WCAG 2.1の勧告
取締役(CTO) 木達 一仁6月5日付けで、W3CよりWCAG 2.1が勧告されました。WCAGとは、Web Content Accessibility Guidelinesの略語であり、Webコンテンツをアクセシブルに、つまり誰にとっても使いやすくするためのガイドラインのこと。ひとつ前のバージョン、 WCAG 2.0 は2008年12月の勧告であり、実に9年半ぶりのアップデートになります。
2008年といえば、日本でようやくiPhoneが発売された年であり、今ほどタッチスクリーンをもつモバイル端末が普及していませんでした。WCAG 2.0は、特定の技術に依存しない「技術非依存」を特長のひとつとして策定されましたが、その後のスマートフォンやタブレット端末の急速な普及を踏まえ、モバイル対応への強化が求められていました。
加えて、WCAG 2.0では対応が不十分とされていた弱視(ロービジョン)、そして認知・学習障害への対応を強化すべく誕生したのが、今回勧告されたWCAG 2.1になります。WCAG 2.0にあった61の達成基準はそのままに、新たに17の達成基準が追加されました。適合レベルごとの数の変化は、以下の表に示す通りです(括弧内は追加数をあらわします)。
WCAG 2.0 | WCAG 2.1 | |
---|---|---|
レベルA | 25 | 30(+5) |
レベルAA | 13 | 20(+7) |
レベルAAA | 23 | 28(+5) |
WCAG 2.1が勧告されたことにより、WCAG 2.0が使用できなくなるかというと、決してそのようなことはありません。WCAG 2.0は、2012年にISO/IECの国際規格( ISO/IEC 40500:2012 )となり、また日本の国内規格であるJIS X 8341-3は2016年、ISO/IEC 40500:2012と一致規格となるよう改正されています(JIS X 8341-3:2016)。つまりWCAG 2.0は、国内外を問わず広く使われているガイドラインであり、これからも使用され続けるでしょう。
いっぽうで、WCAG 2.1の勧告を知らせるW3C発行のプレスリリースに Testimonials about WCAG 2.1 として、私は以下の文章を寄稿しました:
株式会社ミツエーリンクスは、WCAG 2.1がW3Cより勧告されたことを大変喜ばしく思います。WebサイトやWebアプリケーションを誰もが利用できるよう制作するうえで必要不可欠な品質基準のひとつとして、これまで当社はWCAG 2.0に則ったWebサイトの構築・運用に積極的に取り組んできました。より多様なユーザーが、より多様なデバイスを使ってWebを利用するようになった現状を踏まえ、今後はWCAG 2.1に則る予定です。また、アクセシビリティの確保が障害者や高齢者に限らず、あらゆるユーザーのユーザー体験に資するものとの理解が、WCAG 2.1の勧告によって社会に広く浸透することを強く期待します。
そして本日、当社の発行したニュースリリース「ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)2.1への標準対応の開始について」にありますように、2010年にスタートしましたアクセシビリティ標準対応について、10月1日以降はWCAG 2.0ではなくWCAG 2.1を使用します。当社としましては、WCAGのバージョンにご指定の無い限り、WCAG 2.1に基づくアクセシビリティ対応を積極的に推進、ご提供していきたいと考えています。
最後に、セミナーのお知らせです。少し先の開催になりますが、既にWebアクセシビリティに取り組んでいらっしゃる皆さまを対象に、「Web担当者のためのWCAG 2.1 解説セミナー」を9月7日に開催します。そもそもアクセシビリティとは……といったごく基本的な内容は省き、新たに追加された達成基準にフォーカスして解説を行う予定です。WCAG 2.1の活用を検討される皆さまのご参加をお待ちしております。
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