サードパーティCookieの行方
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁昨年末に開催した2024年のWebデザイントレンド解説セミナーのエンジニア編において、私が取り上げたトピックの1つに、サードパーティCookieの廃止があります。
そもそもCookieとは、Webサイトにアクセスした際に、ブラウザに保存される情報のことです。訪問先と異なるドメインから発行されるCookieを、サードパーティCookieと呼びます。
閲覧履歴の収集や、閲覧履歴に基づく広告配信などに長く利用されてきましたが、プライバシー侵害への懸念が広がり、近年ではサードパーティCookieを規制する動きが顕著です。
セミナーにおいて私は、とくにGoogle Chromeにおける規制を紹介しました。その要点は、以下のとおりです:
- Chromeは2024年第3四半期から段階的にサードパーティCookieを廃止する予定
- 2024年1月より「Tracking Protection」機能をテスト、ユーザーの1%を対象としてサードパーティCookieを無効化(Google shares update on next step toward phasing out third-party cookies in Chrome参照)
- 将来は代替技術として開発中のプライバシー サンドボックスに移行
Apple Safari(Full Third-Party Cookie Blocking and More | WebKit参照)やMozilla Firefox(Firefox Rolls Out Total Cookie Protection By Default参照)の先例に倣い、いよいよChromeでも……などと説明していたのですが、ここへ来て風向きが変わりました。
7月22日付けで、GoogleはサードパーティCookie廃止の方針を撤回したのです。そのアナウンスはA new path for Privacy Sandbox on the webで読めますが、日本語でもウェブ向けプライバシーサンドボックスの新しいアプローチで読むことができます。
サードパーティCookie廃止に向けた取り組みについて、たびたび遅延が発表されてきた末の今回のアナウンスですから、驚きに値しないという方もいらっしゃるでしょう。私もその1人ですが、しかし意外に思ったのはW3Cがこれに即座に反応したことです。
Googleはもちろん、当社も会員企業として参加しているWeb技術の標準化団体、W3Cの技術諮問委員会(TAG)は、7月26日付けでThird Party Cookies Must Be Removedという文書を公開。またその趣旨を、29日付けのBlog記事「Third-party cookies have got to go」で説明しています。
これらの文書や記事を通じ、W3CはサードパーティCookieをWebにとって有害な存在と位置付け、またGoogleの今回のアナウンスに対して明確に懸念を表明しました。Blog記事の以下のくだりからは、失望感を強く感じ取ることができます;
While we haven’t always agreed with the Privacy Sandbox team, we have made substantial progress together. This announcement came out of the blue, and undermines a lot of the work we’ve done together to make the web work without third-party cookies.
私たちはプライバシー サンドボックス チームに常に同意してきたわけではありませんが、協力のうえ大きな進歩を遂げてきました。今回のアナウンスは青天の霹靂であり、サードパーティCookieの必要なくWebを機能させるべく私たちが協力して行ってきた取り組みの多くが台無しになります。
サードパーティCookieの廃止はWebの、そして世の流れであり、もはや既定路線であって、その未来が覆る可能性は低いと私は考えていますが、Googleがこれにどう反応するか(あるいは反応しないのか)、要注目の局面と言えるでしょう。
以下、余談です。今年の年末にも、冒頭で触れた「Webデザイントレンド解説セミナー」の2025年版を開催する方向で、ただいま検討中です。大変ありがたいことに、毎年楽しみにしてくださる方がいらっしゃいますので、あらかじめ告知いたします。
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