Adobe MAX 2013 参加報告
インタラクティブ・コンテンツ部 インタラクションアーキテクト 川井 隆典2013年5月5日から5月10日の期間にアメリカのロサンゼルスにて開催された Adobe MAX 2013 に、当社黄と共に参加しました。
アドビシステムズ (以下Adobe)はWeb、デザイン、映像、写真のクリエイティブにおける制作を支援するソフトウェアを制作している企業です。そのAdobeが開催するAdobe MAXは、マクロメディア社(Adobeが2005年に買収)が主催していたカンファレンスMacromedia Maxを引き継いだものです。これまではWeb開発者を主な対象とした技術色の強いカンファレンスだったのですが、今回は「Creativity」をテーマとして一新。デザインや映像、写真などの制作者も視野に入れたカンファレンスとなりました。そのためもあってか、今回は参加者の半数がデザイナーで、個別セッションも以前と比べてデザイナー向けのものが多くなっていました。
本コラムでは、Adobe MAX 2013でAdobeが発表した内容と私が感じたことを記したいと思います。
サブスクリプション制への完全移行
「A Creative Evolution」と銘打たれた一日目の基調講演では、既存ソフトの新機能、 Behance のCreative Cloudとの統合、 ハードウェア開発プロジェクト 等が発表されましたが、最もインパクトが大きかったのはソフトウェアの販売モデルの変更でした。それは、従来のようなパッケージ販売を現行最新版であるCS6で最後とし、今後はAdobe Creative Cloudを介したサブスクリプション制(月額定額制)に完全移行するというものです。
クラウドを中心にしたクリエイティブワークフロー
今回Adobeがクラウド販売モデルに完全移行したのは、クラウドを中心としたクリエイティブワークフローを実現するというビジョンがあるからでした。
AdobeのSenior Vice PresidentであるDavid Wadhwani氏は「ソーシャルの普及に伴い、ネットワークを介して世界の人と共有していくことが自然な流れになっている中、制作現場のワークフローは相変わらず孤立している」と述べます。そういった状況をAdobe Creative Cloudを使用することでより良い形へと変えることができる、と。具体的には、クラウドを中心にすることで「アプリの取得・アップデート、制作物・設定の同期、コラボレーション、コミュニティでの公開、成果物のパブリッシング」といったフローが実現できるようになり、これによって今まで以上にクリエイティブで効率的な制作が可能になる、とのことでした。
ただ、実際の制作現場で上記のワークフローをそのまま実現できるかというと、少し難しいところもあるかと思います。セキュリティポリシー等が理由でクラウド連携に難がある環境もあるかと思いますし、コラボレーションが不要なプロジェクトもあるでしょう。そういった点でクラウドの使い方を検討する余地もあるかもしれませんが、モデル自体はクラウドを上手く活用していると思いますし、効率的なワークフローであるように感じました。
変化し続ける制作ニーズへの対応
上記のクラウドを用いたワークフローの中で多くの制作者に関係するのは、「アプリの取得・アップデート」かと思います。
ここ最近Web制作の現場では、従来のWebサイトの制作に加え「レスポンシブWebデザイン」「HTML5/CSS3/JavaScript を組み合わせたリッチなWebコンテンツ」「Web技術を用いたネイティブアプリ」等を制作する機会が増えてきており、制作者への要求は以前に比べ複雑・高度化しています。
制作環境を支援するAdobeはそれらに対応すべくソフトの開発を続けてきましたが、 従来のような十数カ月に一度のメジャーアップデートや新製品の発表では、この変化に追い付くことが難しくなってきていました。そういった問題への解答が、クラウドを介した「アプリの取得・アップデート」です。これにより、変化し続ける制作現場のニーズに素早く対応できるようになります。
また、AdobeはWeb制作の支援ツールとして2012年からEdgeツール&サービスを提供しています。これらは、従来提供していたDreamweaverのようなWeb制作のワークフローを広くカバーする統合制作環境ではなく、ひとつのタスクに特化したコンパクトなツール群となっています。こういった小さなツールを提供し始めたのは、昨今の多様なWeb開発環境・ワークフローによりフィットする形を求めた結果ともいえるでしょう。
クラウドを用いた迅速なアップデート環境の整備と併せて、今後更に変化していくであろうWeb制作のニーズに対応していこうというAdobeの姿勢が伺えます。
最適なツールを選ぶ
Adobeに限定して話を進めてきましたが、実際に開発現場で使用するツールはAdobe製品だけではありません。作業によってはより適切なツールもあるでしょう。大事なのは、プロジェクトにおける要件をきちんと整理し、その要件に応じたワークフローを策定し、各プロセスにおけるパフォーマンスを最適化するようなツールを選んで制作していくことだと思います。そのためにも固まった発想や手法に囚われることなく、日々技術やツールの最新情報をキャッチアップし、より良いものをつくれる状態に身を置き続けることが大切だと考えます。
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