「制作会社≒デザインシステム」論
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁去る10月24日、「ブランディング&ガバナンス強化のためのデザインマネジメント」というオンラインセミナーを開催しました。これは、過去に開催してきた「ブランディング強化のためのデザインガイドライン 解説セミナー」「そろそろ知っておきたいデザインシステム」両セミナーの内容を統合したものです。
今年7月のコラム「Webサイトの動的平衡を実現する存在としてのデザインシステム」末尾において、今年10~11月の開催を目処に検討を進めております
と記していた、まさにそのセミナーです。有言実行ができた、という意味では少しほっとしています。
ところで、同セミナーのタイトルにある「デザインマネジメント」という言葉には、あまり耳馴染みがないかもしれません。Wikipediaの「デザイン・マネジメント」の項には、デザイン資源の戦略的活用を指す概念
とありますが、私は若干それと異なる意味合いで「デザインマネジメント」を用いました。
セミナー冒頭に申し上げた、同セミナーの文脈に固有の意味、私なりのデザインマネジメントの定義とは、「デザイン資源を活用し、デザイン目標を達成する取り組み」です。別の言い回しを用いるなら、組織の経営や存続に貢献するデザインの実現を指し、当然それはビジュアルデザインに限ったお話ではありません。
デザイン資源には、有形のものと無形のものとありますが、なかでも近年、注目度の高い存在がデザインシステムです。デザインガイドラインのようなドキュメントに、UIパーツの一覧のようなものを加え体系化した有形の資源を指すことが多いように思いますが、それを核として付随するプロセスやカルチャーといった無形の資源をも包含した言葉と私は捉えています。
セミナーで、私がデザインシステムを「ブランド固有の一貫性を効率的かつ継続的に実現するための仕組み」と紹介しているのは、そのためです。モノというより、コトなのですね。あくまで仕組みであって、それ自体は目的ではなく手段。デザインシステムは、デザインマネジメントを実行するうえで必要な手段と考えます。
ここまで、セミナーの内容をかいつまんでご紹介してきましたが、その最後にお話ししたのが本コラムのタイトルにもした「制作会社≒デザインシステム」という持論です。デザインシステムという言葉が聞かれるより前から、当社のような受託の制作会社は常にお客様のデザインマネジメントを支援してきた……実は、制作会社という存在自体ある種のデザインシステムだ、というわけです。
それがやや乱暴な論であることは認めますが、少なくともそうありたいと、私は思います。介在するデザイン資源の様式や形態がどうあれ、デザインシステム相当の仕組みをお客様に提供し、またデザインシステムに期待される価値を生み出せるよう、制作会社は進化すべき時期を迎えているとも思います。
進化すべきとはいえ、その道のりは決して容易ではないでしょう。受託である以上、お客様と立ち位置を完全に同じくできないがゆえに生ずるさまざまな困難は、過去の経験から承知しています。新規構築/リニューアルと運用を異なる制作会社が担うケースでは、また別種の困難が存在することも認識しています。
同時に、デザインシステムという考え方の流行、普及には希望も抱いています。デザインシステムを軸として、お客様と制作会社の関係がより密接かつ強固なものとしていくことが叶えば、それがひいては優れたデザインマネジメントにつながるはず……という期待です。
セミナー「ブランディング&ガバナンス強化のためのデザインマネジメント」は、来る2024年、ぜひ再演したいと考えています。セミナー内容にご興味・ご関心をお持ちくださった方、続報を今しばらくお待ちください。
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