情報設計品質向上への取り組み
第七本部(UX) インフォメーションアーキテクト 谷田 大輔私はWebサイトの情報設計部分を専門に行なう部門に所属しています。大規模サイトにおけるユーザーシナリオ作成、サイト構造・導線設計、画面設計などを主な業務として担当しておりますが、当社の情報設計品質向上のための研修づくりにも携わっています。
今回は、当社の情報設計研修の取り組みについてご紹介します。
研修実施への経緯
当社には新卒採用・中途採用をあわせて毎年数多くのディレクターが入社します。門戸を広げて採用活動をしているため、Web制作業界経験者だけでなく他業種からの転向組の方もたくさんいます。
ディレクターは、Webサイト構築におけるクライアントとの折衝、企画、制作進行、制作費の交渉など幅広い業務を担当します。その業務の1つとして情報設計があるのですが、業界未経験の方には馴染みがなく特に難しく感じるという声が多いのが実情です。
以前は、入社後は先輩ディレクターが案件を通じて教育していましたが、教育内容に一貫性がなかったり、体系的に学べる機会がなかったりと、決して良い環境とは言えませんでした。そのような状況を改善し、入社後にスムーズに業務に取り組めるように、Webサイト設計の基礎が学べる研修を用意しました。
「書き方」「考え方」2種類の情報設計研修
情報設計とは、情報アーキテクチャ、インフォメーションアーキテクチャ、IAとも呼ばれており、サイト訪問者が求めている情報を「探しやすく、見つけやすく」「わかりやすく伝える」ことで、Webサイト制作をする上で、非常に重要な部分です。この基礎を学ぶために、2種類の初期研修プログラムを用意しています。
1つ目は「書き方」を学ぶ研修です。
この研修ではサイト構造や導線設計を示すサイトマップ、画面ごとの構成要素を示すワイヤーフレーム、サイトの論理構造や物理構造を示すファイルリストといったWebサイト制作に必要な設計ドキュメントを実際に書いていきます。当社にはWebサイト制作に携わる人数が非常に多くいるため、コミュニケーションミスを起こさず効率的に進められるように、設計ドキュメントのフォーマット化や共通言語になるビジュアルボキャブラリーを定めています。
この研修を通じて、設計ドキュメントの書き方や当社独自の共通ルールを体験し、慣れてもらうことで実業務へのスムーズな移行を実現しています。
2つ目は「考え方」を学ぶ研修です。
この研修では、グループワーク形式にてあるテーマに沿ったWebサイトを作っていくことで、情報設計のごく基本的な考え方と重要性を学べるようにしています。
これは専修大学の上平崇仁教授が開発された「IA Basic Learning Kit」を基に当社の社内研修用にカスタマイズしたものを利用しており、
- 背景と課題の整理
- 対象ユーザーとサイトの利用目的の把握
- シナリオの作成
- カードソーティングによる情報の並び替え
- ラベリング(名前づけ)
- サイト構造の作成
の6つの課題をこなしていきます。
Webサイト設計の一連の流れに沿って体験できるため取り組みやすく、またシナリオ作成などを通じてユーザー中心で考えていくことの重要性も体感してもらえる内容になっています。
知識が殆どない状態で現場に入るのと、基本を学んでから現場に入るのではその後の業務の進め方や成長に大きく影響します。初期研修プログラムはディレクターが現場にスムーズに入っていき、すぐ活躍できる手助けになるようにしています。
研修を終えて
ディレクター未経験者からは「ディレクターとして業務を行なっていく上で大変勉強になった」「細分化された作業工程で、大変わかりやすく、楽しみながらできた」という感想をよく聞きます。また、既にディレクター経験があって入社された方からは「座学で習ったことはなく、実戦でやってきたので改めて講習会といった形で行なえるのは良い。中途入社時にこういった研修があることで、今までの自分の中のナレッジを整理することができて大変良かった」という感想を聞きます。
この研修はスタートしてから2年が経ち、今では入社時研修プログラムの一環として定期的に実施されて一定の成果を上げています。
当社では入社時に行なう研修以外に、ディレクターの情報設計力の底上げする研修も準備しており、より成果の出せるWebサイト設計ができるように、組織的に取り組んでいます。
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