンテンツ部 チーフインタラクションアーキテクト 黄 聖實2012年10月29日~11月1日の4日間、Washington州Redmondで開催されたマイクロソフト社(以下、MS)のカンファレンス「 Build 2012 (以下、Build)」に参加してきました。
MSは情報をサービスするプロバイダーとそのサービスを利用するコンシューマー両方に対して、ユーザー環境や開発ソリューション、そして様々なビジネスモデルを提供している会社です。
Buildはプロバイダー向けのカンファレンスで、MSはこの場を通して自社製品やサービスの紹介と、コンシューマーサービスのためのガイドラインを共有しています。
本コラムでは、今年のBuildの様子をご紹介します。
MSの次世代OS、Windows 8
今回のBuildで一番盛り上がったのは、先日10月26日に発表されましたWindowsの次世代バージョン「Windows 8」でした。
Windows 8は、一つ前のバージョンであるWindows 7と比べ、アニメーション、タップ時のコンテンツ反応、トランジション効果などのTUI(Touch User Interface)とUX(User Experience)を強化したOS(Operating System)で、生産性はもちろん、タブレット端末としての携帯性も高くなっています。
また、UIは以前と同様の「デスクトップモード」のほか、Windowsのシンボルとして言われる「スタート」機能を「スタート画面」に拡張した「Modern UI」と呼ばれるデフォルトUIが用意されています。
このスタート画面は、「ライブタイル」と呼ばれるアプリ(Windowsストアからダウンロードできる)がタイルの配列で並ぶ構成になっていて、MSのクラウドサービス「SkyDrive」との連動で、違うデバイスからでもすぐに同じユーザーのデータやダウンロードしたアプリにアクセスすることができるようになっています。
Windows 8向けのアプリ開発
デスクトップアプリが、開発、配布、インストール、削除というどの過程においても今までと同様の動きをする反面、Windows 8の基本UIとして適用されているスタート画面用のアプリ(以下、Windows ストア アプリ)は、開発は同社のデスクトップモード用アプリ「Visual Studio 2012」で行われ、配布はアップルのAppStore、グーグルのGoogle PlayのようにWindowsストアからのみとなっています。
Windows ストア アプリの特徴は、従来のアプリ開発に使われていたC#、VB、C++などの低レベルのプログラミング言語以外に、HTML5、CSS3、JavaScriptのようなWeb技術にも対応していることです。
Web技術で開発されたWindows ストア アプリは、ブラウザ上のWebコンテキストではなく、他の言語で開発されたアプリと同様にローカルコンテキストモデルが適用され、ローカルファイルにアクセスしたり、カメラを使って撮影をしたりすることができます。
また、jQueryなどの既存ライブラリもビジネスロジックを超えない範囲であれば問題なく使えますので、Webアプリケーション開発者の流入の壁は低いレベルです。
MSのWeb技術の積極的な受け入れ
今回のBuildでは、スマートフォン・タブレット端末の普及に合わせて、アプリやクラウドサービスの活性化やWebアプリケーション開発仕様の具体化が進んでいる現状に対するMSのロードマップがよく反映されている印象を持ちました。
特に、Web技術のパフォーマンスや、HTML5、CSS3、JavaScriptを使ったWindows ストア アプリ開発に関するセッションが多数準備されているなど、W3C(World Wide Web Consortium)で策定しているHTML5仕様と関連仕様を積極的に受け入れようとすることも理解できました。
同社のブラウザ「Internet Explorer 10(以降、IE10)」は、IE9と比べてHTML5と関連仕様だけでも数倍の機能が追加され、レンダリングパフォーマンスや全体的な動作バランスもよくなっていて、アプリケーションのレンダリングエンジンとして遜色ないと感じました。
新たなユーザー経験に向けて
今回のBuildを通して、MSは、TUI(Text-based User Interface)中心のMS-DOSをGUI(Graphical User Interface)中心のWindowsに移行した約20年前のように、全般的なユーザー経験レベルをもう一度次のステップに移行しようとしているのではないかと感じました。
環境や技術は、時代の流行、話題、そしてコンシューマーの要望などによりいつも変化するもので、その変化によっては、コンテンツの見せ方や実装方法が変わる可能性もあるでしょう。
私たちはこのように新たに生まれるビジネスモデルに対して、顧客により幅広く、良質のサービスが提供できるよう研究・開発を続けていきます。
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