要る?要らない?デザインシステム
取締役(CTO) 木達 一仁英語圏では数年来のトレンドと認知されているデザインシステムですが、先月発売された技術評論社の『WEB+DB PRESS』Vol.129で特集が組まれたことで、国内でも着実に注目されつつあるように感じます。企業のWeb担当者の方でも、言葉を見聞きしたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。
当社でも、今年5月に配信したミツエーテックラジオの#33「デザインシステム輪読会から得た学び」で取り上げたばかり。私自身、2017年のWebデザイントレンド 解説セミナーを皮切りに、このところ毎年のように開催しているデザインガイドラインのセミナーにおいて、決まってデザインシステムに言及してきました。
多くの方にとって「デザイン」と「システム」、いずれも曖昧で抽象度が高い言葉に感じられると思います。そうであるがゆえに、2つの言葉がくっついた「デザインシステム」に対して、まるで捉えどころのない印象を受ける方もいらっしゃるかもしれません。
言葉の定義はさておき、先述のミツエーテックラジオの中で紹介しているデザインシステムの事例、例えばMeet Spectrum, Adobe’s design system - SpectrumやUSWDS: The United States Web Design Systemを眺めていただくと、それがどんなものを指すかご理解いただけると思います。
多くのデザインシステムは、組織に固有のデザイン原則などを書き起こしたドキュメントと、対象がWebサイトであれアプリであれ、そのデザインを実装する際に開発者が使用する便利なリソース(UI部品の一覧やテンプレートなど)から構成されます。しかし、そのような成果物は、デザインシステムという呼称が生まれるより前から存在してきたものです。ではなぜ、デザインシステムは注目されるようになったのでしょう?
その背景には、デザイナーと開発者とを媒介する各種ツールの進化があります。Adobe XDやFigmaといったデザインツールが進化し、デザイナーと開発者の一層密な連携が可能になったことで、両者はもちろん組織内のあらゆるステークホルダーにとっての「拠り所」として、デザインシステムの存在意義が高まったと私は理解しています。
ふむふむなるほど、なんとなく便利そうだし、とりあえず作ってみようか……と思ったWeb担当者の皆さん、お待ちください。確かに、出来合いのデザインシステムを外から眺める限り、意外と簡単に作れそうに映りますし、実際作れるかもしれません。しかし、そこで見落とされがちなのが、組織の有り様とデザインシステムは表裏一体である点です。
デザインシステムには、組織そのものがどうデザインされているか……例えば分業と調整のメカニズムがしっかり織り込まれているべき、と私は考えます。そうでなければ早晩、デザインシステムは機能不全を起こし、組織の誰もが見向きもしない代物と化すでしょう。逆に、組織の有り様と表裏一体の状態を維持できれば、組織の進化と共にデザインシステムは真価を発揮し続けるでしょうが、一朝一夕には成し得ないことです。
さて、ここまでお読みくださった皆さんは、デザインシステムを必要としますか?しませんか?9月15日に開催予定の、私が講師を務めるオンラインセミナー、Web担当者のためのピンポイント講座 そろそろ知っておきたいデザインシステムでは、短い時間ながら皆さんとぜひこのテーマについて考えたいと思います。
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