ビジュアルデザイン品質向上のための「学び合う場づくり」
アートディレクター 遠藤 真由美現在弊社には160名ほどの制作スタッフがおり全員が縦軸の事業部のほかに横軸の「制作本部」に所属しています。昨年度よりその制作本部の中に「タスクフォース(以下TF)」という組織を設けました。本コラムではTFの活動の1つを取り上げ、スキルアップの方法について考えていきたいと思います。
タスクフォースとは
TFとは特定の分野において、技術向上、技術開発、標準化、効率化等を推進するための組織で、私はそのうちの1つであるビジュアルデザインTFに所属しています。ビジュアルデザインTFスタッフは全員がデザイナーで、各縦軸部門の代表1名ずつで構成されています。
これまでの成果としてお客様向け、社内向けの各種テンプレートの作成や社内フローの整備、勉強会の開催などがありますが、今回は「ワイヤーフレーム(以下WF)を用いたデザイナー向けワークショップ」について開催に至った背景から詳しくご紹介いたします。
「教える」から「学び合う」へ
約2年前のコラムに各分野のエキスパートが一緒に考え同時に進めていくスタイルの必要性について書かせていただきました。そのスタイルを実現するためにデザイナーにとって必要なスキルのひとつとして情報設計スキルが挙げられると私は考えます。ディレクターやインフォメーションアーキテクト、コーダーと議論をするにあたってデザイナーがコアスキル以外のスキル=のりしろを持っていれば、デザイナーならではの視点でよりよい設計・デザインをご提案できるはずです。また、実際に情報設計の理解不足によるデザイン品質への影響を感じることもありましたので、横軸全体で取り組むテーマとして情報設計を選びました。
勉強会の企画にあたっては情報設計専門の部門に相談をしながら目指すべきスキルレベルを設定し、また勉強会の形式そのものから考え直しました。デザイナー主導且つ横軸で行なう意味を考え、スキルの高いスタッフからの「知識共有」ではなく、全員が手を動かしそれをもとに話し合うという「思考回路共有」の形式に至りました。デザイン同様情報設計も決して正解のある分野ではありません。だからこそさまざまな考え方を学び合うことがスキルアップにつながると思いますし、社内に多数のデザイナーがいることもさらにその効果を高めてくれると考えました。
いつもと違う刺激が生まれるようなワークショップ設計に
ワークショップの概要は「課題のWFをもとに参加者が事前にデザインを起こし、それぞれWFをどう解釈しデザインに落としたかを話し合う」というもので、実制作へも活かしやすいようなリアルな内容にしました(過去2回の課題はそれぞれ「お問い合わせ情報の見せ方」「商品一覧ページの見せ方」)。これは情報設計というテーマの中のほんの一部分に過ぎない内容ですが(むしろ情報設計というよりはデザインの領域のように感じられるかもしれませんが)、より情報設計上の工夫に意識が向くよう
- デザインだけでなくWFの解釈についてのコメントも提出
- デザインのトーン&マナーについては全員共通
といった工夫をしました。
提出されたデザインを見てみると、課題のWFから文言量を考慮して見やすいレイアウトに調整をかけたものや、ユーザーにとってのわかりやすさを向上させるために文言自体にも手を加えたものまで、さまざまな工夫が見られました。
ワークショップ当日は、話し合いが盛り上がるように全参加者を3~4名ほどのグループに分けたのですが、全社のデザイナーを集めて実施できるメリットを最大限に活かすため、WFの解釈(※課題は事前に行ない、TFスタッフ側で解釈ごとに分類)、入社年度、部門等が異なるスタッフ同士が同じグループになるよう設計しました。WFの解釈が異なるだけでなく、普段なかなか接する機会のないスタッフと話せることも刺激になっていました。また企画当初は想定していなかったコーダーの参加があったため、職種の違いによる別の解釈も学ぶことができました。
実際にワークショップ後のアンケートでも、
- 自分とは異なる考えを聞けた
- 自分の考えを説明する機会になった
- 一度にたくさんの人の意見が聞けた
などの声が上がり良い刺激になったのではと思います。
今後も常に刺激を受けられる環境を
このワークショップを通してスキルアップの方法は大きく分けて2通りあることを再認識しました。1つ目は1人で出来るスキルアップ、2つ目は他のスタッフがいるからこそ出来るスキルアップです。ビジュアルデザインTFはまさに後者のために活動できる組織です。今後も横軸組織ならではの活動をすすめてデザイナーのスキルアップをサポートし、お客様へご提案するビジュアルデザインのクオリティが向上するよう努力してまいります。
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