アクセシビリティは一日にして成らず
第六事業部長 中村 精親「ローマは一日にして成らず」という表現を聞いたことがある方は多いと思います。これは大きなことを成し遂げるためには、長い年月にわたる努力の積み重ねが必要である、というたとえであるわけですが、私は高いアクセシビリティについても同様のことがいえる、と考えています。
しかし、一方でローマにも途中段階があったと考えられるのと同様に、高いアクセシビリティを目指すにあたっても、その途中段階があります。本コラムでは一日では達成できないからこそ、少しずつできることを進めるべき、ということと、その進め方を間違わないようにすること、についてお伝えしたいと思います。
「障害者差別解消法」改正法の施行
さて、昨今アクセシビリティ、という単語を調べているみなさまの中には、「障害者差別解消法」との関連で気になっている、という方も多いようです。本年2024年4月1日に施行された同法の改正法については、民間事業者においてWebアクセシビリティが義務化される、などといった不正確な情報が一部で拡散されるなどした結果、当社にも数多くのお問い合わせをいただきました。その際に依頼をいただく内容の多くが、Webサイトのアクセシビリティをチェックしてほしい、できれば期日までに修正して、その結果をWebサイトで公開したい、というようなものでした。
上記で「不正確」とお伝えしましたとおり、改正法が施行された現在においても、そのような内容が義務化されているわけではありません。もちろん、問題点を検証して、それを修正することは非常によいことです。しかしながら、一般的にこれまで特に意識をしてこなかったWebサイトにおいて、短期間で高いアクセシビリティを確保することは難しいことが多いといえます。ですので、こうしたお問い合わせをいただいた際には、ひとつずつ順を追って対応を進めていくことをご提案しております。
何のためのアクセシビリティなのか
順を追って進める場合に、まず確認いただくのは何を目標として進めるのか、という点です。それは、仮に「障害者差別解消法」の改正に対応する、であっても構わないのですが、ここで大事なのはアクセシビリティの向上によって、どのような恩恵があるのかをしっかりと意識する、ということです。「障害者差別解消法」という観点では、当然ながら、障害者のユーザーが利用できるようになる、利用しやすくなる、ということが重要です。障害にはさまざまな種類がありますが、そうしたことを少し調べて、どうすれば利用できるようになるのか、という点を考えるだけでも、アクセシビリティに対する考え方が変わっていくことでしょう。
このように、少しでもアクセシビリティの本質を考えることができると、今どのような方針で進めるべきなのかがわかってくるのではないでしょうか。例えば、世の中にはアクセシビリティ・オーバーレイ、と呼ばれるソリューションがありますが、こうしたものの多くは一部の障害者ユーザーからはかえってWebサイトが使えなくなってしまった、というような声があがっているわけであり、適切ではない可能性がある、といったことも考慮に入れる必要があります。
アクセシビリティはあらゆるユーザー、環境のためのもの
上記では直近にお問い合わせが多かった「障害者差別解消法」関連を中心にご説明しましたが、そもそもアクセシビリティ自体はさまざまなユーザー、さまざまな環境にとって重要なものであり、それはつまり、向上させることによって、本来みなさまのWebサイトの価値を向上させるものであります。
法律や訴訟など、社会的な側面からも必要性が増しているアクセシビリティですが、デバイスの多様化なども含め、本来的な意味からも重要性がさらに高くなってきています。ですので、みなさまにはしっかりと目的を見据えた上で、今できることから一歩ずつ進めていっていただきたいと思っております。
当社では、進め方がわからない、という方々を含め、あらゆるフェーズでアクセシビリティの向上をサポートする施策を取りそろえておりますので、お悩みの際には是非お声がけくださいませ。一日にしては成らないからこそ、順を追って進めることができるご提案を差し上げられるようにいたします。
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