SmashingConf Antwerp 2023参加報告
アートディレクター 滝UIデザイナー 上原
10月9日~12日の4日間、ベルギーのアントワープでデザインとUXに関するライブ型のカンファレンス「SmashingConf Antwerp 2023」が開催され、ミツエーリンクスのスタッフが10日と11日の2日間、トークセッションに参加してきました。
参加したトークセッションではシークレットスピーカーを含む12名の講演が行われ、Figma等のツールによる共同プロジェクトに関する話題や、世界で起こるトレンドとデザインのありかたなど、デザインに関するさまざまな情報が紹介されていました。
新型コロナウイルスの影響で、海外のカンファレンスに参加するのは久しぶりの機会となりましたが、会場の温かな空気や他国のデザイナーとの交流、またデザインに関する幅広いトピックに触れ、多くの刺激を得ることができました。
トークセッションでの印象に残った話題について、カンファレンスに参加したアートディレクター 滝、UIデザイナー上原からお伝えします。
デザインに求められているものは何か(アートディレクター 滝)
私たちを取り巻く環境がトレンドや人々の関心によって日々変化していくのを感じています。さまざまな技術革新が起こり、昨日までは無かったものがデザインの対象として急速に更新されていくことも、デザイナーとしては身近な話題ではないでしょうか。
こうした変化の激しいトレンドに対し「デザイナーがどのように向き合っていくべきか」を扱ったセッションがありました。
セッション:Trends To Live and Die For
Claudio Guglieri氏による本セッションは、「トレンドを理解するためにはデザインよりもデザインを形作るマクロトレンドに注意する必要がある」という前提のもと、テクノロジー / ビジネス / オーディエンスという3つの観点からトレンドを追っていくものでした。
ここでは、ビジネスの観点からトレンドを追ったものをご紹介します。
ビジネスではデザインは乗数的にはたらくため、企業のポジショニングやライフサイクルのどの時点にいるかがデザインに影響を与えます。例えば既存企業かディスラプターかで注目する技術や戦略も変わり、技術の成熟度によってはデザインに求められる役割も変わってきます。
またビジネスではバンドリングとアンバンドリングが常に起こっており、バンドルに対抗するためには「カウンターポジションをとる」「一つのことに集中し、シンプルにする」ことなどのデザイン戦略を通じて、独自の価値提案が必要になります。
一方で企業が市場の高い位置にいる場合は、顧客の信頼に寄り添い、落ち着いたふるまいがデザインにも求められます。プロダクトやサービスを持続的に改良しつづけることで顧客とのつながりを深め、バンドルをリードする必要があると紹介されていました。
また、こうしたバンドリングの文脈を踏まえ、市場が画一化する中でどのようにデザインの差別化を図るべきかについても言及がありました。AIが発展しはじめた今は統合の流れは避けられないとしつつも、ブランドが持つ核の部分やあるべき姿を自問自答することが転換点になりうるということです。
トレンドを意識したデザインのご提案は企業様からよくいただくご要望のひとつです。時代に即したデザインであることはもちろんですが、Webサイトやアプリにおいては、企業様らしいありかたやブランドの世界観を追求することも欠かせません。「どのようなデザインがふさわしいか」を検討するためには、ブランドの戦略とともに、市場や他社、消費者の行動も含めた動向の把握や深い洞察のもとで組み立てる重要性を感じたセッションでした。カンファレンスで得られた知見を活用し、今後のデザインのご支援に役立ててまいります。
これからのデザイナーの役割を考える(UIデザイナー 上原)
UXデザインとそれを取り巻く近年の状況変化について12名の登壇者それぞれ異なる視点でのスピーチを聞き、「デザイン」という言葉の持つ意味の広がりを感じました。AIの台頭やデザインシステム、エシカルデザイン、日々アップデートされるデザインツールの新機能など、国内でも話題のトピックに関するセッションが多くあったことも印象的でした。そのなかからUXデザインを構成する要素にフォーカスを当てた2つのセッションをご紹介します。
セッション:Designing a Product with a Point of View(視点を持った製品デザイン)
Nick DiLallo氏による本セッションは、UXライティングがデザインにどのような影響を与えるか、アドバイスを交えてのセッションでした。
- 情報設計とビジュアルデザイン、そしてライティング。どれかひとつでは成り立たず、それらの相互作用でユーザビリティやブランド価値が構築される。
- シンプルであることほど重要な要素だと意味する。単に情報を削るのではなく、利用するユーザーに合わせて最適化すべきである。
言葉の言い回しや文字情報の扱い方ひとつで、与える印象や使い勝手は変わってきます。目的とターゲットを意識したライティングは、デザインを構成する重要な要素であると再認識しました。
セッション:The Invisible Power of UI Typography(UIタイポグラフィの見えない力)
Oliver Schöndorfer氏による本セッションは、UIに必要不可欠なテキストにおいて機能性を損なわずにブランディングするためにはどうすべきか、タイポグラフィについて深掘りしていくセッションでした。
- タイポグラフィの力でプロジェクトを成功に導く。コントラスト比や文字サイズによるアクセシビリティへの配慮、字形などでプロジェクトの個性も表現することができる。
- デバイスの解像度、動的コンテンツ、表示サイズなどUIデザインが置かれる条件を考慮したうえで、その条件に耐えうる強度を持ったフォントを選択する。
- ユーザーにとって優先度の高い要素は何なのか、階層レベルを意識してデザインする。
わたしたちの普段の生活の中でも、無意識のうちにタイポグラフィの力に誘導されている場面があるかもしれません。Webサイトにおいては多様化するディスプレイサイズへの対応など、柔軟性を考慮してタイポグラフィを扱う必要があるでしょう。
AIやデザインツールの新機能によって、考える時間に多くのリソースを割ける環境が整いつつあります。デザイナーはより多様な視点から情報を見極め、デザインを構成する各要素について最適解を探しながら組み立てていくといった編集のような役割に近づくのではと考えます。
今回のカンファレンスで得た気付き、そしてこれからも継続的にデザインナレッジを収集・吸収し、企業様とユーザーにとってよりよいデザインをご提案できるよう努めてまいります。
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