デザインガイドライン / デザインシステムとCMMI
取締役(CTO) 木達 一仁先日、とある会議の場で代表取締役の髙橋の口から、大変懐かしい単語が発せられたのを耳にしました。それが、コラムのタイトルに含めたCMMI(Capability Maturity Model Integration)です。この言葉を聞いて懐かしいと思えるスタッフは、社内では少数派かもしれません。
それもそのはず、当社がCMMIに熱心に取り組んでいたのは2000年代の前半、特に私が入社した2004年より前のことだからです。そもそも、CMMIとは何でしょう? 2004年10月22日付のニュースリリース、【ミツエーリンクス】Web業界初、CMMIレベル2を達成から引用します:
CMMI(Capability Maturity Model Integration)とは米国カーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所(SEI)が開発したソフトウェア開発プロセスの能力成熟度の改善モデルであり、組織的成熟度を5段階で評価・判定します。米国をはじめ、国際標準的な指標として普及してきているモデルで、ISO/IEC 15504との互換性も考慮されています。
上記にある5段階とは「初期状態」「管理された状態」「定義された状態」「定量的に管理された状態」「最適化している状態」の各段階を指します。私は、師弟関係のあり方として知られる「守破離」に似て、CMMIはソフトウェア開発に限らず、さまざまな事物に応用可能な考え方と捉えています。
そこでふと思ったのです。私が比較的よく担当させていただき、また近年でも毎年のようにセミナーを開催しているテーマ、デザインガイドライン / デザインシステムの運用においても、CMMIを用いたコンサルティングなり各種改善の提供が可能ではないか? と。
異論・反論は当然あろうかと思いますが、過去のプロジェクト経験を踏まえ自分なりにデザインガイドライン / デザインシステムとCMMIを紐づけるなら、以下のような感じでしょうか:
- 初期状態
Webサイトを運用するためのワークフローや、サイト固有のデザインに関するルールが定義ないし明文化されておらず、属人的な判断のもとにWebサイトが維持・管理されている状態。 - 管理された状態
ワークフローやデザインルールがある程度は定義・共有されている状態。それらに遵守することで一定のWebサイト品質を維持することができているが、イレギュラーなケースには弱い。 - 定義された状態
組織によって承認を受けたデザインガイドライン / デザインシステムが存在し、かつ関係者がそれらを遵守している状態。従来のイレギュラーケースもレギュラーケースとして取り扱える。 - 定量的に管理された状態
デザインガイドライン / デザインシステムが適切に運用されていることの効果が、継続的に計測・共有されている状態。当然、その前提としてKGIやKPIが定義されていなければならない。 - 最適化している状態
PDCAサイクルであれOODAループであれ、一定のフレームワークや環境変化に基づき、デザインガイドライン / デザインシステムそのものの継続的改善が実現できている状態。
皆様の担当されているWebサイトの管理・運用は、上記のどの段階にあるでしょう? 「定量的に管理された状態」や「最適化している状態」にまで到達しているケースは稀で、多くが「管理された状態」ないし、せいぜい「定義された状態」ではないかと察します。
現状がどの段階にあろうと(たとえ「初期状態」であっても)、決して悲観すべきではありません。大切なのはWebサイト運用における成熟度を冷静かつ客観的に見つめ直し、継続的改善に向けた道筋を見出すこと。それを考えるきっかけなり糸口として、CMMIは今なお有効に思えます。
来月、3月16日にはWeb担当者のためのピンポイント講座 / そろそろ知っておきたいデザインシステムをオンラインで再演の予定であり、また4月から始まる新年度においても、ブランディング強化のためのデザインガイドライン 解説セミナーを再演したい考えです。デザインガイドライン / デザインシステムに関連して、あるいはWebサイト運用全般につきましても、課題やお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。
また本日、2月17日に発売されますWeb Designing 2023年4月号の「デザインシステムのつくりかた」という特集において、私のインタビュー記事を掲載いただきました。ぜひご覧ください。
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