進化するデジタル、変化するマーケティング ~駆け出しマーケターが見た未来~
マーケティング部新規プロジェクト推進担当 南 進之介
Digital Summitとは
9月26日・27日にアメリカのシカゴで開催された Digital Summit Chicago に参加をしてきました。
Digital Summitは、アメリカ国内18の地域で毎年開催されているイベントです。業界を代表する著名人が最新のデジタルマーケティングツールやトレンドの紹介を行います。今年はNetflix創業のお話やTwitterで“バズった”トピックの裏話などの紹介もあり、業界を問わずこれからのデジタルマーケティングを行っていくうえでのヒントを得る場となっています。
LinkedInが考えるB2Bマーケティングのトレンド
Digital Summit Chicagoでは、4つの会場で異なるセッションが同時に行われます。参加者は4セッションのうち好きなトピックのセッションに参加します。1つの会場では1日7コマ程度あり、4つの会場合計で1日30セッションほど行われました。本稿では、LinkedInのPeter Weinberg氏による「The future of B2B marketing: Trends for the contrarian marketer」についてご紹介します。
トレンドを知る必要性
Peter Weinberg氏いわく、「B2Bマーケティングでは、ほとんどのマーケティング担当者が思うよりも早く変化が起きており、トレンドの変化を知ることで既存のマーケティングに疑問を投げかけ、ブランドを構築し収益を生み出す方法を再考する必要がある」とのことでした。当日はトレンドの変化が5つ紹介されていましたが、本稿ではその中から3つをご紹介します。
トレンド1:Netflixのマーケティング
1つめは、顧客第一主義を目指した予測や経験に頼らないデータドリブンなマーケティングが現れたことです。「世の中の広告が自分と関連している」と感じている顧客はわずか3%にすぎないというInfolinksの調査結果から、昨今のマーケティングは顧客第一主義になっていないと結論付けています。つまり、Webサイトに訪れた人は広告のバナーをほとんど無視していることになります。
一方で、身近にある顧客第一主義のマーケティングの成功例として、Netfilixのアートワーク画像が紹介されました。
Netflixで表示される作品のアートワーク画像は、顧客に合わせて変えられています。ロマンス映画をよく見る顧客にはロマンスを連想しやすいアートワーク画像を表示させ、コメディをよく見る顧客の場合はコメディ調のアートワーク画像を表示させます。これらの顧客第一主義のマーケティングは全てデータドリブンに行われています。
顧客第一主義のマーケティングを実現する第一歩として、予測や経験に基づいてペルソナを設定するのではなく、顧客のデータに基づいて現実の顧客としてペルソナを設定する必要があります。
トレンド2:LinkedInの調査結果から明らかになったギャップ
2つめは、顧客が「業界の第一人者」に対して価値を感じていることです。そのため、B2Bマーケティングの担当者とその顧客との間での「業界の第一人者」に対する価値観にギャップがでています。
B2Bマーケティングの担当者は「業界の第一人者が企業の信頼性を高める」と感じている割合が49%に対して、B2Bの顧客の場合は80%以上にも上ります。しかしながら、実際にB2Bの顧客が業界の第一人者の価値を手に入れられている割合は44%にとどまります。
このことから、今後のB2Bマーケティングにおいて業界の第一人者の価値(セミナーに登壇した社員、書籍を出版した社員、業界で名前が知られている社員など)を、顧客にしっかりと訴求していく必要性があります。
トレンド3:ハリウッドのマーケティング
3つめは、ハリウッド映画のビジネスモデルをベースにしたBlockbusterマーケティングです。現在、ほとんどのマーケターは新聞のビジネスモデルを模倣しています。新聞のビジネスモデルとは、新しいコンテンツを次から次へと足していくモデルのことです。そのような新しいコンテンツを足していくマーケティングではなく、今後の重要なマーケティングのモデルとして紹介されていたのが、Blockbuster(筆者注:大ヒットコンテンツを軸として多角化する)マーケティングです。
ここでは、Blockbusterマーケティングの例として、ハリウッド映画の展開の仕方が紹介されていました。
2017年から2019年のハリウッド映画のラインナップでは、既存のコンテンツに関連する映画が多く、全く新しいコンテンツは少ないという結果になっています。新しいコンテンツを足していくことに力を入れるのではなく、既存のコンテンツをBlockbusterへと育て上げることが重要になります。いったん、Blockbusterになってしまえばそこから横へ展開していくことでも収益をあげることができます。例えば「STAR WARS」シリーズのように、ゲームやおもちゃなどを作って拡大することも可能になります。
B2Bの場合、Blockbusterマーケティングはブランドの醸成と需要の発掘にもつながります。その際に、対象となる顧客の選定や顧客の教育も重要になります。
本セッションのポイント
本セッションのタイトル「The future of B2B marketing: Trends for the contrarian marketer」にもある通り、今回紹介したトレンドは“Contrarian=逆張りする人”のためのものです。現在のB2Bの環境を見ても、紹介したトレンドが使えそうにないと思われるかもしれません。しかし、近い将来にそうなる可能性がありB2Cでは適応しているマーケティングがB2Bにも適応できるのではないかと考えることは無駄ではありません。逆張りするマーケターは意思決定を誤るとトラブルメーカーになりますが、予定調和な意思決定よりも優れた結果を生み出すこともあります。
以上が、Peter Weinberg氏によるセッションの抜粋です。私の実感としてもB2Bにおけるトレンドの変化は早く、今までの常識が通用しなくなってきていると感じます。このままではいけないという危機感だけがあり、しかし一方で何をすれば良いのか分からない状態がありました。本セッションで、最先端の企業はトレンドの変化に対して何をしているのかを知り、そこから応用できる知識を吸収することが大事だと感じました。
最後に
イベントを通して感じたこと
本イベントを通じて世界のトップ企業が何を考えているのか、業界の流れをどう捉えているのかを感じることができました。マーケティングの変化の流れは早くなっており、その流れは益々早くなっていきます。企業のマーケティング担当は、環境の変化に適応するために時代のトレンドを読み解かなくてはなりません。本稿ではマーケティングの大枠としての変化について紹介しましたが、デジタルのツールにおける変化やWebサイトにおける変化についても知っておく必要があると感じました。
デジタル業界のマーケターとして、大枠としての変化を捉えることと同時に具体的な手段についての情報も手に入れる必要があります。当社では定期的に社外向けのセミナーを開催しています。内容としてはUX入門セミナーや動画活用セミナー、デザイントレンドなど多岐にわたります。ぜひ一度、当社セミナーに足を運んでいただければと思います。
シカゴの街並み
最後になりますが、シカゴの街並みが心を打つほど綺麗でしたのでここまで読んでいただいた皆様に、稚拙な写真ではありますが共有させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
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